YouTube運営において、「アルゴリズムを攻略する」、「アナリティクスで深く分析する」ことが成功への近道だと思われがちです。多くの担当者は、再生回数や視聴時間、エンゲージメントなどの数値を追いかけ、どうすれば視聴者が増えるかを熱心に分析します。
しかし、意外にもアルゴリズムやアナリティクスにハマるほど、期待した成果が出ないものなのです。なぜか? 大半の人が、そもそもの「目的 / 目標 / 成果」を決めずに走り出しているからです。「そんなの当たり前のことを?」と思うかもしれませんが、その重要性が見過ごされ、結果として運営が迷走してしまうケースが跡を絶ちません。
本記事では、YouTube運営の様々な失敗を回避し、成果を出すために必要な考え方と、低コスト・低リソースで運営するための具体的なアプローチを解説します。
「アルゴリズム、コンテンツ戦略、アナリティクス」に意識が向きがち
多くの人が「アルゴリズム」「コンテンツ戦略」「アナリティクス」に注目しがちです。YouTubeに限らず、アルゴリズムに関する記事は人気でPVを集めます。それだけ、関心が高いことの現れでしょう。
- 「アルゴリズムをハックすれば、視聴回数が急激に増えるのでは」
- 「アナリティクスをしっかり分析すれば、最適な運用ができるはず」
- 「コンテンツさえ良ければ、自然に人気が出るだろう」
これらの要素は当然重要ですが、どれだけアルゴリズムに詳しくなり、アナリティクスを熟知し、コンテンツの質を高めたとしても、それでチャンネルがうまくいくかは別問題。なぜなら、それらは幹ではなく、枝葉にすぎないからです。
YouTubeチャンネル運用の根本である「目的 / 目標 / 成果」が曖昧なままでは、どの方向に進むべきかが不明確になり、施策が効果的に機能しません。
「How と What」よりも「Why」
目的(Why)が定まっていない状態で、いくら方法(How)や内容(What)を練っても先には進めません。
チャンネルの運用目的が定まっていなければ、全ての施策が迷走します。視聴者のニーズや期待に応えられないコンテンツを量産し、仮に視聴回数が増えたとしても、求める成果(リード獲得、認知度向上、ブランド構築など)にはつながりません。
「誰の何を解決したいのか」「成否をどう測るのか」がないままアナリティクスを眺めたり、アルゴリズムの攻略を試みても、何の意味もないのです。
一方で、目的(Why)が明確であれば、方法(How)は自ずと決まります。
たとえば、チャンネルの目的が「新製品の認知を高めること」であれば、「製品の特徴や使い方を視覚的に紹介するデモ動画」が中心になるでしょう。「既存顧客のサポートを強化すること」ならば、トラブルシューティングやアップデート内容を説明する「サポート動画」や、顧客からよく寄せられる質問に答える「FAQ動画」になります。
「とりあえずやってみよう」の功罪
初めてYouTubeに挑戦する企業や担当者は、具体的な戦略を練る前に、まずは動画を投稿してみることで、手応えを感じたり、何がうまくいくかを実感したいと考えることが多いです。
「やってみなはれ」の精神は個人的に嫌いではなく、四の五の言う前に行動できるパワーは素晴らしいと思いますが、功罪両方あります。
功(メリット)
「とりあえずやってみる」ことで、動画を作って投稿するプロセスを体験できるのはメリットです。早い段階でチャンネル運営の基本を学び、改善点を発見できることもあります。初めから完璧を目指すより、トライ&エラーを通じて少しずつ改善していくことはSNS運用の基本でもあります。
投稿を重ねれば、動画編集やサムネイル作成、投稿時間などの技術的な側面に慣れ、運営の効率化にもつながります。
罪(デメリット)
「成果指標」が曖昧なまま、進めてしまう落とし穴があります。評価基準がないと、何をもって成功とするか、が見えてきません。
たとえば、動画をいくつか投稿した後、再生回数が思うように伸びない場合、その理由が何なのかを正確に判断できません。アルゴリズムの影響か、内容がターゲットに合っていないのか、そもそも視聴者のニーズを理解していないのか……問題の原因が特定できず、担当者は途方に暮れることになります。
その反動で、目先の結果だけに一喜一憂してしまい、チャンネル全体の長期的な成長が見失われることにもなります。
逆に「ずっと議論ばかりでアクションしない」ケース
もう一つよくあるのは、計画や議論ばかりに時間を費やし、なかなかアクションに移せないケースです。
「もっとデータを集めてから」「もう少し市場調査をしてから」「競合の動きを見てから」「ベストなタイミングを見極めてから」といった考えが優先され、堂々巡りの議論をする……B2B企業や大企業に多く見られるパターンです。これはこれで厄介です。
慎重な姿勢を否定するつもりはないですが、YouTubeのような動きの早いプラットフォームでは、素早く試して、失敗しながら学ぶ姿勢が大事です。
というのも、どんなに緻密に計画を磨き上げたとしても、やってみて初めてわかることがほとんど。失敗を恐れて行動に移さないままでいると、せっかくの成長機会を逃してしまいます。
「まずは小さく始めて、そこから学んで改善する」という合意を形成をしましょう。初期段階では大きな予算を投じず、小規模なテスト運用を始めてみる。そこから得られたデータを基に、徐々に改善しながら運用を拡大していくことで、リスクを抑えながらもアクションを継続できます。
成果を「成功か失敗か」の二元論で判断しない
YouTubeは、マラソンのような息の長い施策です。成果を「白か黒か」で判断するのは危険です。特に、ひとつの動画が成功したかどうかだけでチャンネル全体の評価を決めてしまうことは避けるべきです。
バスケットボールに例えるなら、ボール=動画、シュート=投稿、動画数=シュート回数です。
シュートが決まり、大きなリーチやエンゲージメントを得られることもあれば、シュートが外れ、虚無感を味わうこともあるでしょう。
試合で選手が数回シュートを外したからといって、勝負を諦めたり、打つことをやめることはしません。それと同様に、動画が入るか外れるかは、時々の運やタイミングに左右されることもあります。個々の動画がなぜうまくいったか、いかなかったか振り返る姿勢は持ちつつも、初期段階での再生数に一喜一憂はしないように。
ある動画がさほど再生されなかったとしても、視聴者にとって有益であったり、次の動画へのヒントやフィードバックを得るための重要な役割を果たしているかもしれません。チャンネル設計がターゲットに合っていれば、必ずしも再生回数だけが成功の指標ではありません。
カギはいかに「低コスト&低リソース」で運営できるか
短期の成果に振り回されず、勇気を持って大胆に試行錯誤できるかどうかは、「低コスト&低リソースで運営できるか」にかかっています。ミニマムの予算、人員、時間でテスト運営するなら、上層部もとやかく言いません。
最初から多くのリソースを投入して高品質な動画を作ろうとするのは、持続性の観点から見てもリスクが高いです。限られたリソースで「ダメ元」で運営し、徐々に改善していくことが長期的な成功の鍵となります。
長尺動画を作るのがしんどいのなら、ショート動画はどうでしょう? いきなりYouTubeに公開するのではなく、実験として会議室でスマホで撮影&編集して、「さくっと作ってみたんですが」と上司に見せてみる。反応が良ければ、社内Slackにも展開してみましょう。
上司「誰が作ったの」 部下「私です」
上司「どれくらい時間かかったの」 部下「撮影5分、編集10分です」
上司「たった15分で?」 部下「休憩時間にやりました」
上司「いいね、別のテーマでもほしいね」 部下「AとかBとかどうですか」
上司「そうそう」 部下「やってみます」
上司「これ、YouTubeに公開してもいいんじゃない?」 部下「公式チャンネルはまだないですね」
上司「じゃあ、検討してみよう。提案書まとめてくれる?」
となる可能性は十分あります。
初めから完璧を目指さず、手軽に作成し、すぐにアップできる体制を作るのです。高額な機材やプロの編集はいったん保留で。
照明が暗い、セリフを噛んだ、早口過ぎる、挨拶がグダグダ、棒読みになってしまった、ライトがメガネに反射した…などの気になる点も無視!
「気楽に何度もシュートを打てる環境」を整える、この1点に集中するのです。
気楽に打てれば、シュート数も増え、PDCAの材料も揃うので、改善もはかどるという寸法です。
1.目的、目標、成果を決める
↓
2.低コストで運営する体制を作る
↓
3.動画を出す(データを貯める)
↓
4.改善を回す
↓
5.3に戻る
↓
6.回りだしたら2に戻り、予算の積み増しを打診する
このプロセスを高速で回し、少しずつ改善していくことで、短期間で多くの成果を積み重ねることができます。何度もトライしながら、失敗を恐れずに学び、次第にクオリティを向上させることがYouTube運営成功の鍵です。
本記事の筆者、中山氏が具体的なノウハウと事例を示しながら、詳しく解説するセミナーを開催します。
<学べること>
企業のYouTubeチャンネル運用担当者として必要な基礎知識から具体的なノウハウまで体系的に学習ができます。チャンネルの立ち上げ、効果的なコンテンツ制作、そしてアナリティクス分析と効果検証に至るまで、企業のチャンネル運営で必要となるフローを全体的にカバーします。
YouTubeの基礎知識やアルゴリズムの理解、チャンネルの目的設定とターゲット設定、効果的なコンテンツ戦略の立案などを学んでいただきます。さらに、実際のチャンネル設定やアートワークの作成、チャンネル説明文の設定など、実務に即したワークショップを通じて知識を定着させます。
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オリジナル記事:アルゴリズムとアナリティクスにハマるほどYouTube運営は失敗する理由 | はじめての企業YouTubeチャンネル活用
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