元テレ東P 佐久間宣行氏が教える|仕事で消耗せずに自身のキャリアを築く「ずるい仕事術」とは⁉ | 【レポート】アナリティクス サミット2018

【レポート】アナリティクス サミット2018
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yu-ta(ゆーた)26歳、会社員 PC.スマホ周辺機器やスマート家電など ガジェットを使って スマートな生活を送っています。 このサイトでは管理人おすすめの 最新の便利ガジェット情報や お得に買えるセール情報を中心に 発信しております。
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テレビ界屈指の売れっ子プロデューサー、佐久間宣行氏のビジネス書『佐久間宣行のずるい仕事術』は多くの読者から共感され、売れ行きも好調だ。「ずるい」という言葉が何とも刺激的だが、その中身は「仕事で消耗しない」ためのヒントが数多く詰まっている。「Web担当者Forumミーティング 2022 秋」に登壇した佐久間氏は、その出版の舞台裏、著書に込めた想いなどを語ってくれた。聞き手は佐久間氏の後輩でもあるテレビ東京の明坂真太郎氏だ。

テレビプロデューサー 佐久間宣行氏(左)と株式会社テレビ東京 総合マーケティング局総合マーケティング部 明坂真太郎氏(右)※登壇当時の役職

どうやって「ずるい仕事術」が生み出された?

1975年生まれの佐久間氏が、テレビ東京に入社したのは1999年のこと。その後はプロデューサーとなり「ゴッドタン」「あちこちオードリー」「ピラメキーノ」など数々の人気作を送り出してきた。

テレビ東京の社員時代から、他局のラジオ番組である「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」(ニッポン放送)でパーソナリティを務めるなど活躍の場は広かったが、2021年3月に同社を離れ、フリーの立場で活動している。

なお、テレビ東京との仕事も継続中で、週1~2回は会議などのために社へ通っているという。その佐久間氏が2022年4月、初のビジネス書となる『佐久間宣行のずるい仕事術』(ダイヤモンド社)を上梓した。

なぜ、『佐久間宣行のずるい仕事術』を書いたのか

もともと佐久間氏の元には、InstagramのDMで仕事の悩み相談がよく届いていたという。佐久間氏も当初はそれに個別解答していたが、対応しきれないほどの数に増加していった。

面白そうな仕事をやるところまで辿り着けない──その前の人間関係であったり、組織論であったり、人に使われている期間が長すぎるうちに消耗した、諦めてしまった、といった声がとても多くありました(佐久間氏)

こうした悩みに応える本を出そうというのが出版のきっかけだった。

会社と無駄に戦ったり消耗したりしないで、苦手な慣習もやらず、自分が目的とする立場へどうすれば辿り着けるのか。テレビ業界に向いていないであろう自分がその前提でどうすればいいのかをまとめたのが、この本です(佐久間氏)

なぜ、タイトルに「ずるい」を入れたのか

本のタイトルで印象的な「ずるい」という表現には、とある要因があった。

人から『佐久間ってずるくない?』と言われることが結構多かったんです。消耗しない、戦わないのに、面白そうな仕事をしている。会社を辞めたのにその会社の仕事をしている。そのポジションを例えるのが『ずるい』という言葉でした。『お前だけ、ずるい』と。

なので、正式タイトルは『他人からずるいといわれるような仕事術』のほうが正解かもしれません。(佐久間氏)

可愛い社員を演じるのはやめて、番組クリエイティブに時間を注ぐ

人気番組のプロデューサーで、しかも古巣との関係も円満という、他人が羨む立場にある佐久間氏だが、テレビ東京入社時には苦労が多かったという。

20年ほど前の入社直後は、絶望的に『この業界には向いていない』と思いました。これは本の前書きでも触れましたが、当時はハラスメントが横行していて、働き方改革もなかった。テレビ業界どころか『そもそもサラリーマンに向いていない』と思いました。当時のサラリーマンは、自分を殺して上司と上手く付き合わないといけなかったですから(佐久間氏)

佐久間氏が入社した当時、テレビ業界は風土的に古かった。根性論的なマッチョ志向も蔓延していた。「すぐに辞めよう」と一時は思ったが、「やりたい仕事を一度もやれないまま辞めるのは悔しい」と考えを一転。上司のウケを狙わず、いわば反則的な方法でもいいので、「やりたい仕事」へ最短で辿り着こうと決意した。入社1年目の夏のことだったという。

聞き手の明坂氏もこの話は意外だったようだ。最初から処世術に長け、人たらしといわれるような佐久間氏の姿を想像していたという。

佐久間:明坂君は僕と一緒に仕事していて、僕が「要領がいい」とか「人づきあいがいい」と思わないでしょ?

明坂:そうですね……確かに佐久間さんの最初の印象はクールというかドライというか、とっつきづらいと正直感じました。ただラジオやテレビで話している佐久間さんを知っているので、「私の方からフレンドリーにしていかないと」と思っていました。

佐久間:なるほど。それは、僕が人に合わせて態度を変えるのはやめて、自分のやりやすいようにしていたためですね。その代わり、機嫌を悪くするようなこともやめる。それで嫌われたり、離れていったりする人と付き合っていくのは、その先大変なんですよ。明坂君は後輩だから気を使ってくれたんだろうけど、僕は入社3年目からその態度で上司に臨んでいるから。

2人:(爆笑)

佐久間:「可愛い社員になるのはやめよう」と決めていました。で、たまに飲み会に行くと「やべえ、来てくれたんだ!」といわれるようなポジションを狙ったんです。

テレビ東京で働く明坂氏(左)の質問に、佐久間氏はざっくばらんに回答してくれた

佐久間氏はこの姿勢について、「故スティーブ・ジョブズ氏の服装に関する逸話の人間関係版」と表現する。ジョブズ氏は仕事を最優先するため、服装について考える手間を減らそうと、常に黒のタートルネック、ジーンズ姿を貫いたとされる。佐久間氏の場合は、「仕事相手はどんな人だろう?」と人間関係で詮索する手間を減らし、その分のリソースを番組クリエイティブに注ぐ狙いだった。

ちなみに飲み会の多くを断ったのもそれが理由。ただし「なんで、その飲み会に行く必要あるんですか?」と突っ張るようなことは止め(当初はしていたそうだ)、「下戸なんです」「実家から親が来ていまして」など、誘った相手のメンツを潰さないような優しい嘘をついてかわしていたそうだ。

立脚点をネガティブにおく

佐久間氏は若手社員時代、さまざまな面で決め事をしていたという。「会社は仕事をする場なので友だちはいらない」「人間関係的に、上司に好かれようが好かれまいが関係ない」、そして「自分も含めて人に期待しない」などだ。

書籍の中では「不機嫌を出さない」「人の悪口をいわない」などの教訓も示されている。とはいえ、頭では理解できても現実には徹底できそうもない。不機嫌になったり、悪口をいいそうになったりするシーンは少なからずあるのではないかと明坂氏は疑問を口にした。それに対し、佐久間氏は、「立脚点をネガティブにおく」ことで回避してきたとの返答があった。

たとえば、番組が新しく始まる時は、前提として『人のやる気』に期待しない。だから、やる気に頼らない仕組み化が必要になってくる。『最低限これだけ決めておけば物事が回る』というルールを作る。そうやって『立脚点をネガティブにおく』ようになってからは、失敗した人を怒ったりしないし、機嫌が悪くなったりしなくなりました。もう、なんとも思わない(佐久間氏)

その言葉を裏付けるように、佐久間氏が言葉をあらげる場面を明坂氏は全く見たことがないという。佐久間氏は「おそらく皆が相手に期待しすぎ。友だちみたいな人間関係があり得ると思っているからキレたり嫉妬したりする。良し悪しは置いておくとして、僕はもう、あくまで仕事仲間と捉えています」とも補足する。

ただ、こうしたドライな考え方は仲間を遠ざけないのだろうか?

自分が後輩に慕われているとしたら、それはこの20年でパワハラ、セクハラをしっかり潰したからだと思います。あと、別の番組で上手くいってなかった社員を迎え入れ、結果的にその社員たちが成長したことも一因でしょう(佐久間氏)

つまり、現場を改善するという業務上の圧倒的実績を残した結果、周りからの評価が自然と付いてきたのだろうと振り返った。

好きなことをやって、自分自身のブランドを築く

動画配信の発展などにより、テレビ局は転換点を迎えているともいわれる。そんな中、佐久間氏は番組関連の有料ライブ配信を実施したり、グッズ製作に力を入れたりするなど、テレビ放送以外のビジネスにも積極的に取り組んできた。

僕が面白いと思うこと、やりたいことは当時のテレビ界では真ん中ではなかったんです。好きな仕事を続けるには、『会社を稼がせること』あるいは『近い将来稼ぐようになる、伸びる』と思わせるようにしなくてはいけない。だからそのようにビジネスとして組み立てていったんです(佐久間氏)

一方、テレビでの広告収入ビジネスは限界を迎える可能性が高くなってきている。テレビ界の真ん中の仕事がシュリンクしていく可能性があることも、テレビ放送以外のビジネスを企画してきた要因の一つだ。

たとえテレビ界がシュリンクしても、違うタマを投げていれば支えになります。一方、もしテレビ界がこれまで通りでいけるなら、傍流の仕事を続けて給料をもらっていればいい。僕は窓際でもいいと思っていました。30代のころ、端っこ社員でも、好きなことをやって自分のブランドを築くことができると気づいたからです(佐久間氏)

好きな仕事を続けるために佐久間氏(右)がやってきたことに、真剣に耳を傾ける明坂氏(左)

また佐久間氏は「変革はデータの軽い業界から起こる」という考えを参考にしたという。雑誌業界はインターネットによって潮目が変わり、音楽の主流はCDからサブスク配信へと移り変わった。テレビ業界も変革が起きるのは自明の理だ。佐久間氏はその変革への備えは十分行ってきた自負があると語る。さまざまなコンテンツをたくさん見ている佐久間氏だが、リサーチ方法は何だろうか?

一般の人のTwitterなどで『自分の趣味や興味に合う』という方がいたら、まずフォローします。で、その人が勧めているものを無条件に見る。3回くらい見てみて、趣味に合わなかったらフォローを外す。逆に趣味と合致したら、その人が勧めるものは見る。そうした結果、偶然の出会い、偶然の知識を得られて、自分が変わっていった感覚があります(佐久間氏)

企画作りのキーワードは「仮説」と「違和感」

数々のヒット作を生み出す佐久間氏に企画作りについても聞いた。いつも複数の企画をもっているのではないだろうかと尋ねるが、企画ではなく、複数の仮説をもっているのだという。

いかに自信のある企画を持っていても、偶然誰かの企画と被ってしまえば意味がありません。ところが、『今のこの常識に対して、多くの人は本当のところ●●と思っているんじゃないか』といった仮説を常にもっていれば、そこからいろいろな企画が生み出せます(佐久間氏)

ある仮説から作った「じゃないとオードリー」

佐久間氏が企画して成功した番組「じゃないとオードリー」も、ある仮説から生まれたという。

最近放送した『じゃないとオードリー』にはある仮説があり、その仮説がとある番組で立証されたと感じたので番組にしました。オードリーというコンビの絆を試したり、絆で乗り越えていったりする番組を作ればいける、しかも配信にも強いだろうと確信がありました。事実、配信で叩き出した数字はものすごかったです。ただ、企画当初は面白さが伝わらなかったので、とにかく安くパイロット版でやり始めました(佐久間氏)

佐久間氏は仮説を常に2~3つ用意しておき、それこそ「なにか企画ない?」と相談された時に即興で提案するという。

「面白くない」という違和感をメモし、企画にいかす

同様に「違和感」も企画作りのキーワードにあげた。明坂氏の肌感覚としては、テレビ関係者の間では「違和感」という言葉がよく使われているそうだ。誰も表立ってはいわないが、自分の中ではどこか居心地の悪さを感じてしまう感覚のことだ。

僕自身だけが備えている特別な感覚なんてないと思いますが、ただ皆が面白がっているのに『面白くない』と感じるときがあります。それは、自分がその面白さをわかっていないだけなんで、その違和感をメモしておきますね。そのメモが、あとで企画につながったりするので(佐久間氏)

◇◇◇

若手時代の挫折から企画の立て方まで、佐久間氏の仕事術が約45分間にわたって掘り下げられた。明坂氏は聴講者に向けて、ぜひ佐久間氏の仕事術をマーケティングの業務にも活かしてほしいと呼び掛け、本セッションを締めくくった。

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