「いちばん近いハワイ」をコンセプトに掲げるハワイアンカフェ「コナズ珈琲」。2013年12月に1号店の「コナズ珈琲 ふじみ野店」(埼玉県ふじみ野市)がオープンし、2024年5月現在は42店舗まで拡大している。展開するのは、トリドールホールディングスから分社化してコナズ珈琲事業を担うKONA’Sだ。
出店ペースが特段早いわけではないが、コロナ禍も着実に店舗数を増やし、営業利益を向上させている。23年度第3四半期の決算では前期比+4.2億円以上の利益増を実現した。
そんなコナズ珈琲が戦略の軸としているのが「体験設計」だという。日本にいながらハワイにいるような空間と時間を気にせずリラックスできる居心地の良さが、顧客を引き寄せるカギになっているとか。
KONA’Sの代表取締役社長 阿部和剛氏に「体験設計を軸としたビジネス戦略」を取材した。
駐車場から「ハワイ」を感じる、こだわりの空間設計
コナズ珈琲は、トリドールホールディングス 代表取締役社⻑ 兼 CEOの粟⽥貴也氏がハワイを訪れた際、現地のサーファーが集まる民家のようなカフェの雰囲気に感動して、「この空間を日本でも再現したい」と考えたのが始まりだという。
「圧倒的なハワイ空間」を実現するため、コナズ珈琲は、都心からやや離れた郊外に90〜130坪の広々した店舗を構えている。都心と比べて賃料を抑えられるうえに、郊外にあることで、より一層「ハワイ空間」が際立つためだという。
店舗設計には、並々ならぬこだわりが見える。かすれたような風合いの木材を使った民家風の店舗やカラフルなアート、南国を思わせるヤシの木と、周囲と一線を画す光景が広がっている。
車で来店される方が多いのですが、住宅街などに突如、異空間が現れるように演出しています。多くの店舗やビルが並ぶ都心に現れるのと比べて、印象はかなり違うと思います(阿部氏)
店内に足を踏み入れると、コーヒーを焙煎する独特の香りが漂う。いたるところに色鮮やかなハワイアン雑貨やサーフボードが飾られ、眺めるだけでも楽しい空間だ。
座席は、“いかにお客様がリラックスできるか”を最優先に配置しています。他の方と目が合いづらく、個室に近い感覚で過ごせるのが特徴です。従業員の作業効率は落ちますが、その分、お客様には居心地の良さを提供できると考えています(阿部氏)
メニューでもハワイ感を演出、定番だけじゃない工夫も
提供されるメニューもハワイ感が満載だ。食事メニューは、定番の「ロコモコ」に「ガーリックシュリンプ」や「モチコチキン」のプレート、「エッグベネディクト」や「ハンバーガー」も。
デザートは好みに合わせて選べる数種類の「パンケーキ」や、朝食として人気の「アサイーボウル」(一部取り扱いのない店舗あり)などがある。
最も意識しているのは彩りとボリュームです。メニューを選ぶ段階からワクワクして、 写真を撮りたくなるような見た目に仕上げています。みなさんが思い浮かべる定番のハワイ料理は用意しつつ、それだけでなく、日本人にとってなじみのあるメニューやリアルなハワイを体験できる工夫も取り入れています(阿部氏)
阿部氏いわく、他国から移り住む人が多いハワイにはさまざまなレストランがあり、ハワイに滞在すると多様な料理を食べる機会があるという。そうしたリアルなハワイを体験してほしいとの思いから、時に他国の料理も提供。夏のフェアで販売したベトナム料理のフォーは、好評だったそうだ。
一見、ハワイとは結びつかないメニューですが、現地の伝統的な花飾り「レイ」に使われるデンファレの花を飾ったり、スパイスやハーブを組み合わせて南国で食べたくなるスパイシーでさわやかな味わいにしたり、ハワイを感じてもらえる工夫を凝らしています。また、この春に実施していたフェアでは、日本人の方が好む食材を使った『ストロベリーモンブランパンケーキ』を発売したのですが、ココナッツアイスクリームを添えてハワイらしさを取り入れました(阿部氏)
こうした工夫の背景には、「日本人がイメージするハワイ料理はそれほど多くない」という事情もある。実際、「ハワイ料理」と言われても、あまり思いつかない人が多いのでは。ディープなハワイ料理を追い求めるより、日本人の好みに寄り添いつつ、どこかにハワイらしさを加えているわけだ。
作業は効率化しても、「回転率」の向上は求めない
顧客の「体験」を重要視することから、滞在時間の制限を設けていないのもコナズ珈琲ならではだ。
お客様の回転率を上げることは一切求めません。リラックスして何時間でも過ごせることを大事にしています。接客においては、ガチガチにマニュアルを作るというより従業員一人ひとりのおもてなしの感覚を大事にしています。こちらからお願いしているのは、来店時にドアを開けての笑顔でのお出迎えと、退店される際のお見送りです(阿部氏)
できる限り従業員がドアを開けて「ようこそ」と明るくお迎えし、感謝と共に「またお越しください」と見送ることを心がけているという。
心地よい空間で時間を気にせず過ごせるのはコナズ珈琲の魅力であり、顧客に支持される理由になっている。しかし、それゆえ長時間滞在する人が多く、待ち時間が発生しやすい。特に人気のある幕張店や2023年12月にオープンした八千代緑が丘店は、3時間もの待ち時間が発生することもあるという。そこで待ち時間を減らそうと、従業員の作業効率を高める工夫を徹底しているそうだ。
作業効率を重視したキッチン設計に無駄のない動きで、規定内の時間で料理を提供するようにしています。加えてお皿のサイズを小さめに変えて、1度に2〜3枚を運べるように工夫しました。約9割が女性従業員なので、以前の直径30センチの大皿では1度に1枚しか運べなかったのです(阿部氏)
2028年度までに100店舗が目標、海外展開も視野に
冒頭で伝えた通り、コナズ珈琲の業績は好調であり、2028年度には100店舗の運営を目標にしている。
一番に広げたいエリアは関東です。ただ、90坪以上の店舗面積に約50台分の駐車場を設けられる広さが必要であり、条件に合う土地を見つけるのは容易ではありません(阿部氏)
店舗数が増えるにつれ、人材をどう集めるか、集めた人をどう教育するかも課題になるという。
現状は『コナズ珈琲の空間で働きたい』という方が多く集まるのですが、人手不足が叫ばれるなかで、今後は採用が難しくなる可能性があります。この点は、交通の便があまり良くない郊外に出店する難しさかもしれません。また、新店舗出店時の人材教育も課題です。質の高いサービス提供を継続できる体制を整えていかなければなりません(阿部氏)
KONA’Sの親会社であるトリドールホールディングスでは、「日本初となる日本発No.1グローバルフードカンパニー」を目指し、丸亀製麺をはじめとした自社ブランドの海外出店を加速させている。コナズ珈琲も目指すところは一致していると阿部氏。
海外の飲食店を巡っていて思うのは、日本で“当たり前”とされるサービスの質が、グローバル視点では相当高いということ。日本のホスピタリティは海外で十分に勝てる理由になる。コナズ珈琲も世界展開を構想に入れています(阿部氏)
現状は国内店舗の拡大に注力しつつも、同時に世界を舞台に戦うための土台づくりも進めているという。日本発のハワイアンカフェの動向に引き続き注目したい。
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オリジナル記事:なぜ「コナズ珈琲」は人気? 好調のカギは“あえて”回転率を求めない居心地の良さ
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