今回の講演内容は、自社で実施したアンケートの回答数が通常の3倍、満足度も他の回よりも圧倒的に高かったんです。協賛セミナー、自社セミナーにかかわらず、セミナーに参加して良かった! と思ってもらえる講演作りを大事にしています。
と話すのは株式会社ユーザーローカルの嶋田彩野氏。
Web担当者Forumでは、年4回実施するイベントで集客・聴講者からの満足度が高いスポンサー企業の講演セミナーを「スポンサー部門最優秀コンテンツ賞」として表彰している。2024年5月に開催されたセミナー「Web担当者Forum ミーティング 2024 春」で受賞したのは株式会社ユーザーローカル。
受賞を記念してセミナー企画を担当する嶋田氏にお話をうかがった。
導入企業と共に登壇したセミナー。登壇後のアンケート結果に手応えを感じる
2005年創業のユーザーローカルは、日本国内でいち早くヒートマップの開発・提供に取り組んできた。現在は、Webアクセス解析ツール「User Insight」、SNS分析ツール「Social Insight」を提供している。さらに、チャットボット事業や企業独自の生成AI環境構築をする「ユーザーローカル ChatAI」などの生成AI関連事業にも力を入れている。
嶋田氏は、User InsightとSocial Insightのカスタマーサクセスチームの責任者だ。カスタマーサクセスチームでは、ツールを導入した企業の成果の最大化を目的に、ツール活用のサポートを行っている。成果が得られた顧客の事例発信にも力を入れており、Web記事の作成、外部イベントや自社カンファレンスでの顧客との共同登壇などを行っている。また、ウェビナーのコンテンツ作成、運営もカスタマーサクセスチームの仕事だ。
ユーザーローカルは、これまでも何度かスポンサー部門最優秀コンテンツ賞の候補に上がっており、今回満を持しての受賞となった。受賞した記事は以下で読める。
お客様のご協力があってのセミナーでしたので、評価されたのは率直にうれしいです。参加者さんの満足度が高いと、アンケートの回答数も増え、結果その後のアポイントも取りやすい傾向にあります(嶋田氏)
アクセス解析をしていても活用できていない。多くの企業が抱える課題にアプローチ
ユーザーローカルでは、過去にセミナーで紹介した事例や内容を再利用することもあるが、各イベントで内容がかぶらないように毎回工夫をしているのが特徴だ。
今回のセミナーでは、森永製菓の事例を通して、SNSとWebデータの評価と改善につなげるポイントを伝えた。2020年にGoogle アナリティクス 4(GA4)が登場し、2023年7月にはユニバーサルアナリティクス(UA)の計測が停止された。「GA4によりアクセス解析の概念が変わり、困っている方が増えている」と嶋田氏は話す。
嶋田氏によると、ほとんどの企業がアクセス解析に取り組んでいるものの、データを活用してアクションにつなげることができていない企業も多いと感じているという。収集したデータのレポートを「見つめている」状態なのだ。
『アクセス解析をしているが結果を活用できていない企業が多い』という仮説へのトライとして今回のコンテンツを作成し、収集したデータを具体的に活用するパターンを提示しました(嶋田氏)
SNSについても同様で、フォロワー数、投稿数、リポストなどの反応は計測しているが、それを評価したり、社内で共有したりといったことができていない担当者が多いという。
森永製菓では、SNSの効果として、広告費に換算して社内にアピールしたり、営業の現場でSNSで話題になっていることを示す根拠として利用できるようにしたりしている。また、SNSでバズった後に、ホームページへのアクセスが増え、その行動からニーズを把握して発信して、売り上げにもつながった事例を紹介している。
データを収集するだけでなく、使う、評価する、アクションするを詰め込んだコンテンツにしました。アンケートでも『このやり方を試したい』というフィードバックがあって嬉しかったです。反響が大きかったということは、データ分析しているが活用できていないという仮説が正しいということであり、今後他のコンテンツにも活かしていきたいと考えています(嶋田氏)
なお、セミナーではSNSの反響を広告換算するための標準的なレートや計算方法も紹介した。ただし、こちらはセミナーのレポートでは非公開にすることとした。
実際に会場に足を運んでくれた方だけに持ち帰ってもらいたい情報としてお話ししました。40分参加して良かったと思ってもらうことを常に考えていて、リアルのセミナーだからこそできる踏み込んだ情報提供をしました(嶋田氏)
セミナー参加者は未来のお客様。タイトルに中身が見合わなければ、逆効果に
ユーザーローカルでは、導入企業と登壇するケースが多い。登壇企業にはどのようにアプローチしているのだろうか?
お客様のご厚意で協力いただいています。登壇してもらうためのテクニックなどはなく、普段からサービスやツールを使ってもらうためのサポートを丁寧に行う中で『普段からお世話になっていて助かっているのでいいですよ』とおしゃっていただくことが多いです。会社として真面目に取り組んでいるから、協力が得られていると思います(嶋田氏)
企画するにあたっては、イベントによって来場者層が異なるので、まずはイベントの内容や趣旨を確認する。
イベントの企画書から、参加者の所属や興味・関心を確認します。また同じイベントに過去に登壇していれば、過去の評価なども確認します。そのうえで、アクセス解析なのか、SNS分析なのか、B2BなのかB2Cなのかを整理して、マッチするお客様の活用事例を考えて、オファーを出します。協賛型セミナーは半年に5~6回登壇しますが、一つ一つ妥協せずに、できる限りお客様と一緒に登壇するようにしています(嶋田氏)
セミナー内容を考えるにあたっては、登壇が決定してから、コンテンツ制作、登壇企業との打ち合わせなどで3か月程度かかるという。意識しているのは、参加したくなるようなタイトルをつけつつも、内容でがっかりされないようにすることだ。
セミナー内容が期待にそぐわないと、未来のお客様を逃すことになります。そうならないように、持ち帰って実践してもらえるような情報を用意できるよう意識しています(嶋田氏)
内容は、顧客が抱えている課題にフォーカスすることが多い。この課題を発見できるのは、カスタマーサクセスチームとして常に顧客と接しているからだという。課題だけでなく、どんな機能や活用方法がヒットしているのかも、現場の声を聞きながら把握できていることが、セミナーのコンテンツ企画に役立っているという。
振り返りに使う数値は、必ず過去データと比較して検証し、改善に活かす
登壇後は、過去の実績と比較して、次のような数値やデータで振り返り、改善できる項目を確認している。
- 告知内容にニーズはあったのか? → 予約数、参加者数
- 内容はどうだったか? → アンケートの回収率、回答者数、フィードバック内容
Web担のイベントでは、他社のセミナーの結果データがもらえるのがありがたいです。自社の過去の実績だけでなく、他社のコンテンツと比較して振り返りができるので、勉強になります(嶋田氏)
改善の事例としては、自社についての情報と顧客の事例のボリュームの検証がある。典型的な構成は次のようなものだ。
- 自社や製品の説明
- 顧客事例
- 製品の案内
製品について知らない人もいるので、1で製品の説明をしっかり入れたところ、宣伝色が強いというフィードバックがありました。そこで、1の説明を簡単にして、顧客事例を紹介してから、3でもう一度説明をするようにしました。
ただし、ゴールデンパターンはなく、イベントや参加者の興味によっても、良いバランスが変わるので、試行錯誤しています。製品についての話はしたいので、『宣伝があっても良い内容だった』と思ってもらえるためには、2の事例の中身を良くすることが重要です(嶋田氏)
自社製品PRが長いときの会場の空気の冷たさ。その経験がウェビナーにも活かされる
協賛型セミナーに参加する目的は、大きく2つある。1つは、ブランディング。「アクセス解析はユーザーローカル、SNS分析はユーザーローカル」と、第一想起してもらえることを目指している。もう1つは、新規の見込み顧客との出会いで、ユーザーローカルを知らない人にアピールすることを目指している。
なお、ユーザーローカルの製品は、アップデートが早いことが強みだ。しかし、それを共有する場がない。そのため、イベントはアップデート情報、新機能について紹介する場としても活用しており、すでに知っている人にも新しい情報を提供している。
カスタマーサクセスチームでは、自社のハウスリストを使ったウェビナーも担当している。ウェビナーは、既存リードとの関係を深め、縁を復活させる場所としてとらえている。ウェビナーには、導入企業の登壇はなく、ノウハウ発信のコンテンツが中心だ。
協賛型セミナーで新規の方と出会い、その方たちと連絡を取る手段を得ています。今はSNS運用に興味がなくても、3か月後には運用することになっているかもしれません。だから、定期的にウェビナーでノウハウをお届けして、今すぐ客ではなかった方が『今だ』となったときに、ご縁をいただけるようにしています(嶋田氏)
ウェビナーの内容は、トレンドを意識して考えることが多い。GA4へ切り替わるタイミングではGA4を取り上げ、Threadsなど新しいSNSが注目されれば、すぐに紹介している。ウェビナーの場合は、30~40分を目安にしている。それよりも長くなる場合は、途中でアンケートを入れたり、チャットで意見を出してもらったり、インタラクティブにできるようにしている。
オンラインのウェビナーでは、これまでリアルのイベントに登壇した経験が活きていると嶋田氏は話す。
リアルのイベントで宣伝が多いと、会場からの冷たい空気を肌で感じます。無言のダメ出しを感じて、宣伝が多いと期待に添えないということを学習してきました(嶋田氏)
顧客を通して語ってもらうことで、参加者が真似したくなる情報を提供できる
セミナーで気を付けているポイントは、今回のように、顧客を通してユーザーローカルを語ってもらうことだと嶋田氏。そのほうがニーズがあるし、「明日から自社でもやってみよう」という気づきを与えられるからだ。
忙しい業務時間の40分を費やして参加してもらえることは、とてもありがたいことです。無駄な時間だったと思われないように、100%ではなくても、『聞けて良かった話があった』と思われる内容にしたいです(嶋田氏)
今後の展望について次のように語った。
カスタマーサクセスチームは、データを活用してビジネスの成果につなげられるように支援することがコンセプトです。データ活用はより求められるようになっていますし、User InsightとSocial Insightは、生成AIを活用した機能を取り入れているので、業務効率化にも活用できます。これからも、導入企業の協力の元、共にイベントに登壇し、皆様の役に立つような活用方法を発信して、私達がご支援できる企業を増やしていきたいです(嶋田氏)
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オリジナル記事:セミナーアンケートの回答数が3倍! BtoBマーケで商談化率を高める講演を企画するには? | 受賞企業が教える「セミナー作りのコツ」
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