4人の作業を6人でやってみると?
アユムさん、隣の部署の封入作業を手伝ってあげてもらえるかな。お客様に紙のクーポン券を郵送するらしいんだ。1人でも多く手伝えることができれば早く終わるからねぇ。ボクはこれから出かけてしまうので手伝えないんだけど。
はーい。喜んで手伝いますよ! どのくらい時間がかかりそうですか?
アユムさんを入れて4人で、3時間くらいかな。
3時間も封入作業って飽きますよね…。同期のPとQにも声をかけて手伝ってもらおうかな。
2人追加で6人でやると、ざっと何時間で終わるかな。アユムさん、計算してみて。
計算!?
答えは2時間だね。では、計算とお手伝いよろしくね。ボクは出かけてきます。
その計算のやり方を教えてください…出かける前に…
あ、ごめん、時間がないからまたね!
計算方法を知りたい〜 モリさーん!!!
昔から、算数も数学も苦手なアユムは、希望が叶ってマーケティング部門に異動してきました。Web担で見るような「すごいマーケターになりたい!」と胸を躍らせていたが、配属後、理想と現実のギャップに苛まれることに。データ、数字、%、小数。うわぁーん、どうしたら、数字に強くなれるのでしょうか……。
そこに現れたのが、大人向け数学教室「大人塾」を運営し、数学が苦手な社会人に対して指導をしているアジアゾウをこよなく愛するモリさん。
この記事を読むべき人:人月計算が苦手な方、仕事算の計算に悩む方
この記事を読む必要がない人:仕事算を解ける方
この記事でわかること:仕事量の求め方、1人当たりの仕事量から時間を計算する
人数×時間=仕事量
モリさん! 先輩から、作業時間の計算の宿題が出ました。4人で3時間だと、6人でやると2時間ってどういう計算ですか。
なるほど、その計算は、人月計算とか、数学では「仕事算」と呼ばれているものですね。
必殺仕事算?
いやいや、意味がわからないですから。さて、仕事の考え方について確認しましょう。
アユムさんが頼まれた封入作業について考えましょうか。たとえば、今回の封筒の枚数を1200枚としましょう。1人は、1時間に100枚封入できます。皆、同じ速さで封入作業ができると仮定します。
めっちゃ早いですね。
まあ、仮なので。1人でこの封入作業をすると何時間かかりますか?
1時間に100枚ですもんね。ということは、1200÷100=12時間! そんなに気力はないですよ。もっとかかります。なんなら昼寝の時間もほしいですよ!
まあまあ。ここでは、休憩も必要なく、同じスピードで処理できると考えましょう。
現実的じゃないですね…。まあ、仕方ないか。
では、2名だったら、何時間でこの作業が終わりますか?
1時間に処理できる枚数は、2倍になるので100×2=200ですね。1200枚の封入作業なら、1200÷200=6時間です。
ではでは、4名だったら?
1時間に処理できる枚数は4倍なので、100×4=400。1200枚の封入作業は1200÷400=3時間。あれ? 4人でやると3時間、先輩のお題と同じですね!
ということは、6人で作業をすると…?
1時間に処理できる枚数は6倍なので、100×6=600。1200枚の封入作業は1200÷600=2時間!! 答えが出ました!
この全体の作業量(ここでは1200枚)を仕事算では「全体の仕事量」といいます。また1人が単位時間あたりに進められる仕事量(ここでは1時間あたりの100枚)を「時間あたりの仕事量」といいます。
今までやってきた計算は、全体の仕事量÷時間あたりの仕事量=時間を求めましたね。
これは、全体の仕事量=時間あたりの仕事量×時間を変形したものです。
なので、全体の仕事量=時間あたりの仕事量×時間をまずは理解しましょう。
あ、よく聞く人月計算も同じ感じですよね。人月計算は人数×時間で求めますよね。人数が、仕事の量をあらわしているんですね! だから、単位が「人月」なのか!
全体の仕事量を考える
それでは、計算方法を考えていきましょう。今は、仮に1200枚とおきました。
全体の仕事量がわからない場合にはどうすればいいんでしょうか?
ひとつの方法としては、時間あたりの仕事量と時間がわかっていれば、それらを掛けて全体の仕事量とおくことができますね。
たとえば、4人ですると3時間かかる仕事量は4×3=12ということですか?
はい、全体の仕事量が12であるとき、6人でするとかかる時間は?
12÷6=2時間となり、先ほどの答えと同じですね。これは簡単ですね。
ただ、たとえば5人で作業をすると?
12÷5=2.4時間
あー、この小数の扱いって面倒ですよね。2.4時間って、2時間40分でしたっけ?
いえ、1時間は60分なので、小数部分は、60分に掛けます。60×0.4=24分です。
そうか、60分の0.4ですもんね。ということで、5人の場合は2時間24分ということですね。
正解です!
ところで、他の考え方もあるんですか?
はい、全体の仕事量を「1」とおく考え方です。
その「1とおく」って、苦手だった覚えがあります。いつ1とおけばいいのかよくわからなくて。なんで1なんだろうって。
「1とおく」は割合でもやりましたね(第2回)。1ではなくて12とか24とおいてもいいんですよ。ただ、そうすると、どの計算でいくつとおくか、いちいち考えなければならないので、えいやーと「1」にしてみた感じです。1とおくと決めたら、何とおくか、迷わずに済みますからね。全体の仕事量がわからない? であれば1とおこう! えいやー
えいやー
よい掛け声ですね! その調子です! 時間あたりの仕事量×時間=全体の仕事量は変わらず、全体の仕事量は1とおきます。では、全体の仕事量を1とおいたとき、3時間かかる仕事は、時間あたりの仕事量はどれだけですか?
時間あたりの仕事量を𝒳とおくと、𝒳=1だから、𝒳= 1 3ですね。
はい、その通りです。こんな感じで全体の仕事量を1とおいたときは、はじめから分数がからむ計算になるので、心してかかりましょう。
仕事算の問題に挑戦
それでは別の問題に挑戦しましょう。ある仕事をするのに、Aさん1人では12時間かかり、Bさん1人だと8時間かかります。この仕事を2人で行うと何時間何分で終わりますか?
この問題では、それぞれの人の時間あたりの仕事量が違うんですね…。でも、平均して10時間とすればいいですか?
平均したくなる気持ちはわからなくないです。が、Bさん1人で8時間の仕事が2人で取り組んだら10時間になるって、ヘンじゃないですか?
そう言われれば、あり得ませんね。結果を単純に平均するんじゃダメなんですね…
全体の仕事量と2人のそれぞれの時間あたりの仕事量がわからないですし、それぞれの作業の結果からは2人が同時に作業したときの答えは出ません。先ほどの話を思い出しましょう。まずは、全体の仕事量を1とおき、それぞれの時間あたりの仕事量を求めます。
わかりました。全体の仕事量を1とおいたとき、それぞれの時間あたりの仕事量は、式を変形をして、全体の仕事量÷時間だから、
Aさんは 1÷12=1 12、Bさんは1÷8=1 8です。
よろしい。では、2人がタッグを組んだら?
この2人、仲はいいんですか?
わかりませんが、とりあえず、一緒に仕事します。一緒にするということは足しますね。
となると、2人が一緒にやると、1時間あたりの仕事量は、
1 12 ₊ 1 8 = 2 24 + 3 24 =5 24ですね。
はい。それでは、この1時間あたりの仕事量から、作業時間を求めましょう。
全体の仕事量÷1時間あたりの仕事量=時間なので、
1÷5 24=24 5=44 5
だから4と4 5時間…?
はい、4 5時間を分に直しましょう。
60に掛けるんですよね。60×4 5⁼48分
つまり、4時間48分ですね。
正解だゾーウ!
あ! 久しぶりのゾウさん!
ITパスポートの問題に挑戦!
仕事算はITパスポート試験にも出るんですよ。
ITパスポートって、社員に取得させることが話題になっているアレですか?
そう、人材不足やDX化などで話題になっていますね。一般的に必要とされるレベルのIT知識を問う国家資格です。
たとえば…
ITパスポート試験 令和5年度 問55
ソフトウェア開発の仕事に対し、10名が15日間で完了する計画を立てた。しかし、仕事開始日から5日間は、8名しか要員を確保できないことがわかった。
計画通り15日間で仕事を完了させるためには、6日目以降は何名の要員が必要か。ここで各要員の生産性は同じものとする。
この問題、計画性がないですね。必要だからといって確保できるんですかね?
問題なんで許してください。さて、解いてみましょうか。
この問題だったら、1とおくより、掛け算したほうが早く解けそうですね。10名が15日なので、全体の仕事量を150とします。
すばらしいですね。人数と時間(日数)がわかっているなら、仕事量は1とおかなくてもいいですね。まずは最初の5日間で進んだ仕事量を求めましょうか。
はい。仕事の開始から5日間は8名しか要員を確保できないということなので、5日間×8名=40ですね。つまり、残りの仕事量は150-40=110ですね。
その通りです。その110の仕事をあと何日で終わらせる予定ですか?
計画通り15日で終わらせる予定で、もう、すでに5日たってるんですから。残りは15-5=10日間ですね。
ということは、1日あたり何名必要ですか?
110÷10=11 11名ですね。確保できるんですかね?
答えは確保できましたね。ゾウさんの手も借りたい現場なのは間違いなさそうですが。
いや、ゾウの手は…鼻ならいいかもしれませんが…!
ゾウですね! これで、プロジェクトの管理もバッチリですね。さあ、お手伝いに行きましょうか。
はい!
ポイント
- 全体の仕事量=時間あたりの仕事量×時間
- 時間あたりの仕事量、時間がわかっているときは、その2つを掛け算して仕事量を求める
- どちらかがわからない場合は、全体の仕事量を1とおくとよい
今日の問題をおさらい
Q1. 4人ですると3時間で終わる仕事を6人で作業をした場合は何時間で終わりますか。
4×3=12(全体の仕事量)
12÷6=2
答え 2時間
Q2. ある仕事をするのに、A1人では12時間かかり、B1人だと8時間かかります。この仕事を2人で行うと何時間何分で終わりますか。
全体の仕事量を1とおく
Aさんの仕事量1÷12=1 12
Bさんの仕事量1÷8=1 8
AさんとBさんが一緒に作業をした場合、
1時間あたり、1 12 +1 8=2 24+3 24=5 24
時間は、1÷5 24=24 5=44 5
60×4 5=48
答え 4時間48分
Q3.ソフトウェア開発の仕事に対し、10名が15日間で完了する計画を立てた。しかし、仕事開始日から5日間は、8名しか要員を確保できないことがわかった。
計画通り15日間で仕事を完了させるためには、6日目以降は何名の要員が必要か。ここで各要員の生産性は同じものとする。(ITパスポート試験 令和5年度 問55)
全体の仕事量を 10×15=150とする。
開始から5日までに終わった作業量 5×8=40
残りの作業量 150-40=110
残りの日数 15-5=10
1日あたりの作業量(人数) 110÷10=11 よって11人
答え 11人
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オリジナル記事:【計算できる?】4人で3時間のタスク、6人でやると何時間?|業務効率化に必須の仕事算 | 算数が苦手なマーケター向け「算数基礎講座」
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