企業のSNS、法改正でどう変わる? ステマ規制を受けて企業担当者が押さえておくべきこと | 百戦錬磨のSNSマネージャーが手ほどき! 企業SNS活用の悩みに答えます

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yu-ta(ゆーた)26歳、会社員 PC.スマホ周辺機器やスマート家電など ガジェットを使って スマートな生活を送っています。 このサイトでは管理人おすすめの 最新の便利ガジェット情報や お得に買えるセール情報を中心に 発信しております。
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オーガニック運用・広告配信・危機管理など、企業のSNS活用のポイント、最新情報を、SNSマネージャー養成講座の講師陣「チーフSNSマネージャー」のメンバーが、それぞれの得意分野を中心に解説します。

今回は、上級ウェブ解析士、チーフSNSマネージャー、さらにデジタル庁公認デジタル推進委員として活躍する毛利美佳さんが回答します。

質問

10月からステルスマーケティングの規制が厳しくなったと聞きました。SNSマーケティングの一環としてインフルエンサー施策を行っているのですが、知らぬ間に違反してしまわないかとヒヤヒヤしています。わかりやすく教えてください!

毛利

おっしゃるように、10月施行の景品表示法改正で、ステルスマーケティングは不当表示と指定され、規制されることになりました。違反行為が認められた場合、事業者に対して措置命令が行われます。最悪の場合、措置命令は免れたとしてもユーザーからの指摘で炎上に至り、企業としての社会的信頼性が失墜し、大きな損害につながる可能性もあります。

そこで本記事では、企業のSNS担当者が知らぬうちに不利益を被らないように、わかりやすくステマ規制とその対策についてご紹介します。

参考:
令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。 | 消費者庁
https:/www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/

本記事は消費者庁発行の「景品表示法とステルスマーケティング ~事例でわかるステルスマーケティング告示ガイドブック(PDFファイル)」をもとに執筆しています。

消費者庁「景品表示法とステルスマーケティング」表紙

ステルスマーケティングとは

SNSやレビューサイトなどの投稿は、一見すると広告ではない、消費者やインフルエンサーによる自主的な投稿に見えます。しかしそのような投稿のなかには、実は商品やサービスの提供者がその旨を隠して投稿するケースや、事業者から依頼を受けて第三者が投稿しているものもあります。このように実態は広告であるにもかかわらず、広告であることを隠して情報を拡散することを「ステルスマーケティング(ステマ)」といいます。

消費者が商品を選ぶ過程で、事業者の広告であるか、それとも第三者による感想なのかが明瞭になっておくことが重要です。事業者による広告であれば、消費者は「ある程度の誇張や誇大が含まれているかもしれない」という点を考慮して商品を選びます。一方で広告であることがわからない場合、第三者による感想と誤認して、その表示をうのみにしてしまうかもしれません。

10月からステマ規制が開始

景品表示法では、「消費者が良い商品・サービスを求める際に誤認および誤認する恐れのある表示」を不当表示として規制しています。表示とは、事業者が商品やサービスの品質、規格、価格などの取引条件について行う表示のことで、広告をはじめとした表示全般を指します。その表示場所はオンラインに限りません。たとえばチラシや雑誌、テレビCMや店頭の実演広告などもこれに含まれます。

不当表示には、品質や規格などの内容について実際のものより著しく優良であると誤認させる「優良誤認表示」、取引条件について著しく有利にであると誤解させる「有利誤認表示」「その他、誤認される恐れのある表示」の3つが該当します。ステマが社会問題となっている背景を踏まえ、2023年10月1日施行の内閣府告示第19号により、ステマは「その他、誤認される恐れのある表示」として指定され、規制されることになりました。

消費者庁の定義では、以下の2つの要件を満たす表示(広告)がステマとされています。

【ステマの要件(両方に当てはまるとステマとみなされる)】
  1. 事業者が自己の供給する商品または薬務の取引について行う表示であること(=事業者の表示)
  2. 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であると認められること

わかりやすく表現するなら「実は広告であるにもかかわらず、一般消費者が広告であることがわからないもの」は不当表示=ステマとなります。ここには、事業者の広告だけでなく、インフルエンサーなどの第三者に依頼して投稿されたものも含まれます。

規制対象者は商品・サービスを供給する事業者

ステマとみなされた場合、措置命令の対象は商品・サービスを提供する事業者(広告主)となるため、企業担当者はどのような表示が不当表示に該当するのかを正しく理解する必要があります。ステマというとSNSやクチコミレビューサイトをイメージしがちですが、今回の指定告示はインターネット上のコンテンツだけでなくテレビや新聞などのマスメディアなどを含めたすべての表示が対象となるので注意してください。

なお、改正法の施行前(2023年9月30日以前)の投稿でも、10月1日以降もインターネット上で閲覧可能であれば、規制の対象となります。インフルエンサーなどによるSNSの投稿、従業員の書き込み、事業者自身のWebサイトの表示について過去のものでも、閲覧可能である限り対象となります。

判断の軸は「事業者の表示」と「判別の困難性」

ステマ規制に関して、消費者庁は「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」をWebサイトで公開しています。本記事では、当該運用基準をもとに具体的な事例を交えてご紹介します。

参考:「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の指定及び「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」の公表について | 消費者庁

ステマに該当するかどうかを判断するにあたって「事業者の表示」であるかどうか、「判別の困難性」はどうかの2つの要件で考えるとわかりやすいです。

ステマ要件(1)「事業者の表示」とは

まずはステマ規制の要件の1つ目「事業者の表示」について見ていきましょう。

(1)事業者が自ら行う表示

【例】
  • 事業者が自らのSNSアカウントに、自社の商品について表示(投稿)する場合
  • 事業者が自らのWebサイトに、自社の商品に関する内容を表示する場合

事業者が自らのもつ媒体で自社の商品について投稿する場合は、当然ながら事業者の表示となります。

(2)事業者が第三者になりすまして行う表示

【例】
  • 商品の販売担当者(役員、管理職など)が販売を促進するためや、自社商品の認知度を上げるために商品の画像や文章をSNSに投稿する場合
  • 事業者の子会社の従業員が、販売を促進する目的で自社商品の品質や性能の有能さについて投稿する場合

ここで注意しないといけないのは、事業者自身でなくても、事業者の子会社の従業員が行う事業者の商品または役務に関する表示も含まれていることです。また、事業者の取引先(広告会社や制作会社など)の従業員であっても、当該商品の宣伝に関わっている場合は事業者の表示であると判断される可能性があるので注意しましょう。

(3)事業者が明示的に依頼・指示をして第三者に表示させた場合

【例】
  • 事業者がインフルエンサーに商品の特徴などを伝えたうえで、インフルエンサーがそれに沿った内容をSNSやクチコミサイトに投稿する場合
  • 事業者がインフルエンサーに商品を提供し、良い商品である旨を投稿してほしいと依頼し、インフルエンサーがSNSに投稿した場合

インフルエンサーなどの第三者の表示であっても、事業者がその投稿内容の決定に関与した場合は「事業者の表示」となります。ここには、ECサイト出店者が購入者に依頼して行わせる「サクラ」としてのクチコミや、事業者がアフィリエイターに委託して行わせる自社商品に関する表示(いわゆるアフィリエイト広告)も含まれます。

(4)事業者が明示的に依頼・指示していない場合であっても、第三者に表示させた場合となるもの

【例】
  • 事業者がインフルエンサーなどの第三者に対して、無償で商品提供をした上でSNS投稿を依頼した結果、第三者が事業者の方針に沿った投稿をした場合
  • 事業者がインフルエンサーなどの第三者に対して、経済上の利益があると言外から感じさせたり、言動から推認させたりして、第三者がその事業者の商品について投稿を行った場合。

たとえば、事業者が自社の新商品を無償提供したことで、インフルエンサーが事業者の意図をくんで投稿するケースなど当てはまります。事業者がインフルエンサーなどに対して明示的に依頼していない場合、事業者の表示となるかどうかは、以下の実態を踏まえて総合的に判断されます。

【判断のポイント】
  • 事業者と第三者のやりとり(メール、書面、口頭でどのようなやりとりがあったか)
  • 対価の内容や目的(金銭、物品を問わず、なんらかの対価はあったか。提供の理由は何か)
  • 事業者と第三者の関係性(過去に対価を提供していたか、今後対価を提供する可能性があるか)

また、事業者がインフルエンサーに対して今後の取引をほのめかした結果、仕事が欲しいと考えたインフルエンサーが投稿するケースもあります。これはインフルエンサーが自主的に行った表示とは言えず、事業者の表示に該当します。事業者が明示的に依頼していない場合でも、実態を踏まえて総合的に判断されるのです。

「事業者の表示」に当てはまらないケース

事業者が第三者の表示に関与していたとしても、第三者の自主的な意思で投稿したものと認められる場合は、事業者の表示に当てはまりません。

【例】
  • 第三者が、自主的な意思に基づきSNSに投稿する場合
  • 事業者がインフルエンサーなどの第三者に無償で商品または役務を提供してSNSなどへの投稿を依頼するものの、インフルエンサーなどの第三者が自主的な意思に基づき投稿する場合
  • 第三者が、SNS上のキャンペーンや懸賞に応募するために自主的な意思に基づき投稿を行う場合
  • 事業者が試供品などの配布を行った結果、受け取った第三者が自主的な意思に基づき投稿を行う場合
    事業者の関与の有無に関係なく、投稿者が自らの意思で投稿を行う場合は、事業者の表示に当てはまりません。

ステマ要件(2)「判別の困難性」とは

ステマ規制の要件2つ目は、「判別の困難性」です。「判別の困難性」とは、一般消費者から見て事業者の表示であることを判別するのが困難であると認められる場合を指します。一般消費者にとって判別が困難であるかどうかは、表示上の特定の文章、図表、写真などから受ける印象・認識ではなく、表示内容全体から受ける印象・認識が基準となります。投稿全体を見て、第三者による自主的な表示であると一般消費者に誤認されるような表示は判別の困難性が高いとみなされます。

(1)一般消費者が事業者の表示であることが不明瞭でわからない(判別の困難性が高い)もの

【例】
  • 事業者の表示であることがまったく記載されていない場合
  • アフィリエイト広告において事業者の表示であることを記載していない場合
  • 事業者の表示である旨について、部分的な表示しかしていない場合
  • 冒頭に「広告」と記載し、文中に「第三者の感想」と記載するなど、事業者の表示である旨がわかりにくい表示である場合
  • 動画において、一般消費者が認識できないほど短い時間で、事業者の表示である旨を表示する場合
  • 一般消費者が事業者の表示であることを認識しにくい文言・場所・大きさ・色で表示する場合
  • 事業者の表示であることを大量のハッシュタグのなかに表示する場合

要するに「事業者の表示」である旨がはっきりとわかるように書いていない場合は、誤認を招く表示として不当表示になります。たとえ投稿のなかに「広告」「#PR」などを記載していたとしても、一般消費者が認識しにくい形で表現されているのであれば、不当表示に該当します。

(2)一般消費者が事業者の表示であることが明瞭でわかるもの

【例】
  • 「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といったSNSなどで広く一般に利用されている文言による表示を行う場合
  • 「A社から提供を受けて投稿している」などのように文章による表示を行う場合
  • 商品・サービスの紹介自体が目的である出版物における表示を行う場合
  • 事業者自身のWebサイトやSNSアカウントを通して表示を行う場合

広告である旨が明瞭で、一般消費者から見てわかりやすい表示になっている場合は、告示の規制対象外です。

企業SNS担当者が取るべき対応策

上記を踏まえて、ステマを防止し、安全にSNSマーケティングを行うために必要なことをまとめました。

【事業者が行う投稿の場合】

  • 投稿文のなかで、商品やサービスを供給する事業者の立場であることをあきらかにする
  • プロフィールに事業者の社名などを表示する

【第三者に依頼する投稿の場合】

  • 「#広告」「#宣伝」「#プロモーション」「#PR」いずれかのハッシュタグをわかりやすく明記する
  • 投稿文や画像に文言を入れる。「#〇〇〇〇(スポンサー名)」 「#〇〇〇〇(スポンサー名)提供」 など
  • 「〇〇〇〇(スポンサー名)から提供を受けて投稿している」旨、わかりやすく表示する

たとえ「#広告」などのハッシュタグを入れていても、他のハッシュタグのなかに埋もれさせるなどして誤認させる恐れがあるものは、ステマ規制の対象となりうるので要注意です。

投稿が事業者の表示(つまり、広告であること)がわかるようになっているか、事業者との関係性が明確になっているかの2点を押さえておくと良いでしょう。

SNS別のステマ防止対応策

Xの場合

・インフルエンサーやアンバサダーなどの第三者に商品・サービスを提供した場合、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」などのハッシュタグを記載してもらう。
・インフルエンサーの投稿を広告に使用する場合は、「第三者ツイート配信」を利用する。

Instagramの場合

・インフルエンサーに投稿してもらう際は「タイアップ投稿ラベルを追加」してもらう。
・インフルエンサーの投稿を用いて事業者が広告を配信する場合は、「ブランドコンテンツ広告」を利用する。

TikTokの場合

・インフルエンサーに投稿してもらう際は、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」などのハッシュタグを記載してもらう。
・「〇〇社からの提供を受けて投稿している」などと説明してもらう。
・インフルエンサーの投稿を用いて事業者が広告を配信する場合は、広告フォーマット「Spark Ads」を利用する。

YouTubeの場合

・インフルエンサーに投稿してもらう際は、有料プロモーションチェックボックスをオンにし「プロモーションを含みます」表示をしてもらう。
・動画のなかで「○○○から商品提供をいただきました」と伝えてもらう。

まとめ

企業のSNS担当者が知っておくべきステマ規制とその対策について解説いたしました。
改めて整理すると、押さえるべきポイントは以下の2つだけです。

  • ステマ規制の要件「事業者の表示」「判別の困難性」の2つに当てはまるかどうか
  • 事業者との関係性を明示しているか

企業がSNSマーケティングを行うにあたって、インフルエンサーや消費者によるクチコミ投稿(UGC)が重要視されています。企業からの一方的な宣伝ではなく、第三者によるクチコミは消費者の購買意欲に大きな影響をもちます。影響力があるがゆえ、クチコミを装った投稿を作りたくなる企業側の心理もわからなくはありません。

しかし、消費者が良い商品やサービスを選べる環境を守るためにも、私たちは一事業者として適切な表示を行う必要があります。意図せずステマに該当してしまわないために、そして、企業ブランドの毀損を招かないためにも、適切な表示を行うようにしましょう。

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以上、毛利でした!

2020年より私たちは、「SNSマネージャー養成講座」という資格試験をスタートしました。SNSマネージャーの上位資格である上級講座では、実際に運用しているアカウントをサンプルにして、徹底的に運用目的とKPIなどの必要項目を掘り下げて企画書を作成するワークを実施しています。

この記事を読んで「理屈はわかったけど、実際自社のアカウントに当てはめるとピンと来ない。さてどうしたものか……」とお悩みのあなた。ぜひチャレンジを。

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タイトルデザイン、タイトルイラスト:995(Twitterアカウント
三度の飯より猫が好きなイラストレーター。ゆるくてかわいいイラストが得意です。

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