みなさん、こんにちは。村石怜菜です。
2023年1回目のコラムです。今年もよろしくお願いいたします。
年末年始のお休みは、皆さんどのように過ごされたのでしょうか。私はついにコロナに感染しました。外出自粛期間となってしまったため、年末年始のほとんどを自宅で過ごすこととなりました。年末年始といえば、スーパーや商業施設だけでなく、医療機関や公共のサービスもお休みに入る期間ですよね。私はしんと静まり返った雰囲気と身が引き締まるような冷気が、年始ならではの雰囲気という気がして好きです。
ただ、そんな休み中に1つびっくりしたできごとが。公共サービスの1つであるゴミ収集が停止したことで、私が住んでいるマンションのゴミ置き場が溢れかえり、ゴミ置き場に立ち入れないという事態に遭遇しました。扉を開けてみると、ダンボールやゴミ袋などがうず高く天井まで積み重なり、文字通り足の踏み場がない状態でした。さらに、分別されていないペットボトルや、皿などの食器類が割れて床に散乱している状況…。
人間が出すゴミの多さと、いとも簡単に秩序が崩れることにとても驚きつつ、「このように整理されないゴミ置き場が荒廃していく現象を割れ窓理論と呼ぶのだな」と身をもって実感した年始でした。
「サステナビリティな消費行動」について、さらに深く学びたい
さて、今回のコラムでは2023年に学びたいこと、知識を深めたいことについて書きたいと思います。私の興味がある領域は「サステナビリティ」「エシカル消費」。特にアパレル産業が抱える産業構造や商品開発サイクルなどへの課題に興味をもっています。YouTubeで動画を視聴したり、Webの記事や本を読んで学んだりということをしています。
YouTubeでは日本語の動画はあまり多くはないのですが、英語だと多くの動画が公開されており、まずは動画で知りたいという方にはおすすめです。環境問題への興味というのは幼いころからあったので、急に興味をもった、というわけではないのですが、改めて体系的に自身の知識とも絡めて、より深く学んでいけたらなと思っています。特に消費行動や行動経済学と結びつけて、考察するようにしています。
サステナブルって注目されてはいるけれど…行動に至るにはハードルが高い
最近では、「環境問題」「地球温暖化」「サステナビリティ」「エシカル」といった言葉を目にしない日はないと思うほど、環境問題に関する話題や露出は増加傾向にあります。2020年7月1日には買い物袋が有料化され、エコバッグを持参することが当たり前になるなど、消費行動には大きな変化がありました。
特に意識していない人でも、社会的な意識の高まりと、エコバッグなどの消費行動の変化により、少なからず影響を受けているのではないでしょうか。さまざまな企業が行っているアンケート調査結果をみても、やはりサステナブルな消費行動を心がける人は少なくはないようです。
こうした社会的意識が高まる一方で、個々人においてはサステナブルな消費行動にブレーキがかかったり、ハードルが生まれたりしているようにも思います。その要因はいったい何なのでしょうか。私自身も消費者として購買の意思決定をする際に、いつも思うことは「サステナブルとかエコな商品や消費行動を選ぶのって難しい! 考えるのが面倒になるときもあるし、賢い消費者になるのって難しいなぁ」ということ。私と同様の感情を抱いたことがある方も多いと思います。
知識があるかどうかは置いておいて、サステナブルに興味をもって能動的に勉強している私でも「サステナブルな商品を選ぶのは難しい!」と感じています。例えば、私の場合はこんなことを日々考えて悶々としています。
- 徒歩1分のドラッグストアで一般的な洗剤を買うのと、ECサイトで植物性由来の洗剤を買うの、環境負荷はどちらが少ないの? ECサイトで買った方が実は二酸化炭素排出量が多いのでは?
- 容器が瓶とプラスチック、どちらがエコなの?
モノを大事に長く使う、無駄な買い物はしないといったエコな行動は、今ある行動を減らすことなので考えることも必要なく、体感的に実感しやすいです。でも、今すでにあるものをサステナブルな商品に代替する場合には、目に見えないことを判断しなければならず、難しいですよね。
同様によく見られる議論としては、「エコバッグvsレジ袋」「タンブラーvs紙コップ」といった構図です。環境負荷軽減のためにエコバッグやタンブラーを買ったとしても、それを何回も繰り返し使わなければ、環境負荷は相殺できない。それならば既存を踏襲し続けた方が良い、というような議論です。可愛いからという理由でプラスチック製のタンブラーを何個も所有したら意味がないですから。
そう、サステナブルな消費には冷静で合理的な思考と、その判断をするまでの学習コストや労力を要するがために、結果、これがハードルになっているのではないでしょうか。
行動経済学では「人間は不合理な生き物」であり、さらに「人間の脳は楽をしたい、面倒を避けたい。だから、なるべく考えないような思考回路になっている」といわれています。これは、サステナブルな消費行動を選択するときの行動・思考パターンにおいても当てはまりますよね。
消費行動で顕在化する2つの自分
私の場合は、次のような2種類の自分が内在しています。
- 楽をしたい自分:「掃除が面倒だから洗浄力が強い洗剤が欲しい」のように、面倒なことを回避して自分にとって目先のメリットが高いものを選びがち
- 冷静な自分:「サステナブルな商品を選択するべきだ」という冷静で合理的かつ長期的な思考に基づいて選ぶ
こうした2種類の自分が、体調や心の余裕といった精神面などの要因が複合的に絡み合い、その時々において異なる判断を行っているようです。忙しくて時間がない、経済的余裕がないなどの場合には、消費行動1つ1つにリソースを割けず、前者の「楽をしたい自分」を選択する傾向が強くなるのではないでしょうか。
サステナブルな消費行動を促進するには?
行動経済学の事例でも有名ですが、電気の使用量などを減らしたい場合には、数値を可視化したり、比較できるような数値を提示したりすると、人々は行動を起こしやすく、結果にも繋がりやすいという事例があります。私の実体験でわかりやすいなと思ったものを紹介します。
1つ目は、給湯器のリモコンパネルです。リモコンパネルのディスプレイには、目に見えない二酸化炭素排出量を表示してくれ、リアルタイムに確認しにくいガスの使用量をパネル上に表示してくれるので、二酸化炭素排出量を身近に感じることができます。
2つ目は、化粧品メーカー「ORBIS」の定期配送サービス「オルビス定期お届けプログラム」 (https://www.orbis.co.jp/regular/)です。化粧水や乳液などの基礎化粧品やシャンプーなどを決められたサイクルで配送してくれるサービスなのですが、Webページでの訴求の仕方が秀逸だなぁと印象に残っています。
定期便というと「自動で配送されるので手間がかからない」「買い忘れがないので便利」といったユーザーメリットを訴求しがちですが、ORBISでは「適正な生産量でここちよい社会を実現する一歩に」と記載しています。明記はされていないのですが、「生産量のコントロールがしやすくなり、結果、環境面などにも良いですよ」ということだと思います。
「人間は楽をしたい」を前提に情報の充実化を
サステナブルな商品は、生活に馴染みやすいシンプルなパッケージも魅力の1つです。さらに、「人間は不合理/人間の脳は楽をしたい」ということを前提に、その商品を購入することによって社会や環境にどのような効果があるのか、具体的な数値や情報を付記することが、消費者の課題意識の向上につながるとともに、消費者の意思決定の一助となると思います。
人間の想像力には限界があるもの。百聞は一見に如かずではないですけれども、冒頭で紹介した年始早々に出くわしたゴミ捨て場事件で、やはり視覚からの情報は偉大だなと感じました。
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オリジナル記事:サステナブルなお買い物は難しくなりがち? | [マーケターコラム] Half Empty? Half Full?
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