今度はILLIT! なぜたった1ヵ月で、またK-POPアイドルの沼にハマってしまったのか? HYBEエコシステムをマーケティング視点で考えてみた | [マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

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yu-ta(ゆーた)26歳、会社員 PC.スマホ周辺機器やスマート家電など ガジェットを使って スマートな生活を送っています。 このサイトでは管理人おすすめの 最新の便利ガジェット情報や お得に買えるセール情報を中心に 発信しております。
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STORES 株式会社 テクノロジー部門 開発企画室 加藤千穂氏

ILLIT(アイリット)というガールズグループをご存じでしょうか?

ILLITは、ガールズサバイバル番組「R U Next?(アーユーネクスト?/アユネク)」で選ばれた韓国人3名、日本人2名の5名で結成され、2024年3月25日にデビューしたグループです。

私がILLITを初めて見たのは、X(旧Twitter)のポストです。K-POPが好きな知人がオススメしていました。

そのときは「また新しいアーティストが出てきたんだな」としか思わず、曲を聞くことも、MVを見ることもありませんでした。

それなのに、たった1ヵ月弱の間に、どうしてこんなにハマッてしまったのか? 改めて考えると、HYBE(ハイブ)の強力なエコシステムが大きく影響しているのではないか、と思い至ったのです。

HYBEとは、韓国の大手エンターテインメント企業で、BTSやLE SSERAFIM(ルセラフィム)、NewJeans(ニュージーンズ)などが所属しています。先ほどの「R U Next?」を主催しているのもHYBEです。

今回は、私がILLITにハマるまでの軌跡(1ヵ月)を振り返りながら、そのエコシステムの一端を自分なりのマーケティング視点で解き明かしてみたいと思います。

先輩グループを活用したSNS戦略で認知をとる

XでILLITを知った数日後、デビュー曲「Magnetic」をILLITと別のグループが一緒に踊っている動画が、Instagramのオススメで流れてきました。

これは「K-POPあるある」のプロモーションで、同じ事務所の別のグループと一緒に踊る動画をSNSにアップすることで、認知を広げる戦略です。

私はもともとBTSが好きで、日常的に各種SNSで彼らを追いかけています。すると、

  • LE SSERAFIMの「Perfect Night」を踊るジョングク(BTSメンバー)
  • NewJeansの「Hype Boy」を踊るヴィ(BTSメンバー)
  • NewJeansの「ETA」を踊るジミン(BTSメンバー)

の動画がタイムラインに流れてきます。つまり、BTSを追いかけていると、フォローしていないLE SSERAFIMやNewJeansまで頻繁に見ることになるのです。

ILLITも同様のプロモーションを行っています。デビュー翌日の3月26日には、ENHYPEN(エンハイプン)のヒスン(同じ事務所の先輩)と一緒にダンスをしているショート動画を、公式Instagramに上げています。

その後も毎日さまざまな人と一緒に「Magnetic」を踊る動画をアップしているので、ILLITを知らない人、フォローしていない人でも、タイムラインでILLITを見かけることになります。

公式チャンネルとアーティストチャンネルを使い分けて、興味・関心を育む

Instagramの短尺動画でILLITに興味を持った私は「フルで音楽を聞きたい!」と思い、YouTubeで検索しました。

まずはHYBEのYouTube公式チャンネルで「Magnetic」のMVを見つけ、次にダンスをしている姿が見たいと思って、ILLITの公式YouTube公式チャンネルで「Magnetic」のDance Practiceバージョンを見つけました。

MVは、事務所の公式チャンネルにアップ

HYBEでは、事務所のYouTube公式チャンネル(登録者数7,450万人)と、アーティストごとの公式チャンネルで、配信するコンテンツが分けられていて、MVはHYBEの公式チャンネルにアップされます。なので、推しのMVを見に行くたびに、他のグループのMVも目にすることになり、必然的にHYBEのアーティストを芋づる式に知っていく仕組みになっています。

深掘り動画は、アーティストの公式チャンネルにアップ

一方で、アーティストのYouTube公式チャンネルには、Dance PracticeやMV Reactionなど、アーティストを深掘りするための動画がアップされています。

ちなみに、Dance Practiceは、正面に定点カメラを置いてダンスをわかりやすく見せるための動画コンテンツ。MV Reactionは、MVを観たときのリアクションやコメントを見せる動画コンテンツのことです。

また、ILLITの公式チャンネルには、「I'LL LIKE IT!」や「ILLIT READY」というバラエティ番組のコンテンツもあります。お題に合わせてゲームをしたり、パジャマパーティをしたり、メンバー同士でわちゃわちゃしている様子を楽しめるものです。

「I'LL LIKE IT!」は2023年10月17日、「ILLIT READY」は2024年1月23日にEP.1が公開されていて、デビュー前から「R U Next?」で得たファンを楽しませてくれるコンテンツが用意されていることに驚きました。

グローバルファンダムライフ・プラットフォーム「Weverse」でハマらせる

HYBEでは、YouTubeやSNS以外にもうひとつ、アーティストのコンテンツに接することができる場があります。それが、グローバルファンダムライフ・プラットフォームWeverse(ウィバース)です。

グローバルファンダムライフ・プラットフォーム「Weverse

HYBEとNAVERが共同出資するWEVERSE CONPANYが運営するWeverseには、122のアーティストコミュニティがあり、1,000万の月間アクティブユーザーがいます。アーティストとファンが投稿を通じて交流できるコミュニティのほか、有料コンテンツやメンバーシップ限定コンテンツを提供しています。

各アーティストコミュニティには5つのカテゴリがあり、コンテンツは以下のとおりです。

  • Feed:ファンからの投稿
  • Artist:アーティストからの投稿
  • Media:アーティストの動画や写真
  • LIVE:Weverseでライブ配信した動画
  • Shop:CDやグッズなどが購入でき、ファンクラブに入会できる

こうしたメニューはすべて、コミュニティに入らないとアクセスすることはできません。コミュニティに入るのは無料です。

私はすでに、BTSの推し活の一環でWeverseアプリをダウンロード済みでしたし、使い勝手も分かっている上に、どのようなコンテンツが見られそうか想像できたので、迷わずILLITのコミュニティに入りました。

ILLITの「Artist」を見ると、本人たちの投稿はデビュー前から始まっており、「デビューまで、あと◯日!」という投稿や、デビュー後に初めて音楽番組に出演したあとの投稿など、リアルタイムにアーティスト本人たちが発信しているログを見ることができ、私の中に「がんばれ!」という気持ちが溢れました。

溢れてしまった気持ちを抑えきれず、その勢いで、「Media」から「R U Next?」を初回から見ることにしました。

22名の練習生が切磋琢磨する姿、ラウンドごとのパフォーマンスを観ながら、ILLITになった5名がどんなパフォーマンスをしていたのかを追っていきました。パフォーマンスごとにFanCam(推しメンバーだけを映した動画)が用意されているので、追いやすくなっているのもさすがです。FanCamは、K-POPではあって当たり前のものになっているのかもしれません。

「R U Next?」はYouTubeにもアップされているのですが、Weverseの方がきちんとキュレーションされていて、ILLITのファンに対してユーザーフレンドリーだと感じます。沼にハマらせる方法をよくわかっていらっしゃるなと思いました。

ヒット曲は複数人で作られる。作詞家・作曲家の協業

K-POPの魅力をあえてひと言でいうなら、やはり歌とダンスのすばらしさです。

K-POPの歌とダンスの制作では、「ソング・キャンプ」で知られるように、複数名での協業体制が組まれています。様々なプロデューサーが集まって一緒に作曲をすることで、多様でキャッチーな曲作りが実現できているのではないでしょうか。ILLITの「Magnetic」の作詞/作曲にも、多くの人間が携わっています。

Slow Rabbit/”hitman”bang/Martin/Salem Ilese/Danke/Vincenzo/Lee Yi-jin/Sophie Leigh McBurnie/Lauren Amber Aquilina/Marcus Andersson/Kim Kiwi/Oh Hyun-seon (Lalala Studio)/James

ちなみに、Slow RabbitはBTSの多くの曲のプロデューサー。”hitman”bangはHYBEの創始者であり、BTSの生みの親と呼ばれているパン・シヒョク。2人が作詞/作曲(プロデュース)に名を連ねている時点で、私好みの可能性はとても高く、実際に私好みの音楽でした。

また、曲作りだけではなく、コレオグラフィー(振付)も複数名で行っているようで、「Magnetic」も複数名の振付師の協業で作られているようです。

曲作りから振付まで協業することで、よりよいアウトプットを出す仕組みづくりができていることが、K-POPの魅力をさらに大きくしているのだと思います。

HYBEは私の期待を裏切らない――会社への信頼は、日々の信頼の積み重ね

今回は、ILLITにフォーカスして書いてきましたが、本当はLE SSERAFIMやNewJeansもお気に入りのアーティストです。音楽もパフォーマンスも好きで、BTSと併せてよく見たり聞いたりしています。

HYBEのアーティストはハードな練習を積み重ね、完璧なパフォーマンスを見せられるように努力していること、またプロデューサー、振付師にもこだわっていることを、BTSの推し活の中で知ったからこそ、新たに登場したアーティストにも期待を持って見てしまいます。アーティスト1人ひとりが個別のブランドで、それぞれが全力でファンを楽しませようと努力しているからこそ、HYBEに対する期待感もより高まっていると感じます。

これは、私の普段の業務である、技術広報でも同じことが言えます。

私が働いているSTORES では、メンバーが技術カンファレンスで登壇できるようにサポートする仕組みを整えています。様々な技術カンファレンスで登壇するメンバーがいることで、技術力の高いエンジニアがいることがアピールでき、STORES 全体の技術ブランディングにつながるからです。

サポートといってもできることは限られています。セッションの応募内容を考え、資料を準備し、プレゼンテーションするのは各メンバーなので、実際には個人の努力が一番重要な部分です。

技術広報に限らず、ブランディング全般にも、同じことが言えると思います。

特定の会社が信頼されるのは、個別の商品やサービスへの信頼が積み重なった結果です。一度でも信頼を裏切れば、会社のブランドも損なわれてしまいます。だからこそ、あらゆるシーンにおいて、決して手を抜くことはできません。

HYBEのエコシステムは、確かに周到に考えられたすごい仕組みですが、仕組みは仕組み。あくまで好きになってもらうための手段でしかありません。私を沼にハマらせたのは、やはり個々のアーティストのパフォーマンスのすばらしさなのです。

そう考えると、HYBEが各アーティストのパフォーマンスや、Weverseでのユーザー体験のクオリティにこだわることも、とても納得できます。プライベートではHYBEのエコシステムに身を委ねつつ、私も会社のいちメンバーとして、技術広報として、技術ブランディングに関わる身としても努力を怠ってはいけないなと身を引き締める思いです。

以前のBTSに続き、今回も個人的な推し活への想いにおつきあいいただき、ありがとうございました。推し活は、癒やされつつも、仕事をがんばろうというモチベーションも得られるので生きるために欠かせません。ご感想、ご意見があればぜひ、お気軽に私のXアカウント(@sweet_chiho)へお気軽にリプライしてください。

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