仕事が忙しいところにプライベートの事情が重なり、心身ともに疲れ切ってしまう。そんな苦しい経験をした人もいるかもしれない。
ウエディングパークのブランドクリエイティブ本部 本部長の菊地 亜希氏は、若手の頃に休職をした経験がある。その頃を菊地氏はこう振り返る。
「人を頼れずに抱え込んでしまうタイプで、いつの間にか自分を追い込んでしまっていたのです。そんな私を変えてくれたのは本でした」
そんな菊地氏に、出合った本の話、キャリアや仕事に関する4つのマイルールについて聞いた。
「もう復帰できないかも」と不安だった20代
ルール1どんなに忙しくても、自分に投資することを忘れない
菊地氏は大学卒業後、Web業界に就職した。入社4年目でWebディレクターとエディターをしていたときに転機が訪れる。
経営方針の変更で所属部署がなくなりました。それぞれ他の部署に異動が決まっていく中、私が担当するサイトは独立した事業部をつくることになり、事業責任者の立ち位置で仕事することになったんです。営業経験もなくビジネスの感覚はまったくありませんでしたが、せっかくいただいたチャンスなので頑張ろうと思いました(菊地氏)
しかし、ビジネスは思うように伸びず半年で撤退が決まってしまう。菊地氏は別部署に異動することになり1年ほど経った2011年3月。実家が東日本大震災で被災した。仕事で忙しい日々を送る中、実家のフォローにも追われ、菊地氏は心身共に疲れ切っていた。GW明けに会社に行けなくなってしまい休職することになる。
休職して申し訳ない気持ちと、もう復帰できないかもしれないという不安に襲われました。今振り返ると、仕事そのものが大変だったというよりも、私が人を頼れず抱え込むタイプで、自分を追い込んでしまったのだと思います。プライドも高く、仕事ができないと思われたくなかったんです(菊地氏)
休職して体を休めたことで徐々に元気になって気力もわいてきた菊地氏は、本を読み始める。テーマは、マーケティング、お金、心の鍛え方、自分との向き合い方、キャリアなど多岐にわたった。
特に印象に残っているのは泉正人さんの『お金の教養』という本です。お金を使うことは消費、投資、浪費に分けられる。そして浪費をなくして投資にまわそうと書かれていました。その時に、会社にとって自分は投資商品なのだと思ったんです。だから投資された分より大きなリターンを返さなければいけない。
そして、お金だけでなく時間やキャリアにも共通する考えだと思いました。仕事が忙しくて自分に投資する時間がないと、できる仕事は増えていかないことに気づきました(菊地氏)
さまざまな本を読んでいるうちに実践で試してみたくなった菊地氏は、みるみる元気になり復職が決まった。
休職中に考え方が変わり、仕事をする上で信用されることが大事だと思いました。どれくらい仕事を任せていいかわからないと思われていることはわかっていました。信頼してもらいたかったので、来た仕事に全力で取り組み、落ちているボールを拾いまくるように仕事をしました(菊地氏)
復職したばかりで無理をしすぎるのは禁物だ。ワークライフバランスはどのように考えていたのだろうか。
当時の上司と、最初の3カ月は残業しないと決めていました。しかし、本を読むなど自分に投資するようになってからは、定時で帰っても結果を出せるようになりました。休職して自分なりに考える時間をもったことが今の自分につながっています。いい経験でした(菊地氏)
ルール2必要なときは本が呼んでくれる。とりあえず積ん読でもOK!
本は今でも菊地氏を支えてくれている。たとえば、仕事で悩んだときやモヤモヤしているとき、まず自分と徹底的に向き合ったら、本屋に行くのだという。並んでいる本のタイトルを眺めていると、何かしらピンとくる本に巡り合う。自宅に積ん読している本が「読んで」と言っている気がするときがあるのだ。
きっと自分でわかっていないだけで、答えは自分の中にあるんです。それが、読書や人との会話などの外部刺激によって引き出されてくるような気がします。だから、気になる本への投資は惜しまないと決めています。なんとなく買った本が後になって役立ったという経験を何度もしました(菊地氏)
たとえば、デザイン思考やデザイン経営という言葉がよく聞かれるようになった頃、菊地氏は興味をもち書籍を何冊か購入した。ずっと手元に置いておき、その後はデザイン経営の講座に通ったこともあった。すると数年後に、自社がデザイン経営を推進していくことになり、その骨子づくりを社長に依頼されたのだ。さらに2023年10月からはデザイナーのチームもマネジメントすることになった。
興味のあることがすぐ仕事につながらなくても、気になることを情報収集し続け、本として手元に置いておくことに意味があると思います(菊地氏)
現在育児中でもある菊地氏は、ちょっとした時間でも読書ができるよう、本はなるべく電子で購入している。子どもを寝かしつけながらスマホで読書をすることもあるという。
コロナ禍でウエディング業界は大打撃
ルール3ウエディング業界の広報・マーケ担当という意識で動く
菊地氏が勤めるウエディングパークは、カップルがクチコミを見ながら結婚準備ができるWebサービスだ。しかし、コロナ禍では大人数の結婚式を行うことが難しく、結婚式をあげることを延期したり、諦めたりするカップルも出てきていた。
2020年4月に1回目の緊急事態宣言が出て、外出自粛が呼びかけられると結婚式場も休業を余儀なくされました。本来3〜5月は結婚式が多い時期なのですが、まったく動けない状態になってしまったんです(菊地氏)
そこで菊地氏のチームが取り組んだのが「#ミライケッコンシキ」という企画だ。コロナ禍で変わろうとしている結婚式場が増えていたが、その情報が届いていないカップルに伝えるため、さまざまな結婚式場を取材した。
私たちはウエディングパークの広報・マーケティング担当ですが、徐々にウエディング業界全体の動きを世の中に知らせるという発想で、さまざまな企画を立てて実行しました。こうした動きはウエディング業界には届いていても、カップルや社会に情報を届けられていませんでした。そこでスタートさせたのが『Wedding Park 2100 ミライケッコンシキ構想』というプロジェクトです(菊地氏)
「Wedding Park 2100」は、2100年つまり未来の結婚式のあり方を考えて体験できる場をつくるものだ。2021年1月にプロジェクトを発表し、リアルで3月に行うことにした。
この時期はオンラインイベントが全盛だったのですが、私たちはリアルな場で人が集まる価値をしっかり伝えたいと考えました。2100年の結婚式が体験できるスペースとして、ソーシャルディスタンスを保てて飛沫対策ができる広い施設を借り、少人数でゆとりのある空間で行いました(菊地氏)
同プロジェクトでは、作家の又吉氏に2100年の結婚式をテーマにショートストーリーを依頼した。そのほかに2100年の婚礼写真や挙式会場をイメージして創作した。これまで記事やライブ配信では伝えきれなかったことが、イベントの来場者には伝えられた実感をもてたのだという。2022年、2023年とこのプロジェクトは続いている。
コロナ禍で結婚式は大打撃を受けて変化しなくてはいけなくなりました。しかし、『人が集まって人生の門出をお祝いすることは、豊かに暮らしていくために必要なものだ』と改めて認識することができました(菊地氏)
ルール4すべての仕事にマーケティング思考を取り入れる
マーケティングでは、ユーザーのインサイトに向き合い、自分たちはどんな価値を提供できるかを考える。菊地氏はこうしたマーケティング思考を、すべての仕事に取り入れるようにしているという。
たとえば、マネジメントならメンバーは仕事や上司に何を求めているのか、そこに対して私が提供できる動きはなにかを、対話をすることで知ろうとします。ある人にとっては課題の解決を手助けすることかもしれないし、またある人にとっては挑戦機会を作ることなのかもしれない。だからこそ、一人ひとりに向き合うことを大事にしています(菊地氏)
上司として、マーケ担当としてという立場から相手を見るのではなく、なるべく相手の感覚をインストールして、その人の感覚だったら何を求めているのかを考えるのだ。具体的には、その人が好きな本を読んだり、同じ景色を見たりするのだという。
100%理解することは無理でも、同じことを経験することで、知りたい相手のことが少し立体的に見えてきます。マネジメントとして心がけているのは、目の前の課題よりも未来のありたい姿を共に語ること。変化の早い時代なので、今目の前にある課題は10年先の課題ではない可能性が高いですよね。それなら苦手や課題に向き合って苦しい思いをするのではなく、未来にどうありたいかを考えて、そうなるためにどうしたらいいかを考えていく方がいいですよね(菊地氏)
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オリジナル記事:休職中に読んだ“お金の本”が自分を変えてくれた。ウエディングパークのブランドマネージャーが語る「自分に投資する重要性」 | デジマ4つのマイルール
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