ボーナスが昨年より12%増えて33.6万円、対昨年の消費者物価指数が105のとき、実質賃金はいくら?
ボーナスの季節ですね! どこかで目にしたのですが、今年は昨年に比べて10%くらい上がるようですね! 先輩、ボーナスが出たら、もずくをおごってください!
いいね! もずくの季節到来! ところで、統計局のサイトによると、東京都区部の総合的な、2020年を基準とした2023年消費者物価指数は105.4なんだってね。
参考:e-Stat「 政府統計の総合窓口 消費者物価指数」
消費者物価指数といえば、最近、実質賃金とかいう言葉、聞きますよね。実質賃金が下がっている! っていわれるアレです。賃金に実質も形式もあるんですかね。
厚生労働省によると「実質賃金(指数)は、名目賃金指数を消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で除して算出」しているね。
参考:厚生労働省「毎月勤労統計調査における賃金の伸び率について」
???
たとえば、昨年よりボーナスが12%増えて、33.6万円になったとしよう。対昨年の消費者物価指数が105だった場合、ボーナスの実質賃金はいくらだと思う?
え? 33.6万円は33.6万円じゃないんですか?
計算すると、実質賃金は32万円だね。求め方がわかったら、もずくおごるね!
えー。どういう計算? もずく~もずく~
昔から、算数も数学も苦手なアユムは、希望が叶ってマーケティング部門に異動してきました。Web担で見るような「すごいマーケターになりたい!」と胸を躍らせていたが、配属後、理想と現実のギャップに苛まれることに。データ、数字、%、小数。うわぁーん、どうしたら、数字に強くなれるのでしょうか……。
そこに現れたのが、大人向け数学教室「大人塾」を運営し、数学が苦手な社会人に対して指導をしている、アジアゾウをこよなく愛するモリさん。
この記事を読むべき人: 実質賃金の計算をできるようになりたい方
この記事を読む必要がない人:実質賃金の求め方を理解している方
この記事でわかること:実質賃金の意味と求め方
実質賃金と名目賃金とは
もずくをゲットするために、実質賃金と名目賃金について教えてください!
もずく、おいしいですよね。私も好きです。ところで、実質賃金と名目賃金の話ですね。まず、働いて受け取ったお金の、額面通りの数字を名目賃金(平均月間給与)といいます。
額面通り、つまり、表向きの金額は33.6万円ということですか? となると、実質賃金は、表向きじゃない裏のお給料、それって…もしかして裏金?
裏金!? そんなややこしい、問題になりそうなお給料ではないですゾウ。実質賃金とはつまり、物価高とかを考慮したうえで、実際、いくらなの? というものです。
なるほど。それだけの金額をもらってるけど、物価が変わるとその価値も変わるよーみたいな感じですね。
はい。では、ボーナスが12%増えて33.6万円ということは、昨年のボーナスはいくらでしたか?
割合の計算で学んだ「もとになる量を求める計算」ですね。昨年のボーナスを𝒳とおいて、𝒳×(1+0.12)=336000 なので、1.12𝒳=336000 これをといて𝒳=300000
昨年のボーナスは、30万円です!
すばらしいです。割合の考え方をきちんと身につけましたね。それでは、このとき、昨年のボーナスが30万円で、1個1000円のもずくをいくつ買えますか?
300000÷1000=300個です。もずくにボーナスのすべてをかけています。
ところが、もずくの値段が上がりました。昨年から5%値上げした場合、いくらになりますか?
1000×(1+0.05)=1050円です。
では、今年のボーナスで昨年と同じ金額、1000円のもずくはいくつ買えますか?
336000÷1000=336個です。
はい。しかし、値上げ後のもずくはいくつ買えるでしょう?
336000÷1050=320個です。
その通り。もずくが同じ値段だったら、もっと買えたハズですよね。先ほど説明したように、物価(ここではもずくの値段)が変わったことを前提にした賃金の価値が実質賃金です。
物価が変わってなければ336個買えたのに?
今回は320個しか買えない。つまり、実質賃金は1000円のもずく320個分の価値なので…。
よよよよよ(泣)。ということは、実質賃金は1000×320=320000ですね? お給料は伸びたけれど、値上げを考えると、実際の金額はこれだけよ、と。
そうです。もずくが値上げ前の1000円のままのとき、320個だけ買える金額、それが今回の実質賃金にあたります。
実質賃金指数を求める
ところで、実質賃金は出せましたが、先輩の言っていた「実質賃金指数」「消費者物価指数」は出てきませんでしたね。実質賃金指数、消費者物価指数ってなんなんですか?
まず、「消費者物価指数」は、基準時の価格を100とおいたときに比較時の価格を割合(指数)であらわしたものです。
以前、教えてくださった「指数」ですね!
はい、では消費者物価指数を求めましょう。では、名目賃金で値上げ前のもずくは、いくつ買えましたっけ?
336000÷1000=336個です。
そう。ですが、実際には、これより買える数は減っていますね。このとき、もずくの買える個数を基準にして考えると、ボーナスは、昨年と比べてどうなっているでしょう?
基準が去年で、比べられるのが今年ですよね。だから、320÷300≒1.07 です。
そのとおり。これを昨年を基準にした指数にすると?
×100をすればいいので、107ですね。
よいですね。ボーナスは額面で12%増えてますが、もずくの価格も変わってます。それを調整して考えたとき、昨年を100としたボーナス(実質賃金)の指数は107だとわかります。これが実質賃金指数です。
表にまとめて考えよう
わかりやすいように、表にまとめましょう。以下のような表をかきます。
ここまでの数字を使って、表を埋めていきますね! 表の右下の部分が実質賃金指数ですね。
ここで、まず、もずく金額を消費者物価指数に置き換えましょうか。基準年のもずくの値段を100とします。
昨年の金額を100とおくと、本年は、105とあらわせますね。一番下の行は、もずくの個数を求めたのと同じように、名目賃金÷消費者物価指数で計算しました。これを見ると、もずくの金額を消費者物価指数に換えて計算しても、右下の実質賃金指数は同じですね。
そして、名目賃金も名目賃金指数としてみましょうか。
はて、名目賃金指数とは?
基準年の名目賃金を100としたものです。本年÷基準年×100で求めます。
なるほど。名目賃金も指数にしてしまうんですね。表を埋めたら…本年の一番下の値に100をかけたら、実質賃金指数と同じになります!
アユムさんもお気づきのように、上の表では、本年の名目賃金指数を消費者物価指数で割った値に100をかけると、実質賃金指数と同じになります。
もしかして、先輩が最初に言ってた「実質賃金指数は、名目賃金指数を消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で除して算出」し、というのはそういう意味ですか。
その通りです! 名目賃金指数÷消費者物価指数×100=実質賃金指数 で求められます。また、名目賃金÷消費者物価指数×100=実質賃金 です。
336000÷105=3200 100をかけて 320000 。一発で実質賃金が出せました! これで、実質賃金の計算方法、名目賃金やそれぞれの指数の考え方がわかりました。
名目、実質賃金のグラフ
厚生労働省の名目、実質賃金の資料を見ていたら、下のようなグラフを発見しました。これはどう読むのでしょうか。
参考:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年月分結果速報」(令和6年5月9日)
まず、太い線は、名目賃金ですね。グラフの上に、「前年同月比」とあるので、どういう計算になりますか?
今月 前年の同じ月 たとえば、今年の2月÷去年の2月みたいな感じですね。
その通り。この太い線は、令和5年になってから、0を下回っていませんね。ということは、つまり?
えーと、令和5年になってから、前年の賃金よりずっと高いってことですね。
はい。では、実質賃金はどうでしょう。
うわ、ずっと0を下回ってますね。ということは、実質賃金は、ずっと前年より下がっているってことですね。
これは、何をあらわしているでしょうか?
「実質賃金指数=名目賃金指数÷消費者物価指数」で、名目賃金指数が大きくなっているのに、実質賃金指数が小さくなっているということは、消費者物価指数がめっちゃ大きくなっているということですね!
いいですね。分母が同じとき、分子が大きくなれば、値は大きくなります。
が、分母も大きくなる場合、その大きさによっては、値は小さくなりますね。
つまり、消費者物価指数の伸び半端ないって、という感じで、物価が値上がりしているんですねえ。
3つの指数の関係がちゃんとわかっていれば、こういう事実も見抜けるんですね。おもしろいです!
それでは、もずくを食べに行きましょうか。先輩にごちそうしてもらいましょう。ちなみに、私はもずくのてんぷらが好きです。
もずくを天ぷらにするのは油がはねて、もずくが藻屑になりそうです。危なそうですね。
ポイント
- 実質賃金=名目賃金÷消費者物価指数×100
- 実質賃金指数=名目賃金指数÷消費者物価指数×100
今日の問題をおさらい
Q1. 昨年よりボーナスが12%増えて、33.6万円になりました。
対昨年の消費者物価指数が105のとき、ボーナスの実質賃金はいくらでしょうか?
実質賃金は名目賃金÷消費者物価指数で求められるので
33.6万円÷1.05=32万円
答え:32万円
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オリジナル記事:【計算できる】昨年よりボーナス12%増で33.6万円。消費者物価指数105のとき、実質賃金はいくら? | 算数が苦手なマーケター向け「算数基礎講座」
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