「匿名宝飾店」を仕掛けた4℃、商品のクオリティで勝負したブランド戦略 | インタビュー

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yu-ta(ゆーた)26歳、会社員 PC.スマホ周辺機器やスマート家電など ガジェットを使って スマートな生活を送っています。 このサイトでは管理人おすすめの 最新の便利ガジェット情報や お得に買えるセール情報を中心に 発信しております。
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2023年秋、原宿キャットストリートBANKGALLARYに期間限定でオープンした体験型ジュエリーショップ「匿名宝飾店」。ブランド名を一切明かさず、さまざまな手法でジュエリーの品質やつけ心地の良さを体験してもらうという、ユニークな手法で注目を集めた。実はそのブランドこそ国産ジュエリーブランドの先駆的存在である「4℃(ヨンドシー)」であり、背景には製品のクオリティへの自信と原点回帰の思いがある。大成功を収めた企画を終え、クリスマス・新年商戦を前に、同ブランドの販売促進課の課長、神島涼子氏にお話を伺った。

期間限定でオープンした体験型ジュエリーショップ「匿名宝飾店」

認知率が8割超えのブランドだからこそ、本当の体験価値を提供できる機会に

――「匿名宝飾店」はジュエリーファンだけでなく、マーケティング界隈でも大きな話題となりました。なぜあえて“ブランド非公開”という手法を取られたのでしょうか。

神島氏(以下、敬称略): 創業50周年という節目に、原点に立ち返り、改めて4℃のジュエリーが持つ“本来の魅力”をお伝えしたいと考えました。4℃がジュエリーづくりをはじめた頃から変わらない「モノづくりへのこだわり」を、先入観がない「匿名」の状態で五感を通して体験していただきたい。ジュエリーそのものと向き合える時間を提供したいと社内・外のメンバーとともにディスカッションを重ねました。

「匿名宝飾店」オープンの際のPR画像

4℃のジュエリーはどのブランドにおいても、「お客様の肌につけていただいて初めて完成するもの」という考えでつくられています。つまり、主役はジュエリーではなく、あくまでもお客様。似合うジュエリーをまとうことで、その方の肌や表情を美しく見せ、個性を輝かせます。そこで、お客様がご自身に似合うジュエリーを楽しみながら試着できるよう、感性に訴える体験の場として組み立てました。

――SNSや他メディアでもかなり話題になっていました。「匿名宝飾店」にはどんな方が来場していましたか?

神島: おかげさまで20代を中心に幅広い年代の方々にお越しいただきました。お一人ではもちろん、カップルやご家族、ご友人同士という方も多く、いろんな楽しみ方をされていらっしゃいました。お店に足を運んでくださった方による“口コミ”で日を追うごとに入場制限が必要になる時間が増え、最終日の来店は480名にもなりました。最終的には5,500名以上のお客様がご来店され、「私も行きたかった」という声をたくさんいただきました。

――大盛況でしたね。「匿名宝飾店」でのお客様の反応や変化など、ブランド全体への影響をどうでしたか?

神島: ブランドとの近さによって、それぞれ反応が異なる印象がありました。まず、4℃のジュエリーをご存知の方は、新しい取り組みとして興味を持ってくださり、より積極的に楽しんでくださった感があります。一方、ジュエリーそのものに触れる機会が少ない、4℃との接点があまりなかったという方は、「気軽に体験できてジュエリーに興味が湧いた」「自分に合うジュエリーが見つかった」というように、ジュエリーや4℃との出会いを新鮮に受け取られていました。

また、全体的なアンケート結果では、「シンプルで洗練されたデザインでよかった」「アクセサリーの肌馴染みが良かった」など好意的なコメントをたくさんいただきました。「4℃のイメージが変わった」という人が83%、「正体は意外だった」という人が78%と、ブランドへの印象が変わった方も多くいらっしゃいました。

――「ブランドへの印象が変わった」とのことですが、もともと4℃は一般的にはどのようなイメージで受け取られていたのでしょうか。

神島: ブランド調査においては、4℃は20歳~59歳の女性の認知率は約9割と高く、「生涯に寄り添っていけるジュエリーブランド」としてイメージいただいていることが伺えます。実際、「ファーストジュエリー」としてお小遣いで購入したり、ご両親や恋人から贈られたりという経験も多くの方が語られていて、オン&オフで日常的に着用するジュエリーとしてはもちろん、エンゲージリングやマリッジリング、記念日のリングなどのハレのジュエリーとしてもお選びいただいています。

このイメージはおそらくメインブランドである「4℃」のイメージが強いと思われますが、実際にはさまざまなブランドがあり、それぞれに特徴があります。たとえば以下です。

  • canal4℃……本物志向でありながらユニークなコラボレーションなども展開
  • cofl by4℃……リサイクルメタルやラボグロウンダイヤモンドなどを使用したサスティナブルブランド
  • 4℃ HOMME+……ジェンダレスで多様性のあるデザインが特徴

4℃への信頼や愛着はそのまま受け継ぎながらも、イメージを固定化することなく、ブランドの進化や新しい側面も知っていただきたいと考えていましたのも、今回の「匿名宝飾店」の開催にもつながっています。

――認知度が高いブランドだからこそ、部分的なイメージが突出したり誤解が広がったりしやすい懸念もあります。2020年頃にはSNSでややネガティブな表現をする人も見受けられました。そんな中で今回の取り組みが成功したのは、しっかりとしたモノづくりが根底にあったからなのですね

神島: 当時話題になったきっかけの投稿や流れを見てみると「年齢や好みに合わないと感じるものを贈られてしまった」というミスマッチの体験であり、決してブランド批判ではなかったのです。でも、SNSというメディアで拡散したときに、「ファーストジュエリーとして人気がある」という部分的なイメージがネガティブに捉えられてしまった。それがSNSを含めたメディアでブランドについての意見が可視化され、イメージが固定化されてしまうということもありました。

しかし、一方で多くのお客様が嬉しかったジュエリーギフトの体験や結婚指輪にまつわるエピソード、仕事のお守りにしているジュエリーなどについて、次々とSNSに掲載してくださったんです。1つ1つのジュエリーに込められた思いに触れて胸が熱くなり、思わず涙したことは何度もあります。本当に嬉しいお声をたくさんいただきました。そうしたお客様の声に触れられたことで、改めて4℃のブランドとしての価値を認識し、自信を持たせていただいたように思います。

株式会社F.D.C. PRODACUTS 神島涼子氏

ジュエリーそのものと“ブランドと秘密を共有する”体験を提供した「匿名宝飾店」の空間

――4℃の本質をうまく世間に伝えた「匿名宝飾店」ですが、実際にはどのような「体験」ができたのですか。

神島: この体験は、招待状で「匿名宝飾店」からのメッセージやコンセプトに触れていただくところから始まります。直接来店された方にも、その場でお渡ししたのですが、最後のページでスクラッチするとブランド名が明かされるという仕掛けになっており、「私たちの正体は秘密にしておいてください」というメッセージを添えました。

来店時に配られる招待状
招待状の最後のページを削るとブランド名が出てくる

店内に入って1つ目の「展示エリア」では、ご自身に似合うジュエリーに出会う準備として、お顔のタイプやパーソナルカラーから診断する「ジュエリーカルテ」を作成いただき、指のサイズを測るリングライザーなども用意しました。

「ジュエリーカルテ」を作成できるスペース

2つ目の「試着エリア」では、商品を自由に手にとって試着いただけるようになっており、着けた様子をあらゆる角度から見えるよう、さまざまな形の鏡を多数配置しました。「指のための試着室」として、ドールハウスのような部屋で手元の撮影ができるコーナーも好評でした。

さまざまな形状の鏡が並ぶ「試着エリア」
手元が撮影できるコーナーも

一番人気だったのは、ジュエリーをビュッフェのように好きなだけ選んで身につけられるコーナーでしょうか。一般的なガラスケースではなく、テーブルにスイーツのように盛り付けて気軽に手にとっていただけるようにしたんですよ。どなたの目も輝いていらして、気に入ったジュエリーを手にされたときめきが伝わってくるようでしたね。

一度に複数のジュエリーを試着できるコーナー

一部は「販売エリア」で購入ができるようになっており、お求めになられるお客様も多くいらっしゃいました。デザイン画をあしらったシャンデリアを下げたり、オリジナルのドリンクを提供したり、もちろんショッパーやパッケージなどにもこだわり、楽しんでいただけるような工夫を凝らしました。

水のように普遍的で変幻自在の「4℃の魅力」を発信していく

――4℃のブランド価値を伝えていくために、今後のマーケティングの方向性をどのようにお考えですか。

神島: ブランドイメージは、良い商品やサービスを提供する中で自然に生まれてくるものと考えていますが、それだけでは4℃の商品やサービスに触れたことがない方には届かないことも実感しました。あらゆるお客様やまだブランドを知らない方に、これまで築いてきたブランド価値を工夫しながら届けることが重要だと感じています。

社内では当たり前のことになっている原点に基づいたことやモノこそ、丁寧に伝え、ブランドをあらゆる面で知っていただくことで価値を高められると再認識しました。

たとえば、「人がつけて完成するジュエリー」というコンセプトは、日本人の肌の色や質感、腕や指などの形を熟知して計算されたデザインだからこそ実現できるものです。「4℃のイヤーカフは耳が痛くならない」とお客様にも言われるほど、着け心地を重視しています。この着け心地を実現するために、人の目に触れない裏側の滑らかさや当たり具合を研究し、高度な技術で造形・研磨しています。

こういった価値を言葉や文章だけでなく、お店に来ていただく、デザインを見て試着していただく、Webコンテンツを見ていただくというように、あらゆるコミュニケーション手段で全方位に訴えることが必要だと考えています。「匿名宝飾店」を口コミで拡散してくださったように、思わず誰かに伝えたくなるような仕掛けも考えていきたいですね。

――直近または今後のお取り組みなどについて、ご紹介ください。

4℃は素材開発もしており、ブランドの初期にオリジナルで開発した「4℃アクアゴールド」を、50周年という節目に改めて蘇らせ、「4℃ Aqua Gold Collection」として展開しています。華やかでいて肌なじみの良い色合いです。4℃の名前にも由来する「本質は変わらずとも、カタチを変えながら地球上のあらゆる生命に潤いをもたらす『水』のような存在でありたい」という思いが込められています。

そして、2023年11月27日には、新ブランドの「KAKERA」を立ち上げました。唯一無二の天然石を生かした一点物や、昆虫や植物などのモチーフを扱うなど、世界でたった1つのかけらの「あるがままの美しさ」をテーマにしたD2Cブランドです。

これまで大切にしてきたことを守りつつ、多様化する価値観に柔軟に寄り添い、時代に合わせて変化していく。そんな4℃の今と多面的な魅力が伝わるよう、メッセージをしっかりと発信していきたいと思っています。

――ぜひ、楽しみにしております。本日はありがとうございました。

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