協賛セミナー=営業講演をすれば良い、ではありません。講演はきっかけの一つ。参加者の悩みに応え、満足度の高い講演をすれば、おのずと問い合わせてくれます(小川氏)
小川の講演で、営業はたった1、2分でしたが、聴講者からの自発的な問い合わせが多数来ています(清水氏)
当媒体(Web担当者Forum)では、年4回実施するイベントで集客・聴講者からの満足度が高いスポンサー企業の講演セミナーを「スポンサー部門最優秀コンテンツ賞」として表彰している。2023年2月に開催されたセミナー「デジタルマーケターズサミット 2023 Winter」で受賞したのはコンテンツマーケティング・SEO対策ツール「ミエルカSEO」を提供するFaber Company(ファベルカンパニー)。
ランキングで堂々1位を獲得。受賞を記念して同社の取締役CAOで講演を行った小川卓氏とセミナー企画をした清水綾乃氏に、今回の講演や同社のセミナーの取り組みについてお話をうかがった。
講演内容がよければ、おのずと問い合わせにつながる
まず、スポンサー部門最優秀コンテンツ賞を受賞した感想を聞いてみた。
視聴者の満足度と集客の双方が優れてる企業に贈られる賞とのことで、素直に嬉しいです(小川氏)
前回から新設された賞だと聞いていたので、いつか受賞したいと思っていました。思いがけず今回受賞となり嬉しいです。いただいた盾は社内に飾ります!(清水氏)
受賞した講演のテーマはGoogle Analytics 4(GA4)について。講演は、小川卓氏が行った。ユニバーサル アナリティクス(UA)は2023年7月1日に計測停止を予定しているため、移行のポイントが解説された。テーマ選定の理由は、旬なテーマであり、期限が迫っている中、一社でも多く移行を完了してほしいという思いからだ。
講演はGA4の話題に特化し、会社紹介は自己紹介の時に、製品紹介は最後の締めくくりで入れた程度におさめた。小川氏が講演のメインテーマの資料を作成した後、清水氏が会社や製品のパートを追加するというように役割分担をした。役割分担をすることで資料作成側は営業を意識しないコンテンツ作りが可能となる。
講演の内容がよければ、視聴者は自発的に会社について調べてくれます。講演はきっかけでしかないので、特にオンラインの場合は、いい内容を伝えて視聴者の方から問い合わせをしてくれるようにすればいいと思います(小川氏)
実際に、講演後の問い合わせも多く来ているという。
資料にあわせてアドリブで話す。その分野のプロだからできる即興の妙を活かした講演
小川氏の講演は、今回に限らず常に視聴者からの評価が高い。満足度が高い講演内容にするコツはなんだろうか。
私は、必要な情報をコンパクトに伝えること、情報を隠さないことを意識しています。講演で全部話してしまったら、“満足して問い合わせにつながらないのでは”と心配される方も多いと思います。商材や状況によっても判断は変わりますが、GA4に限って言えば流れやノウハウが理解できても、実際に自分のサイトの設定を行うには難易度が高く、相談しようという流れになりやすいので、講演では情報は出し惜しみせずに伝えています(小川氏)
今回の講演は集客でも優れていた。集客施策についても聞いてみた。
協賛セミナーなので、Web担が集客するのとは別で、自社のメルマガ、Twitter、Instagramで告知しました。メルマガでは、タイトルに『小川卓登壇』と入れて、本文ではイベントのなかでおもしろそうなセッションを私がピックアップし、そのうちの一つとして小川の講演を紹介しました。自社の講演だけでなく、イベント全体のおもしろさを知ってもらい参加してほしいと思ったからです。
Twitterでは、イベント全体の案内や、小川の登壇日時などを何回かツイートし、ミエルカ公式アカウントや社員のアカウントでリツイートしました(清水氏)
では、講演のスライドのまとめ方や流れなどについて工夫することはあるだろうか。
集中して聞いてもらうために、スライドに書かれていない情報を口頭で伝えるようにしています。資料をあとで見ればわかるというよりも、参加したからこそ聞ける内容や具体例を入れています。私は、話す内容のメモは作っておらず、スライドにあわせてその場で話すことを決めていて、そこで時間のコントロールもしています。
具体例は、出せるところのギリギリを攻めています。やはり現場で使っているものは伝わりやすいですし、自分たちの実績紹介にもなるからです。あとは、参加者のお土産になるような情報を入れています。たとえば、設計書のサンプルや自分で書き込めるマッピング表などですね(小川氏)
毎月自社セミナーを15本開催! 企画や集客の工夫
同社では、協賛セミナーだけでなく、自社セミナーも数多く開催している。B2Bマーケティング全体におけるセミナーの位置づけなどについて、セミナー企画などを担当している清水氏に聞いた。
協賛セミナーの位置づけは“展示会”に近く、自社を知らない新規のお客様と出会う場所で、他に参加する会社との差別化を意識して、内容を考えています。終了後の参加者へのメールでは、自社を知らないことを前提にサービスの紹介をして、その後はステップメールで、オウンドメディアの記事を紹介したり、自社開催のセミナー情報をお知らせしたりしながら、段階的にコミュニケーションを取っていきます。
“自社開催セミナー”と“協賛セミナー”の役割は、明確に分けています。協賛セミナーは前述のとおり、自社を知らない人向け。自社開催セミナーは、自社について知っていて、関心も高い人。というすみ分けをしていますので、自社開催セミナーの参加者には、お礼メールと次回の案内を送るようにしています(清水氏)
協賛セミナーの参加は四半期に1~2回だが、自社開催セミナーは毎月10~15本以上開催しているという。
現在、弊社にとって自社開催セミナーが新規顧客獲得に効果的なフェーズです。会社の状況や時期によって、どの施策が効果的か見極める必要がありますが、社内のメンバーからも自社開催セミナー数をもっと増やせないか、と打診があるくらい弊社にとって重要な施策です(清水氏)
同社では、SEO、アクセス解析、マーケターと企業のマッチングサービス、など7事業を展開しているので、企画は豊富にあるという。企画は「自分が受講者だったら」と想定して考えると清水氏。加えてセミナーアンケートで参加者から、内容についての要望があれば、実現するようにしている。セミナー企画には、インサイドセールスや営業に受注の決め手となったことをヒアリングして、そこからテーマを決めることもあるという。
セミナー企画の進め方について聞くと、まずターゲットユーザー、抱えている悩みなどを企画書に記載し、LPに掲載するアイキャッチの作成、WordPressでLP作成の順で制作を進めていき、企画立案からLP作成までは約1週間程度だという。企画書を作ったタイミングで、登壇者にも依頼して資料の作成をしてもらう。資料の内容については、登壇者にまかせており、セミナー後にPRの時間を設けるようにしているという。
現在のセミナーのKPIは集客数と商談化数です。自社開催セミナーは、1回限りの単発と毎月定期的に開催しているものがあり、異なるKPIを見ています。中には、顕在層に向けたセミナーで参加者10人で受注が2件というセミナーもありました。集客が多ければ商談化が多いというわけではないので、それぞれで評価しています。登壇者によって受注率が変わることもあるので、なぜ良いのかを分析して他の登壇者にも伝えています(清水氏)
自社でセミナーを重ねながらも、協賛セミナーにも参加するのは、自社では集客できない潜在層に出会えるからだという。なお新規顧客獲得以外の目的では、既存顧客限定のセミナーを開催しており、そこでロイヤルティを高めている。
月15本のセミナーがこなせる秘訣
同社がセミナーに力を入れているのは、社風でもあるようだ。3ヶ月に1回「職人会議」という社内プレゼンのイベントを開催して、有志3名ほどが自分の仕事や成果について発表する。社長も含め、全社員が参加し、プレゼン後は経営陣からのフィードバックがあるため、全力投球でプレゼンするそうだ。
登壇が決まるとメンターがついてプレゼンをブラッシュアップしていきます。社内イベントですが、#職人会議で社員がツイートしているので、チェックしてみてください。こうした活動で他の部署の人が何をやっているか情報が集まりますし、高評価だった人には外部のセミナーにも登壇してもらいます(清水氏)
なお、コロナ禍ではオンラインセミナーが中心になった。オンラインセミナーの場合は、時間を1時間以内におさめ、15時ごろからの開始としている。
リアルのセミナーであれば、夕方、夜開始なら仕事終わりに参加して直帰すると思います。今はリモートワークの人が多いので、オンラインで夜開始だと仕事の延長になりますし、家庭のこともあると思うので、午後のコアタイムに入れています(清水氏)
セミナーの内容については、定例であっても逐次アップデート、改善をしているという。GA4などであれば、Googleのアップデートにあわせて更新するし、その時旬のトピックを加えて更新していっている。
オンライン/オフライン両方のセミナーを強化したい
オンラインセミナーは今後も力を入れて、旬のトピックがあればすぐに対応できるように、そのテーマのセミナーの先駆者になりたいです。昨年の3月にUAの計測停止のアナウンスがあったときには、翌日にはセミナー開催を決めて集客を開始、どこよりも早く開催したと自負しています。ウェビナーは他社も開催数が多いので、埋もれないように、リリースの翌日には実施するようにしていきたいです。
もう一つは、コロナ禍が一段落したので、リアルでのユーザー会を開催したいです。コロナ前はホテルで300人規模の開催をしましたが、2022年に開催したときは人数制限をして50人でした。実際にお客様と話す重要な機会ですし、お客様同士がつながる機会でもあります。会社で一人でマーケターをやっているという方も多いので、情報交換の場にしていきたいですね(清水氏)
小川氏のセミナーの経験値とセミナーに注力する同社の姿勢が今回の受賞の背景にあった。
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オリジナル記事:セミナー満足度ランキング1位のFaber Companyが教える! 成功するセミナーのコツ | 受賞企業が教える「セミナー作りのコツ」
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