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佐川急便とヤマト運輸が4月、宅配便の届出運賃を引き上げる。佐川急便は平均8%、ヤマト運輸は同10%の値上げを表明しており、個別契約となる大口の通販企業へもそれぞれ同程度の引き上げを求めていくと見られる。燃料代などエネルギーの高騰に加え、いわゆる物流業界の「2024年問題」を1年後に控え、宅配便業界が動き出した。「宅配クライシス」から6年、再び通販企業が大きな課題に直面することになそうだ。
【佐川急便値】飛脚宅急便、飛脚クール便、飛脚ラージサイズ宅配便など値上げ
佐川急便は4月1日、宅配便の「飛脚宅配便」などの運賃を引き上げる。「飛脚宅配便」の60サイズを関東から関東へ送る場合の料金は現行の770円が850円となり、80円アップ(160サイズまでの5サイズの上げ幅は80~132円)。また、同サイズを関東から関西へ送る場合、現行の880円が970円と90円のアップになる(160サイズまでの5サイズの上げ幅は90~162円)。
値上げの理由として、エネルギーや施設・車両等の価格高騰、労働力コストの上昇、物流の24年問題に対応した従業員とパートナー企業の労働環境改善などを挙げている。
佐川急便は、22年12月末、公正取引委員会が実施した独占禁止法上の優越的地位の濫用に関する緊急調査で、複数の協力企業に対して「労務費、原材料価格、エネルギーコスト等の上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと」(「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」)などに該当する行為を行っていたとして、社名が公表された。このような事態もあったことが運賃値上げの大きな理由の一つになったとも見られる。
「飛脚宅配便」のほか、一部サイズの「飛脚クール便」、「飛脚ラージサイズ宅配便」なども値上げする。「飛脚クール便」は、140サイズ20キログラムと同30キログラムの2つを対象にクール便の追加料金(「飛脚宅配便」の料金に付加する料金)をそれぞれ715円から880円、935円から1100円に引き上げる(いずれとも165円の上げ幅となる)。
大型宅配便の「飛脚ラージサイズ宅配便」は関東から関東に送る場合、170サイズが現行の2420円が2600円と180円の値上げ(260サイズまで6サイズの上げ幅は180~425円)。関東から関西へは、170サイズで現行の3135円から3360円と225円の値上げとなる(260サイズまで6サイズの上げ幅は225~555円)。
親会社のSGホールディングスは1月27日に行った23年3月期第3四半期決算説明会における質疑応答で、今回の届出運賃の改定による業績影響について、届出運賃が適用される荷物(一般ユーザーが送る荷物)は、全体の2%程度とし、影響は小さいとの見方を示した。法人客を対象とする個別の契約運賃には直接的な影響はないとするも、引き続き適正運賃収受の取り組みを実施していくとした。
【ヤマト運輸】宅急便、宅急便コンパクト、EC専用商品のEAZY、国際宅急便を値上げ
一方、ヤマト運輸は4月3日から値上げする。資源・エネルギー価格、原材料価格の上昇に伴うインフレ傾向に加え、労働力減少による賃金や時給単価の上昇、24年問題を控えた物流事業者を取り巻く外部環境がこれまで以上に厳しさが増すとして、コスト吸収のための引上げとしている。
運賃引き上げの経緯などについて、2月6日開催の親会社ヤマトホールディングスの23年3月期第3四半期決算説明会で「昨年春頃から物価上昇があり、想定を超えるような上げ幅だった。また、10月にも値上げの動きがあり、秋頃から検討を始めていた」(栗栖利蔵副社長)と述べた。上げ幅についてはサイズ、重量、地帯により異なり、最小で1%、最大で64%になるとした。
また、栗栖副社長は、届出運賃を毎年度改定する意向も示した。据え置きの場合も含めて、毎年2月上旬ごろに4月から適用する運賃を発表するという。
値上げは宅急便のほか、宅急便コンパクト、EC専用商品のEAZY、国際宅急便も対象にする。届出運賃は個人や小口利用の法人などを対象とする運賃だが、個別契約する大口利用の法人にもこれから引き上げへの協力を求めていく。
新運賃の例を見ると、宅急便コンパクトと宅配便を関東から関東へ送る場合の新たな運賃(現金決済)は、コンパクトが40円の上げ幅となり、60~200サイズの8サイズの上げ幅は10~880円。関東から関西へ送る場合の上げ幅はコンパクトが50円、60~200サイズの上げ幅20~1440円となる。
6年前の宅配クライシスでは、値上げはヤマト運輸が先行し17年10月1日から改定。そして佐川急便は同年11月21日から、日本郵便は翌年3月1日からと、三者三様の値上げ開始時期だった。今回はヤマト運輸、佐川急便とも発表後の2カ月程度での実施となる。発表から実施までの時期が短いのも今回の特長とも言える。原材料費価格やエネルギー価格の急激な高騰で、一刻も運賃引き上げを行っていかないとならいという宅配便事業者の焦りが滲む。
そして、以前から重要な課題と見られていた24年問題を1年先に控え、対応策を急がなければならない事情もある。
この1年、通販企業は原材料費の値上げに直面し、コスト増大に苦しめられてきているが、宅配便運賃の引き上げが加わることになる。コロナ禍にあって拡大基調になった通販業界だが、コロナ収束に向かいつつある中、売上高の反動減、そしてコストアップを余儀なくされ、より一層かじ取りが難しい経営環境となりそうだ。
日本郵便は2月14日時点で値上げについての発表はなかった。一方で、同社は中小企業庁から「価格交渉促進月間(22年9月)フォローアップ調査の結果」で、郵便物や荷物の配達・集荷などの業務で、協力会社から価格交渉や価格展開に関して厳しい評価がされた。同社は2月20日から、協力会社とのパートナーシップ構築に向けた取り組みを開始すると発表。このような事態にある同社も値上げに動く可能性は大きいと見られる。
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※ネットショップ担当者フォーラム掲載版:【送料値上げの背景】ヤマト運輸と佐川急便が運賃引き上げ、日本郵便も値上げの可能性。主因は燃料高騰と2024年物流問題
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