生成AIに対するマーケターの期待は大きい。オウンドメディアなどにおいて、今まで外部に発注していたコンテンツ作成を内製化できる、それどころかスピード感をもって量産できるのではないかという期待だ。一方で、サイト運営の実情を知っていると、SEOへの影響が気になるところだ。いたずらにコンテンツを増やしてスパム扱いされたら、業績にも悪影響を与えかねない。
「デジタルマーケターズサミット 2024 Summer」では、SEO・コンテンツマーケティングツール「Keywordmap(キーワードマップ)」を提供するCINCの仲野翔也氏が、業務の効率を上げながらオウンドメディアの評価を高めるために、生成AIをどう使いこなせばいいのか、押さえるべきポイントとノウハウを解説した。
生成AIの台頭でマーケターの仕事はすでに変わったか?
2023年頃を機に、生成AIの話題がデジタルマーケティング業界を席巻している。自社Webサイトに掲載するテキストをAIで創出したり、高度なデータ分析をAIに行わせたりと、生成AIに期待するマーケターたちによって、日々試行錯誤が繰り返されている。
実際に社内で起こったことをお話ししましょう。「Keywordmap(キーワードマップ)」のセールスを担当する若手社員が、時間をかけて製品のプレゼン資料を作っていました。しかし、これをChatGPTにやらせてみると、1分足らずで圧倒的に内容が良いものができてしまった。「潜在層」「準顕在層」「顕在層」などの用語をしっかり使い、層ごとに製品情報の収集スタイルが違う点まで押さえられていました。AIは、ビジネスに必要な文章をかなり精度高く生成できるところまできています(仲野氏)
コンテンツを大量生成できても、重要なのは1つ1つの品質
しかし、気になるのはSEOへの影響だ。生成AIで出力したコンテンツをWebサイトに掲載したら、検索エンジン側にスパム判定されはしないだろうか。
この疑問に対し、仲野氏は「Googleはコンテンツを作ったのが人間かAIかで区別することはなく、あくまで品質で判断するという姿勢を表明している」と述べる。そのため、生成AIの利用を控える必要はないという。
一方で、「コンテンツを活用するプロセスには注意すべきだ」と仲野氏は指摘する。過去に、生成AIによって商品レビュー記事を大量に作り、SEOの順位を数か月で大幅に上げたという事例があった。しかし、後にGoogle側で対策がなされたとみられ、検索順位は急落してしまったという。
いくら「コンテンツ制作の方法は問わない」とは言え、Googleが常に口にしている“コンテンツの品質を重視する”という基本のポリシーに反するものは評価が下がります。そこは改めて注意しましょう(仲野氏)
生成AIで流入を増やした成功事例も
一方、生成AIを活用したサイトでも、しっかり流入が増えて、後から急落もしない成功事例は確認されている。それも、2024年3月、Googleによる検索アルゴリズムの大幅変更である「コア アップデート」が実施された以降の事例だ。
検索流入を増やしたサイトは、いずれも毎月20~30本の記事をコンスタントに制作し、SEOをしっかり意識した記事構成にしていた。対して、新規記事の更新がほとんど行われていないサイトや、多くの記事を投入していてもSEOをおろそかにしているサイトは、コア アップデート後に流入を減らしている。
生成AIが出てきてからも、Googleはコンテンツの品質をかなり精緻に見ている印象です。短期~中期的には“品質×数量”で、良い記事を数多く掲載することで成果が決まってくるでしょう。ただ、生成AIによって今後、コンテンツの数量は急激に増えるはずです。誰にでもできるタスクはAIやツールに任せ、余った時間を使って、データや独自性に基づいた品質の高いコンテンツを出すことが重要になっていくと思います(仲野氏)
企業がインターネットを通じた情報発信を強化するには、オウンドメディア戦略を練り上げなければならない。オウンドメディアのコンセプトを決めるための市場調査や、競合他社メディアのアクセス動向の把握などは当然重要となる。しかし、サイトの評価を高め、検索流入を増やすには、仲野氏が繰り返し指摘するように“コンテンツの品質”にこそフォーカスすべきだ。
オウンドメディアの設計では、生成AIが大いに活躍する
コンテンツ作成のスピードを上げ、投下した時間以上の成果を得るためには、生成AIをどう使うべきか。仲野氏は、オウンドメディアの設計・運用の流れを10ステップに分類し、生成AIを活用できる5つのステップと、各ステップにおける生成AIの活用方法を解説した。
現状の生成AIが特に有効だとみられるのが、サイトの方向性などを決定する設計段階である。以下、各パートを具体的に見ていこう。
生成AIを活用できるステップ① ターゲティング
生成AIが有効なのは、まず、ターゲティング層の選定ステップだ。
「製品○○のカスタマージャーニーを示してください」「ペルソナを示してください」などのプロンプトを生成AIに入力するだけで、詳細なカスタマージャーニーやペルソナ像を文章で提示してくれる。
ターゲティング層を選定するために、これまでは時間をかけて人手で調査したり、ミーティングで議論したりと、時間をかけていました。生成AIを使えば非常に素早く構造化でき、MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive:漏れなく、ダブりなく)に整理できます。生成AIが非常に使えるステップだと思います(仲野氏)
生成AIを活用できるステップ②、③ テーマ設計、キーワードリスト
次に生成AIが有効なのは、「テーマ設計」と「キーワードリスト」ステップだ。
ターゲティング層を定めたのち、「潜在顧客層がターゲットのオウンドメディアを立ち上げる」と決まったなら、今度は「SEOで対策すべきテーマと、そのキーワードリストを作成してください」といったプロンプトを生成AIに入力すれば、対策すべきテーマや、それに関するキーワードリストなどの情報を細かく出してくれる。
従来であれば、手動でGoogle 検索をしてサジェストを目視でチェックしたり、Google 広告の機能である「キーワードプランナー」などを使用しての作業が必要だったが、生成AIなら容易に作成できるというわけだ。
生成AIである程度の目星を付けた情報を、人の手で深掘りするのも有効だと思います(仲野氏)
生成AIを活用できるステップ④ キーワード選定
実際のオウンドメディア運用段階で生成AIを活用できるのは、記事の「キーワード選定」と「構成案作成」ステップである。
たとえば、生成AIに「“コンテンツSEO”というテーマで検索に上位表示するために記事を書きたいと考えています。上位獲得すべき対策キーワードを選定してください」などのプロンプトを投げることで、「コンテンツSEO 効果」「コンテンツSEO メリット」「コンテンツSEO やり方」など、記事で対策すべきキーワードを選定してくれる。また、実際に検索上位に表示されているページの分析なども生成AIが行ってくれるという。
生成AIを活用できるステップ⑤ 構成案作成
オウンドメディアの記事を準備する際は「検索キーワード○○で上位に表示されたい」などの狙いを外部ライターに伝えて発注するケースが多いだろう。しかし、そうした外部ライターとは、前提となる情報の共有レベルやそもそもの認識に大きなズレがあることも多く、結果として修正に時間がかかるケースもある。
それを防ぐには、外部編集者に発注する際に、細かい記事の構成案を渡すことが重要となる。まずは、そのキーワードで検索するであろうターゲット層の興味・関心や、キーワード検索に至ったきっかけ、悩み事などのペルソナを考え、「30代 趣味」などのキーワードを検索し、「30代の方が趣味について調べる際にどんなニーズを持っているのか」を調べ、それを元に、構成案を作成する。
生成AIは、1つのテーマに対して、何度も質問を重ねていくことができます。「このキーワードで検索するユーザーはどんな層か教えてください」「このキーワードで検索している人の人物像を教えてください」というように繰り返し命令を実行していけば、ターゲット層のペルソナを導きだすことも十分可能です。
その後、検索キーワードやペルソナを提示したうえで、「この検索キーワードで1位を獲得する記事案を教えてください」などのプロンプトを入力することで、記事の構成案を見出しレベルまで考えてもらうことができます。もちろん、そのまま使うのではなく、生成AIで土台を作って、それを人がブラッシュアップしていくのが良いと思います(仲野氏)
できる作業は生成AIに任せる
生成AIを活用すれば、短時間で記事構成案や記事が作れるというメリットがあるが、現状、生成AIが作ったコンテンツをそのまま掲載するのはお勧めできない。低品質なコンテンツの割合が高くなり、サイト全体の評価が下がるリスクがあるからだ。「人間の目で校正・校閲したり、言い回しを変えたりと、手抜きせずにやるべきです」と仲野氏は忠告する。
仲野氏が今回解説した内容は、Googleが示した検索方針に沿った“王道”的な内容がほとんどだ。アルゴリズムの裏をついて上位を得るといった、ハック的な部分はほぼない。それこそが仲野氏の真意であり、伝えたいメッセージだ。
Googleが検索エンジンを提供し続ける以上、公正さ、ユーザー体験を重視する路線が変更される可能性は低い。裏技に飛びつくようなマネはせず、ユーザーやニーズを正しく効率的に理解するためにこそAIを活かすべきだろう。
SEO・コンテンツマーケティングツール「Keywordmap(キーワードマップ)」
ここまで説明してきたように、生成AIはマーケターの業務負担軽減に大きな効果がある。しかし、生成AIは、Googleの検索動向や、リアルタイムでのSEOランキングを踏まえた結果までは示してはくれない。
そこで活用したいのが、CINCの提供する、SEO・コンテンツマーケティングツール「Keywordmap(キーワードマップ)」だ。
CINCは、Googleの検索データや検索結果データをはじめ、さまざまなデータを大量に自社で収集してデータベース化している。Keywordmapもそのビッグデータを基盤として提供されており、オウンドメディア設計・運用に必須の「市場分析」「競合分析」から、「キーワード選定」「記事構成案作成」、さらにはAIによるコンテンツ生成、そして「効果検証」までを可能としている。
SEOを考慮したキーワード選定から、記事構成案の作成までを5分程度で完了させることができる。生成AIを使う以上の時短を実現できます(仲野氏)
仲野氏は最後に、「生成AIがオウンドメディア運用の大部分を担えるようになってきたいま、競合他社が、同じ工数でもAIを上手く活用して、より高品質なページを作ったり、効率化で生まれた時間を別の業務に充てたりする可能性は十分あります。遅れを取らないためにも、可能な範囲からAI導入を始めるべきではないでしょうか」と述べ、セッションを締めくくった。
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オリジナル記事:生成AIで変わるコンテンツ制作効率化 Googleからの低評価を防ぎ、SEOで成果を出す方法 | 【レポート】デジタルマーケターズサミット2024 Summer
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