SEOで成果を出すためには、どれほどの予算が必要だろうか? 見込まれるSEOの価値を数値化し、パフォーマンスのギャップを埋めて、ROI(投資利益率)を計算しよう。
今回のホワイトボード・フライデーでは、SEOの取り組みがもたらす価値を予測して実証する方法をトム・マンセル氏が解説する。
ホワイトボード・フライデーにようこそ。僕はトム。Croudという会社でオーガニックパフォーマンス担当のディレクターを務めている。今回はSEOの予測方法について説明する。デジタル関連の予算がこれまで以上に厳しく精査されるようになっているなかで、SEOの取り組みによって得ている価値をちゃんと示すよう求める圧力が高まっている。
そこで今回は、僕がそうした予測を立てて価値を実証するために実施しているやり方について紹介しよう。
見込まれるSEOの価値を数値化するためにできるプロセスだ。ただし、これが厳密に科学的なものでないことは断っておきたい。未来を予測するのは、非常に難しいことだからだ。
SEOの予測に必要なもの
まず、SEOの成果予測をするための事前準備だ。次のものを用意しておく必要がある:
必要なもの1 12か月分のトラフィックデータ
始める前に、予測を立てるためのデータとして必要なものがいくつかある。まず、12か月分のトラフィックデータだ。これには、次のどちらかを利用すればいい:
- 普段使っているアクセス解析ツールのデータ
- Google Search Consoleを使って月別に取得した12か月分のオーガニック検索データ
必要なもの2 目標
2つ目に、社内で仕事をしているにせよ、あるいはクライアントと仕事をしているにせよ、ほとんどの場合は予測する将来のSEOのパフォーマンスについて目標を設定するだろう。そのため、これも予測に盛り込むことが非常に重要だ。
必要なもの3 ターゲットとするキーワード
3つ目は、キャンペーン期間中にターゲットとするキーワードだ。これはビジネスやクライアントのために構築しようとする追加的な価値(増分、インクリメンタリティ)を実証しようとする場合にとても重要だ。
必要なもの4 クリック率モデル
最後がクリック率モデルだ。これは3つ目に多少関連している。クリック率モデルによって、次のことを計算できるようになる:
- 各キーワードがどれほどのトラフィックをもたらすか
- それらのキーワードに対する表示順位を上げることでウェブサイトにどれほどの追加トラフィックをもたらすか
以上が、このプロセスに着手する前に必要な4つの要素だ。
SEOの予測データ作成プロセス
こうしたデータをもとに、最終的に次のようなグラフで確認できるSEO予測を作っていく:
このデータは、単にSEOの成果を数値で予測するだけでなく、いくつかの異なるシナリオを検討できるようにしている。
それぞれの線が何を意味するかは、次のとおりだ:
左端からでている青色の線は「クリック数」の過去データだ。これは予測ではなく、先ほど用意した12か月分のトラフィックデータ、つまり過去実績だ。
赤色の線「ベースライン」は基本的に、付加価値の高いSEO施策を行わない場合(つまり今のまま)だとこうなると予測されるパフォーマンスだ(つまり、過去実績の延長)。
グレーの点線が「目標」だ。目標として用意した月ごとの数字を表示しているだけだが、SEOの仕事はこれに向けて取り組む必要がある。
このグラフのメインが緑色の線「予測」だ。これは、指定したターゲットキーワードにの順位を上げるSEO施策を進めることで、どの程度のトラフィックを得られそうかを示したものだ。
紫色の線が「実際の結果」だ。SEO施策を進めた(または進めなかった)結果、トラフィック状況がどうだったかを記入していったものを表示している。
このグラフをどう使うか。最もわかりやすいのは、「当初の目標に対して、現在ターゲットにするとしているキーワードでSEO施策を進めた場合に、目標を達成できそうかどうか」だ。
グラフ中で「目標」(グレー)よりも「予測」(緑色)の線が下にあれば、予定しているSEOを進めても目標を達成できない可能性がある。この場合、さらにキーワードを追加するなどして、施策プランを拡大する必要があるかもしれない。
そして、SEOのキャンペーンが進むにつれて、「実際にどのようなトラフィックを生み出しているか、立てた予測に対してどう推移していったか」も見えてくる。これを上司やクライアント組織に見せることで、SEO施策の価値を実証できる。
ベースラインを予測するには
ベースライン(グラフでは赤色の線)を知る方法をもう少し詳しく説明する。つまり、過去データをもとに将来のデータを予測する方法だ。いくつかの異なる方法で、そのデータを取得できる。
ベースラインを知る方法1 基本的な方法
1つ目は僕が「基本的な方法」と呼んでいるものだ。基本的に、次の処理をする:
過去12か月分のオーガニックデータを取得する。
Googleトレンドを利用し、過去12か月間に達成したブランドの成長を確認する。
これを使い、Googleトレンドで測定されたブランドの強さに基づいて、このままいけば今後どうなりそうかを数値化する(過去のデータを、ブランドのニーズ増加度にあわせて修正する)。
これが、今後12か月間にSEOを行わないモデルを構築する場合の基本的なベースラインを設定する方法の1つだ。
ベースラインを知る方法2 FORECAST関数を使う方法
2番目の選択肢は、僕が「好んで使う方法」で、時系列モデルを使うことだ。GoogleスプレッドシートやMicrosoft Excelでは、さまざまな計算式を利用できる。そのうちの1つをここに挙げる。
それは「FORECAST関数」というものだ。何ができるかと言えば、過去12か月間のデータを見て、そのデータから回帰直線を求め、取り込んだすべての履歴データから、次の12か月間にどうなりそうかという予測を立ててくれる。
これは、君の取り組みから可能な限り正確なベースラインを知るための実に強力な方法だ。
SEOで生み出す価値の増分データを予測するには
では次に、SEOで得る価値の予測(増分データ)に話を移そう。どうすれば、予測データ(グラフでは緑色の線)を導き出せるのだろうか。そのために必要なものは2つある(できれば3つ)。
必要なもの1 キーワード/月間検索ボリューム/検索順位
キャンペーンの一環としてターゲットにする「キーワード」と、各キーワードについて、次の情報を収集する:
- 月間検索ボリューム
- 現在の検索結果における表示順位(現時点で各キーワードが検索結果のどこに表示されるのか)
必要なもの2 非ブランドワードのクリック率
次にGoogle Search Consoleを使って、次の情報を取得する:
- 非ブランドワードのクリック率
これが重要になるのは、次のようにして「SEO施策がうまくいった場合の予測」を作る材料として有用だからだ:
- これらのキーワードから現在どの程度のトラフィックを獲得しているかを把握する
- これらのキーワードに対する順位を改善すれば、トラフィックがどれぐらいになるかを把握する
非ブランドワードのトラフィックを順位改善後のデータにしたものが、予測値となるというわけだ。
可能ならば キーワードの難易度
可能ならば、「キーワードの難易度」も指標として整理して、予測データに活用するといい。
ターゲットとしている各キーワードは、SEO施策によるトラフィック増加度合いが一律ではない。改善を進めるのがどれほど難しいのかによって、キーワードごとに増加要因とする変化率が変わる。そのため、そうした要因を計算に含められると、より現実に近い予測を作れるようになる。
各キーワードに対し、どれほど速やかに表示順位を上げられるだろうか。競争が非常に激しいキーワードほど、順位の上昇に影響を及ぼすには時間がかかるだろう。キーワードをめぐる競合がほとんどなければ、はるかに早く順位を上げられるだろう。
テンプレートのスプレッドシートを参考に自分なりの予測を
ここまでで説明したことを実現するテンプレートを、あらかじめGoogleスプレッドシートとして用意しておいた。
基本的な使い方は次のとおりだ:
SEO予測のテンプレートにアクセスする(この時点では閲覧専用)。
Googleスプレッドシートの[ファイル]>[コピーを作成]メニューで自分のアカウントにコピーする。これで自由に編集できるようになる(自分のGoogleアカウントが必要)。
コピーしたスプレッドシートの次のシートにデータを記入していく:
- [データ入力1:クリック数]シートの緑色背景の部分(薄い緑色の部分はわからなければテンプレートのままでも可)
- [データ入力2:増加係数]シートの薄い緑色背景の部分(わからなければテンプレートのままでも可)
[予測]シートに、予測データとグラフが自動計算される(データ入力済みならば実績データも)。
[増分(追加的な価値)]シートには、さまざまな予測データの内訳や、判断の材料となる情報が自動計算される。
特にJ列「重み付け済み優先度」は、どのキーワードから施策対象にするといいかの優先度データとして有用だろう。
SEO効果の予測は売上増加やROIの予測にも使える
テンプレートのスプレッドシートでは、今後12か月間でどのようにプラスのパフォーマンスをもたらすかという観点でデータをモデル化している。
このデータにさらに処理を加えることも可能だ(たとえば売上指標など)。
たとえば次のようなデータを作るのはどうだろうか:
「コンバージョン率」や「平均注文金額」のデータをクリック数の増分に適用することで、売上がどれほど増えるかを予測できる。
売上増加の数字を、SEO施策にかかるコストとあわせて計算すれば、ROI(投資利益率)を予測することもできる(売上の増分を投資費用で割ればいい)。
売上増加の数字から逆算すれば、このSEO施策にどれぐらいの予算までなら使ってもROIを確保できるのかも予測できる。
こうした計算から得られる売上増加やROIの数字は、財務チームや予算担当者に提示するうえで、実に魅力的なものになるはずだ。
以上、参考になっただろうか。テンプレートのスプレッドシートとともに参考になればうれしい。このホワイトボード・フライデーが役に立つことを願っている。読んでくれてありがとう。
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オリジナル記事:SEO施策の価値とROIを予測するには? 4つのデータで実現するSEO予測【無料テンプレ付き】 | Moz - SEOとインバウンドマーケティングの実践情報
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