この記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。後編となる今回は、トラフィックやリードの獲得にとどまらないSEOの価値を、他部門の従業員や上級幹部陣に伝えるにはどうすればいいかを考えてみよう。 → まず前編を読んでおく
同僚にSEOの価値を伝えるには
前編の記事では、SEOが単に「検索エンジンからのトラフィックを増やす」だけでなく、実際にはサイトやその他のユーザー接点において、はるかに広い範囲で価値をもたらしていることを考察した。
では、SEOに価値があるのか疑問に思っている同僚にその価値を伝えるには、どうすればいいだろうか。
ブランドについて考えてみよう。ブランドチームにとってSEOのデータは非常に有益だ。自社のブランドについて人々がどのようなことを検索しているのかを把握するのに役立つ。FAQのようなコンテンツは、君のブランドを検索しているユーザーの心理を理解するのに非常に役立つ。たとえば、ユーザーはレビューについて知りたがっているのか、それとも特定のブランドが詐欺ではないか知りたがっているのか。こうした情報は、常にSERPを入念にチェックしているSEO担当者のような存在がなければ、ブランドチームでは気づかない類のものかもしれない。
ソーシャルメディアも同様だ。ソーシャルメディアの責任者はアルゴリズムを克服することに重点を置いており、この点でSEOとよく似ていると言えるだろう。そのため、まったく異なる分野なのだが、スキルの面では重なる部分が多い。私たちはSEO担当者として、アルゴリズムに合わせて最適化する方法を理解できるよう支援することで、ソーシャルメディアチームに多くの価値をもたらせる。確かに、GoogleとInstagramではアルゴリズムも大きく異なるだろうが、それでもこの考え方自体は有効だ。スキルセットも似ているし、アルゴリズムが次々に変更される環境についてソーシャルメディアチームがほんの少しでも理解を深められるよう、情報提供を支援するためにできることも似ている。
次に、CRO(コンバージョン率の最適化)だ。私たちは適切なトラフィックを適切なページに送り込むことに大きな重点を置いているため、CROチームには常に影響を及ぼすことになる。コンバージョン率のために最適化を試みるCROチームの仕事はまさに私たちがやっていることだ ―― 具体的には「適切なユーザーをウェブサイトに呼び込み、ウェブサイト内を自由に移動して最終的な目的を達成してもらえる」ように取り組むことだ。
そして、データチーム。君の会社にはすばらしいデータチームがいるかもしれないし、きっといるだろう。しかし、メンバーが専門のマーケターでなければ、表示されるデータに対してさまざまな要因が及ぼす影響を本当の意味で理解できていない可能性がある。しかし、私たちはSEO担当者として、マーケティングのほとんどの部分に関与している。実に多くのチームと関わっており、各チームが分析しているデータに多くの視点をもたらせる。季節がデータに及ぼし得る影響や、競合他社が市場に参入することでデータに及ぼし得る影響といったことについて、検索業界に深く関わっているからこそ得られるほんの少し多くの知見を使って、検討できる。
それから、エンジニアリング(開発)チーム。時に、エンジニアリングチームとSEOチームの間でささいな摩擦が生じているように感じることもあるかもしれない(確かに、私たちSEOチームがいつも何かを要求しているからでもあるのだが)。しかし実際、エンジニアリングチームが達成しようとしていることは、私たちがSEO担当者としてやろうとしていることと同じであることが多い。エンジニアリングチームはページの読み込みをもっと速くしたいと思っている。ユーザー体験を改善したいと思っている。私たちが連携すれば、これらを実現するのに非常に効率的な方法を見つけられる。君はSEO担当者として、エンジニアのいちばんの味方として寄り添うべきだ。そばにいて、エンジニアが目を向けている複雑な問題に対し、アイデアやソリューションを提供するべきだ。
プロジェクト管理もある。SEO担当者はプロジェクト管理に長けていなければならないが、プロジェクト管理チームが関わっている専門的なプロジェクトを支援することもできる。たとえば、ウェブサイトの移行などは通常、悪夢のように大変な作業だ。これはプロジェクトマネージャーが認識していないことかもしれない。しかし、経験豊富なSEO担当者であれば、おそらく以前にも同じようなことを経験しているだろう。そのため、移行を成功させるために実行すべき具体的な手順や生じ得る問題について、プロジェクトマネージャーに説明するのに適任だ。相手が担当しているプロジェクトについて、少しでも詳しい背景情報を提供できる。
トラフィックやリードの獲得にとどまらないSEOの価値を伝えるには
ただし、君が現在の仕事を続けたり、さらには密かに望んでいる昇進を果たしたりするうえで、その決定を下すのは君の同僚ではないだろう。
では、単なるトラフィックやリードの獲得にとどまらないSEOの価値を、役員や上級幹部陣に伝えるには、どうしたらいいだろうか。
まず、ビジネスの目標に目を向ける必要がある。ここで言っているのは、マーケティングの目標でも、今四半期に全社で注力している取り組みの目標でもない。ここで言っているのは、大きなビジネス目標のことだ。
会社は投資家に対し、何について報告しているだろうか。というのは、SEOがいかに会社の目標達成に役立つかを説明するならば、役員が意識していることを理解しなければいけない。そのためにも、「投資家に何を伝えているか」は良いヒントになる。
たとえば、君の会社の大きな年間目標が新市場への進出である場合は、どうすればオーガニック検索活動の効果を新市場への進出に直接リンクさせられるかを考えよう。それらの市場における検索の需要や、SERP、ひいては君のウェブサイトにおけるユーザーの行動といったことに関するデータだ。こうした情報を組み合わせれば、コアKPIを達成するためにどうサポートできるかを上級幹部陣に示すうえで大きな助けになる。
また、SEOによっていかに効率が高まるかについても説明しよう。私たちがあらゆるチームを支援している現状や、さまざまな活動から得ているあらゆる副次的効果についてはすでに説明した。こうしたことを必ず上級経営陣に知ってもらおう。これら多くのチームを結集させることで、会社が効率を高められるようサポートしていることを示そう。このコラボレーションは極めて重要だからだ。
SEOが多くの異なるマーケティングチャネルやウェブサイトのさまざまな側面に関わる場合、私たちは常にそれらのチームをまとめようとする。大きなプロジェクトを中心になって進めることも多く、こうしたコラボレーションによってビジネスをはるかに効率化できる。SEOは決してサイロ化された状態では機能しないし、私たちはそのことを認識しつつ、この業界で成長してきた。だからこそ、常に他のチームをまとめようとしている。
そして最後に、SEOがいかに成長をサポートできるかについて考えよう。ここでは君の会社が新市場に進出するとして、SEOは具体的にどのように役立つだろうか。それこそが、私たちのするべきことだ。会社にとってSEOが将来の備えになることを示す必要がある。
役員に対してSEOの価値を説明するために今後の計画(将来への備え)について検討することもできる。
新しいブランド、たとえば会社のサブブランドを立ち上げようとしている場合、SEOは非常に重要だ。なぜなら、そのブランドにおかしな名前を付けたり、あるいはすでにある他社の製品やサービスと同じ名前を付けたりすれば、その瞬間からSERPで競争になってしまうからだ。こうした知見は、SEO担当者として注意すべきものとして私たちは認識している。しかし、経営陣の側でもすでに考慮しているとは限らない。
その特定の新しいブランド名についてSERPを分析することもできる。すでに見られる心理状態はどのようなものか、そのブランド名をめぐって競合するのはどのようなウェブサイトかを調査できる。このような知見こそ、将来への備えとなり、ビジネスにとって真の助けとなるものだ。
あるいは、たとえばグローバル展開を検討しているものの、ウェブサイトの構成が将来のグローバル成長を考慮したものになっていない場合、君なら近い将来ウェブサイトの移行が必要になることがわかっているし、さらにその先も見据えているだろう。つまり、会社は現時点で「.co.uk」のドメイン名を検討しているのだが、将来的には欧州の他の地域への拡大を目指しているかもしれない。いずれ多くの問題が生じるであろうことは、君ならわかるはずだ。そのような場合、まずは「.com」のドメイン名から始めれば、この1つのドメイン名でグローバル展開できる。これも先を見越した考え方であり、SEO業界にいなければわからないことかもしれない。そのため、上級経営陣によく説明しておこう。
私たちは常にグーグルなどの検索エンジンや、そこでどのような機能がリリースされるかに考えを巡らせている。だからこそ、そのようなリリースに対してビジネス側の備えを進められる。
たとえば、オーガニックな製品リスティングが挙げられる。検索エンジンの製品リスティング機能で上位に表示されるようにするには、いくつかの条件がある。実現に向けて、それを推進するのがSEO担当者だろう。しかし、それを推進するSEO担当者がいなければ、会社はSERPのそうした変化に対応できないだろう。
私たちは、新しい市場を見極めるだけでなく、新しい見込みのある製品を見極めるうえで非常に重要な存在だ。なぜなら、私たちは常にこの業界内外で人々が何を検索しているのかに注意を払っているからだ。そのため、人々が新しい種類の製品や新しいやり方を探しているのかどうかを常に把握している。
私たちは日々データを詳しく分析し、人々が何を検索しているかを調べている。そこから、市場でのギャップが見えてくる。人々が求めているにもかかわらず、どの競合他社も提供していない製品やサービスはあるだろうか。もしかして、私たちはそれを提供するのに有利な立場にあるのだろうか。
トラフィックやリードの獲得にとどまらないSEOの価値を伝えようとしている場合、常に鍵となるのは、SEOが他のマーケティングチャネルだけでなく会社全体に与える影響とその範囲の大きさについて説明することだ。
そうすれば、君の望む昇給を求めることもできるだろう。
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オリジナル記事:トラフィックやリードの獲得にとどまらないSEOの価値を伝えるには【後編】 | Moz - SEOとインバウンドマーケティングの実践情報
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