なぜ「チョコザップ」は人気? 成功の裏に“規格外のマーケティング戦略”あり

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yu-ta(ゆーた)26歳、会社員 PC.スマホ周辺機器やスマート家電など ガジェットを使って スマートな生活を送っています。 このサイトでは管理人おすすめの 最新の便利ガジェット情報や お得に買えるセール情報を中心に 発信しております。
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ライザップグループは2022年7月、“コンビニジム”として「chocoZAP(チョコザップ)」をブランドスタートした。

月額2,980円で24時間利用可能。トレーニングマシンのみならず、セルフの脱毛やネイルなどの美容サービスにマッサージチェア、ワークスペースと、「フィットネスジム」の領域を超えた施設だ。店舗数は1,333に拡大、会員数は112.4万人となる(2024年2月14日時点)。

人気の背景には、「47店舗の覆面出店」「膨大な数のチラシやWeb広告のA/Bテスト」といったマーケティング施策があるという。マーケティング本部長・鈴木隆之氏に話を聞いた。

RIZAPグループ株式会社 上級執行役員 RIZAP事業統括 兼DX推進本部長 兼マーケティング本部長 鈴木隆之氏

ネイルや脱毛、ゴルフもできる“コンビニジム”の「chocoZAP」とは?

chocoZAPは、運動初心者の方をターゲットにしたフィットネスジムです。というのも、日本では日常的にフィットネスジムに通っている人は約3%とごく少数です。小さなパイを競合と奪い合うより、残りの大多数をターゲットにしたいと考えました(鈴木氏)

運動初心者向けのフィットネスジム「chocoZAP」(画像:RIZAPグループ提供)

24時間無人で運営しているchocoZAPは、平均30~40坪程度の広さにランニングマシンやエアロバイク、部位ごとに体を鍛えるマシンなど約11種類のトレーニングマシンを完備。トレーニングウェアの着替えや運動シューズが不要で、私服で気軽に運動できるのが特徴だ。

よくある黒色のトレーニングマシンではなく、白色や木目調をそろえている(画像:RIZAPグループ提供)

さらに、次のセルフサービスも兼ね備える(導入サービスは店舗によって異なる)。

  • セルフネイル
  • セルフ脱毛
  • セルフホワイトニング
  • マッサージチェア
  • ゴルフ練習スペース
  • ワークスペース など

利用者の反応を見ながら、オープン後にサービスを拡充してきた。トレーニングマシンは予約不要だが、その他のサービスは基本的に事前予約制となる。

セルフ脱毛のイメージ画(画像:RIZAPグループ提供)

開業当初は「無人格安ジム」のイメージが強かったが、次々と付加価値が増え、あちこちに店舗がオープンし、認知度もグッと向上。1年5か月ほどで会員数100万人を達成した。

現在の利用者層は20代~30代がもっとも多いが、40~50代も少なくない。男女比は男性が48%、女性が52%だ。一般的なフィットネスジムは男性が優勢といわれているが、初心者向け、かつ美容サービスの提供が女性に支持されているのかもしれない。

RIZAPの名前は一切出さずに47店舗出店、集客や継続率を検証

これまでRIZAPでは、「健康的に痩せたい」「美しい身体になりたい」と切望する人をターゲットに、結果にコミットするパーソナルトレーニング事業を展開し、成功を収めてきた。

一方、chocoZAPは運動へのモチベーションがそれほど高くない初心者を広くターゲットにしている。そこで、顧客のリアルな反応を見るために同社が実施したのが、大量の覆面店舗でのテストマーケティングだ。

マーケティング本部長 鈴木氏

まず、chocoZAPブランドがオープンする以前の2021年10月頃から、覆面店舗の出店を開始した。RIZAPの名前は一切出さずに、『FIT PARK』『FIT FILED』などの名前を付けて、オフィス街、駅前、山手線の圏内、やや都心から離れた住宅地など複数エリアで展開。似たような条件で出している店舗の価格帯や設備、サービス設計を一部変えて、集客や継続率などを検証した。

47店舗でA/Bテストをくり返した結果、いろいろなことが見えてきました。たとえば、さまざまな部位を鍛えられるマルチマシンよりも、一部位だけを鍛えるシンプルなマシンのほうが好評だったり、対面や遠隔でトレーナーが教えるスタジオプログラムがあまり好まれなかったり。

そうした反応を踏まえて『美容サービスも取り入れた設備』『完全無人で24時間運営』『月額2,980円』のビジネスモデルでスタートすることにしました(鈴木氏)

「大量のチラシ・Web広告」でA/Bテストを実施

chocoZAPがオープンしてからは、チラシやWeb広告、ランディングページを大量に制作。その数はチラシ560種類以上、バナー広告8,600種類以上、ランディングページ260種類以上にのぼる。

なぜなら、複数ある提供価値のなかで何がもっともターゲットに刺さるのか検証するためだ。「手軽さ」「サービスラインナップ」「コスパ」など、切り口を変えたクリエイティブを制作し、A/Bテストを実施した。

chocoZAPが制作したバナー広告の一部(画像:RIZAPグループ提供)
「手軽さ」を切り口にしたバナー広告の例(RIZAPグループ提供)

キャンペーンのタイミングなどに複数の広告パターンを作って、もっとも反応が良かったものを『勝ちパターン』とする。次はまた異なるパターンを複数作って、勝ちパターンと比較する。そうやって素早くPDCAを回しながら、ベースをブラッシュアップしていきました(鈴木氏)

アプリを使ったCRM施策が、退会率の抑制に貢献

chocoZAPの入会手続きはウェブで行い、次の3点が必要となる。

  • メールアドレス
  • クレジットカード
  • スマホ

またジムの利用には、会員専用アプリのダウンロードが必須だ。アプリには次のような機能がある。

  • 入館証
  • 美容サービスなどの予約
  • トレーニングマシンの使い方などの動画閲覧
  • 体重や体脂肪率の記録※1
  • 食事の記録※2
※1 入会時にプレゼントされる体組成計と連携すれば、体重や体脂肪率などが自動で入力される
※2 AIの画像解析を利用した食事写真からの記録、またはメニューや食材を検索して記録
必要な手続きや情報確認はアプリ内でおこなう(画像:RIZAPグループ提供)

入会者を増やすことも重要だが、ジムの運営においてもっとも重要な指標は「退会率(継続率)」だと鈴木氏は言う。明確な数値は公開していないが、サービス開始時の退会率を「1」とすると、2023年9月時点では「0.62」まで退会率を抑制できているそうだ。

2022年のサービス開始時と比較して、退会率が抑制できている(画像:RIZAPグループ提供)

chocoZAPでは継続している人、していない人の利用状況の違いをよく見ているという。たとえば、次のセグメントの継続率を比較する。

  • 「来店回数が月4回以上の人」と「1〜2回の人」
  • 「トレーニングマシンだけを使っている人」と「その他サービスも併用している人」
  • 「専用アプリのコンテンツを積極的に使っている人」と「そうでない人」

何が継続のモチベーションに影響しているのかを分析しています。いくつかの側面がありますが、『フィットネス以外のサービスの併用』は継続率へ寄与する要素の一つです。日によってトレーニングマシンと美容サービスを使い分けている方もいれば、運動ついでにワークスペースで仕事をする方もいます(鈴木氏)

美容サービスやワークスペースの利用など、その他サービスを併用している人は継続しやすい

加えて、専用アプリを使ったCRM施策も継続率に貢献しているようだ。chocoZAPはビジネスモデル上、100%の会員が専用アプリを使用しており、デジタル上でのコミュニケーションがしやすいという。

たとえば来店頻度が落ちている会員には、RIZAPの熱血トレーナーが「今日ジムに行こう。私がジムで待ってます」と促す動画などをアプリ上で配信している。

熱血トレーナーの動画イメージ画(画像:RIZAPグループ提供)

来店頻度が落ちている方には来店促進を、一部のサービスだけを利用している方には別のサービスのレコメンドを送るなど、セグメントしてデジタル上でコミュニケーションをしています。ここでも複数パターンを作ってA/Bテストをしていて、これが地道に効いています(鈴木氏)

とはいえ、結果的に退会率が抑制できている一番の理由は、「通うハードルをとにかく下げているためではないか」と鈴木氏。

短期間で店舗数を増やして、家や職場の近くにchocoZAPがある状態を作り、かつ着替えやシューズも不要なので、スキマ時間に通いやすいのだと思います。昼休みにスーツのまま運動するなど、柔軟に利用できるのも継続率につながっているのかなと(鈴木氏)

生成AIを活用し、個別最適化したコミュニケーションへ

これまで順調に推移してきたchocoZAP。これからの取り組みとして、鈴木氏は「より個別最適化したコミュニケーションをしたい」と話す。

アクティブにアプリを活用している方だと、体重や体脂肪率に加え、食事内容や運動内容も記録されています。そのライフログをベースに個別のフィードバックやレコメンドをしていけたらと。

現在、RIZAP事業で培ったパーソナルトレーニングのノウハウを活かしながら、生成AIを活用した自動フィードバックの開発を進めています(鈴木氏)

テクノロジーを活用して、一段と深いコミュニケーションを目指す

一方で、初心者を対象としたchocoZAPでは、ライフログを記録するほどのモチベーションがない人も少なくない。そういった人に対しては、トレーニングの内容云々より継続を後押しするコミュニケーションを重視したいという。

トレーニングマシンを使った運動は週2回、5分間だけでも継続すれば効果が出ますし、体重や体脂肪率を減らさずとも、キープできるだけでも健康的といえます。体の変化より、継続に対するフィードバックで動機づけをしていきたいです(鈴木氏)

chocoZAPは、2026年3月までに2,800店舗、2027年3月には3,800店舗の出店を目指している。これまで同様にPDCAを回しながらサービス設計やオペレーションを進化させていく予定だ。次はどんな新サービスが登場するのか、期待したい。

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