アドテクノロジー業界では、毎日のように新しい技術が登場し、新規サービスがリリースされています。その一方、サービスの開発コストが増加するのに対し、コモディティ化の速度が上がることで、収益性が悪化しているという企業の話を聞くことも増えてきました。
そういった背景から最近注目されているのが、DSPまたはSSPの事業者による「パブリッシャー直接取引」です。
パブリッシャー直接取引とは、DSPまたはSSPが互いを取引のプロセスから外して、パブリッシャーと直接取引を行うことで、取引手数料の透明性を高め、手数料自体を減らすこともできる仕組みです。
広告主はより安く良質な枠を買うことができ、パブリッシャーは入札された金額に近い広告費を受け取れるというメリットがあります。
すでに海外ではパブリッシャー直接取引の動きが加速しており、DSP・SSPの各社は、優先取引契約を駆使して、パブリッシャーと広告主の囲い込みを進めています。
本記事では、この新たな風潮がアドテク業界、広告主、パブリッシャーに与える影響について探っていきます。
パブリッシャー直接取引にはどのようなサービスがある?
DSP・SSP企業が提供しているパブリッシャー直接取引のサービスを紹介します。
DSP側のサービスとして、2022年2月にリリースされたのが、The Trade Desk社の「OpenPath」です。
「OpenPath」は、広告主が優良なパブリッシャーの広告在庫を直接購入することができるサービスです。
このサービスを活用することで、広告枠の買い付けを簡易化し、より良い在庫を安い金額で購入できるようになります。また、The Trade Deskのみが取引に介在している状態であれば、取引手数料を開示することも可能なので、取引の透明性を担保することができるようになります。
これより前の2017年、すでにCriteoが「ダイレクトビッダー」で、パブリッシャーの広告在庫を直接購入する仕組みを活用し、より広告効果の高い広告枠の買い付けを行う工夫を行っていました。その流れがダイレクトレスポンス広告以外の案件にも広がってきた形です。
SSP側もDSPに対抗したサービスとして、パブリッシャー直接取引のサービスをリリースしつつあります。
DSPからすこし遅れて2023年4月、SSP業界大手のMagniteが、パブリッシャー直接取引のサービス「クリアライン(ClearLine)」をリリースしました。
元からパブリッシャーとの取引があるSSPは、直接取引サービスの拡大をスピーディに行っていくことができる点で優位性があります。一方で、広告主の獲得が困難であることから、優先取引契約などと掛け合わせて、代理店などの販売チャネルと連携を深めていく動きも目立っています。
パブリッシャー直接取引がアドテク業界に起こす変化
SSPやDSPとパブリッシャーの直接取引が広がっていくと、どのような変化が起きるのでしょうか。
広告主は、パブリッシャーと直接的な関係を築くことができ、広告の品質や広告効果の確実な把握が可能になります。これにより広告主は、DSP/SSPを活用して、より効果的なキャンペーンを実施することができるようになります。
パブリッシャーも、中間業者に依存することなく、自社の広告収益を増やすことができます。
アドテク業界全体を見ると、パブリッシャー直接取引が増えることにより、さまざまな影響が生じます。
まず、広告主はパブリッシャーとの連携を深め、手数料のコントロールを行うようになっていくことも考えられます。
また、中間業者が減少し、アドテク業界全体の総収益が減少する可能性があります。中間業者が完全に排除されるわけではありませんが、広告市場において、手数料以外の付加価値をつけることが求められる機会が増えると思われます。
アドテク業界は単純化されながら、変化は加速していく
海外での流れを見る限り、パブリッシャー直接取引は、日本国内でも増えていくことが予想されます。
複雑化したアドテク業界は、大きな流れとしては単純化される方向に進みながらも、各社は新しいサービスや付加価値の提供を模索することで、業界としての変化はこれからも加速していくと思われます。
パブリッシャー直接取引に関心のある広告主やパブリッシャーの担当者の方は、ぜひ一度、付き合いのあるSSP、DSPに相談してみてください。
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オリジナル記事:パブリッシャー直接取引は日本でも広がるか? アドテク業界における新たな風潮とその影響 | データ活用革命のヒント
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