グランプリ受賞! 富士フイルムのオウンドメディア「ChekiPress」が考えるブランディングの本質とは? | はてなが訊く「オウンドメディア成功の法則」

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yu-ta(ゆーた)26歳、会社員 PC.スマホ周辺機器やスマート家電など ガジェットを使って スマートな生活を送っています。 このサイトでは管理人おすすめの 最新の便利ガジェット情報や お得に買えるセール情報を中心に 発信しております。
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本連載では、株式会社はてなの大久保亮太氏をインタビュアーに迎え、さまざまな人にオウンドメディアの運営、コンテンツ制作、継続の秘訣について訊いていく。

今回は「コンテンツマーケティング・グランプリ2023」(主催:Content Marketing Academy、オウンドメディア勉強会)のブランドコンテンツ部門でグランプリを受賞したINSTAX“チェキ” Webメディア「Cheki Press」を運営する、富士フイルムイメージングシステムズ 門田裕氏にお話をうかがった。

INSTAX“チェキ” Webメディア「Cheki Press」。は、2015年の運営開始以来、チェキがもっと “分かる” “使える” “楽しめる”、オリジナルのインタビューコンテンツや最新のニュースを日々掲載している。

チェキを知らない人も含む、全方位がターゲット

大久保: 門田さんの現在の業務内容を教えてください。

門田: 富士フイルムイメージングシステムズ株式会社は、富士フイルム株式会社の国内販社であり、イメージングに関する製品やサービスの提供を主業としている会社です。

また私が所属するグループでは、イメージング事業の中でもinstax™“チェキ”(以下、チェキ)の販売から販促マーケティングまでの事業全般を担当しております。

大久保: instax“チェキ”とはどのような製品ですか?

門田: 「チェキ」は富士フイルムの「インスタントフォトシステム」を指すいわゆる名称ですが、一般の方は「チェキ」と聞くとポップなデザインのカラフルなカメラをイメージされることが多いですね。撮影したその場ですぐに写真をプリントできて、仕上がった写真を通じてコミュニケーションできることが最大の特長であり、チェキを一言で表すなら「リアルコミュニケーションツール」だと考えています。

また、富士フイルムはチェキのもつそうした価値を「don't just take, give. とるだけじゃない、あげたいから。」というタグラインに込めて発信しています。

大久保: 「カメラ」ではなく「コミュニケーションツール」という位置づけはとても興味深いです。オウンドメディア「Cheki Press」の設立の背景、目的、ターゲットについて教えてください。

門田: 2015年に立ち上げた「Cheki Press」ですが、当時全盛だったクローズドなコミュニティサイトではなく、あえてオープンなメディアを作った理由は、すでにチェキを使っている方たちだけでなく、チェキに興味を持っている方やチェキのことををよく知らない幅広い層にも、しっかり情報を届けたかったからです。

 富士フイルムイメージングシステムズ株式会社 門田裕氏

力を入れているのはチェキの使い方についてのコンテンツ

大久保: 「Cheki Press」とは別に「instax.jp」というオウンドメディアも運用されていますが、役割はどのように異なりますか?

門田:instax.jp」は、チェキの仕様などの製品情報や使い方を詳しく紹介するサイトです。「Cheki Press」は、チェキをより身近に自分ごととして捉えられるように、チェキがもっと 「わかる」「使える」「楽しめる」という観点から構成されており、オリジナルのインタビューコンテンツや最新のニュースを掲載しています。

大久保: 使い方を説明するサイトと、自分ごととして捉えられるようなカジュアルなコンテンツを載せるサイトで役割が分かれているのですね。「Cheki Press」の運営体制はどのようになっていますか?

門田: 弊社のメンバーをはじめ、富士フイルムの国内販促担当部門、制作も含めた代理店のような立ち位置の富士フイルムビジネスエキスパート株式会社、そしてメディア運営に強いQetic(ケティック)株式会社が協力して企画や取材に携わっています。毎月の編集会議には、4社の担当者が参加しています。

大久保: 企画を担当するQeticはどんな会社ですか?

門田: カルチャーニュースを毎日配信する「Qetic」というメディアを運営している会社で、特に映画や音楽など国内外の最新カルチャーに強い会社です。特に音楽分野ではアーティストからの信頼が厚いので、企画やコンテンツ制作に関してすごく頼りにしています。

大久保: 「Cheki Press」には、「ニュース」「インタビュー」「まとめ」「使い方」「コラム」という5つのカテゴリーがありますが、コンテンツの種類が豊富で、製品サイトとオウンドメディアが理想的なかたちで融合していますね。

門田: ありがとうございます。中でも「使い方」の記事はこだわりを持ってつくっていて、検索からの流入も多いです。チェキをすでに持っている人、これから欲しいと考えている人、両方に対して、より使うシーンをイメージして楽しく使っていただくために、こだわって作成・更新しています。

大久保: そのプロダクトをどのように使ってもらいたいかなど、シーンや背景などを説明することができるのもコンテンツマーケティングの醍醐味ですね。サイトを開設した2015年から、アクセス数は順調に増加していますか?

門田: 波はありますが、順調に成長しています。唯一、コロナ禍の外出自粛期間時はアクセス数が停滞しましたが、その時も「おうち時間をチェキで楽しもう」という切り口で、自宅でも楽しめる使い方を伝えました。さまざまな方に「自分のおうち時間」について語ってもらったり、「チェキで撮影・プリントした写真を離れたところにいる大切な人に送ろう」といった内容の記事を発信したりすることで、外出しにくい期間でもある程度のアクセス数を維持できました。

大久保: KGI、KPIは定めていますか?

門田: 我々の中ではいくつかの指標を定めていますが、数値目標のような形にはしていません。SNSでの反響やPVは編成会議のときの参考にしています。

 株式会社はてな 大久保亮太氏

ターゲットに刺さるコンテンツをつくるための心がけ

大久保: チェキを知らない幅広い層をターゲットにされていると伺いました。ターゲットに刺さるコンテンツを企画するために心がけていることはありますか?

門田: チェキはコミュニケーションのためのツール。どう使うか、どんな写真が撮れるのか、どんな楽しいことができるのか、実際のチェキプリントや利用シーンは記事の中に必ず入れています。

instax mini Evo™」という機種には「光漏れ」というレンズエフェクトがあります。いま、若い方たちの間で、スマートフォンのカメラとは違う風合いで撮影できるという理由でフィルムカメラがブームになっています。彼らはフィルムカメラならではの写真表現を「エモい」と感じていて、その中にはカメラに光が入りフィルムの一部が感光してそこにない色が焼き付く現象なども含まれています。「光漏れ」はここに着想を得て開発したレンズエフェクトです。

「INSTAX mini Evo™」のレンズエフェクト『光漏れ』+フィルムエフェクト『イエロー』(「チェキの使い方講座!「“チェキ” instax mini Evo」の使い方をマスターしよう!」)

最近では、チェキで撮るときの撮影ポーズがSNSにたくさん投稿されていて閲覧数も多いです。今の若い方は、写真を撮り慣れているし、撮られ慣れているので、楽しい写真を撮影するためのアイデアも豊富です。若い方たちが編み出した写真を撮るのが楽しくなるアイデアを紹介するということは、これからも積極的にやっていきたいですね。

大久保: 「Cheki Press」を拝見していても、記事に登場する方によって、チェキの写真が全然違うのはおもしろいですね。

門田: チェキの特にアナログモデルはズームができないですし、一部の機種を除きフラッシュも強制自動発光するなど、自分でコントロールできることに制約があるのですが、その制約の中で自分の撮りたいものをいかに表現するか、ということに魅力を感じて使っていただいている方も多いです。

デジタルカメラが普及する過程で画像の高画素化が急速に進むにつれ、私自身「いい写真=きれいな写真=高画質な写真」と考えていましたが、チェキを担当するようになってその考えが改められました。

チェキだと、デジタルのような解像度の高い写真は撮れないし、失敗もする。でも、仕上がった写真からは「みんなで集まったこの時が一番楽しかったな」とか「この風景がきれいに見えたからシャッターを切ったんだな」ということは伝わってきます。

ブレていても、暗くても、白飛びしていても、撮った瞬間の空気感やその時感じた想いが込められていれば、それは「いい写真」なんだと思うようになりました。

また、若い方たちがアナログのツールに魅力を感じている理由の一つに、自身が成長してゆく過程を楽しめることがあると考えています。初めて触れるアナログツールは最初のうち、思いどおりに操れず失敗ばかりだけど、失敗を重ねるうちにコツを掴み使いこなせるようになる。今の若い方たちはそうした体験価値が味わえるツールに魅力を感じています。チェキも、写真撮影の上達プロセスを体験でき、しかも他人とのコミュニケーションも楽しめる新しいツールとして認識していただいているのではないかなと思っています。

運営メンバー全員が「ブランド・マネージャー育成講座」を受講

大久保: 「Cheki Press」で発信するうえで、気をつけていることはありますか?

門田: 記事中での表現や言葉選びには特に気を配っています。言葉一つとっても受け止め方は人それぞれ。たとえばチェキを表現する際には「レトロ」という言葉は使わないようにしています。年齢が上の世代にとってチェキは数十年前に使ったことのある「レトロ」な存在かもしれませんが、今の若い世代にとっては新しい体験ができる見たこともないツールかもしれない。「レトロ」という言葉を選ぶことがチェキの持つ可能性を狭めてしまうことにつながってはならない、そんな意図があって表現や言葉選びに気をつけています。

あと、「Cheki Press」では、「印刷」という言葉も使いません。チェキは露光させたフイルムを現像液で処理し、画像を可視化して定着させており、その過程は「印刷」ではなく「現像」なんです。そこは富士フイルムがこだわっている表現でもあります。

大久保: 自社で取り決めている一貫したメッセージやルールをオウンドメディアでも踏襲することは当たり前のように聞こえますが、「Cheki Press」のように公式サイトとは別でコンテンツマーケティングのためのオウンドメディアとして情報発信をするときにその一貫性を忘れてしまうことも多いため、気をつけたいですね。集客のために実施している施策はありますか?

門田:Cheki Press」では特に広告配信などはしておらず、情報拡散のために行っていることといえばSNSの公式アカウントで記事をシェアすることくらいですが、それでも自然発生的に拡散されているようで嬉しい限りです。また、伝わり方の「広さ」はもちろん大事ですが、「深さ」も意識しています。時には特定の業界の方から「あの記事はよかった」「書いてくれて嬉しかった」という声をもらうこともあって、一人でも「すごくよかった」と言ってくれると、「ああ、伝わったな」と感じられて、嬉しいですね。

大久保: 先ほど「Cheki Press」KPI・KGIについての考え方はお伺いしましたが、オウンドメディアを運営していると、「どのぐらい売上に貢献しているのか」といった声が社内から上がることもあります。そこにはどう対応していますか?

門田: 我々のオウンドメディアのうち「instax.jp」がそのミッションを担っていて、広告配信も含めてさまざまな施策を実施のうえ、効果測定しています。それに対して、「Cheki Press」はわりと自由に運営させてもらっていて、そのコンセプトは運営当初から変わっていません。それでいてアクセス数が大きく落ち込むようなこともなく、うまく役割分担できているのかなと思います。

大久保: 目に見えた事業貢献を求められることも当然ありますが、その前の指標としてアクセス数を確認している事例も多いですし、そのアクセス数が落ち込むことがなく長く運営を続けていることで、好調なチェキの事業に貢献しているかもしれませんね。コンセプトを変えずに運営を継続するためには、経営陣からの理解も必要です。何か心がけてきたことはありますか?

門田: 運営を継続する過程で、ブランディングを強く意識し始めました。1998年に初代チェキが発売してから約20年経った頃からです。「チェキの名前は知っているが使ったことがない」人に向けて、改めてブランディングを実施しようと考え、「Cheki Press」をリブランディングの場所とすることを経営陣に説明し、理解を得ました。

ブランドというのは、自分たちで作るものではなく、ユーザーの心の中に形作られるイメージでなければならない。その想いをサイト構築に反映させた成果が「コンテンツマーケティング・グランプリ2023」で評価され、ブランドコンテンツ部門でグランプリを受賞できたことはすごくうれしかったです。ブランドを体現するサイトとして第三者から裏付けを得られたことは社内でも喜ばれて、社長賞をいただきました。

大久保: おめでとうございます!

門田: ブランディングとは、ユーザーに商品の価値を伝える一連のプロセスです。それを理解してもらうために、「Cheki Press」に関わるメンバーは全員ブランド・マネージャー認定協会によるセミナーを受講して、資格を取得しています。全員がブランディングの大切さを理解したうえでメディアを運営しているのです。

大久保: 講座を受講したことで、どのような効果がありましたか?

門田: ブランドを作る難しさや、ブランディングには強い信念が必要であることがわかりました。富士フイルムのインスタント事業部統括マネージャーは、自らブランド・マネージャーとして「チェキのあるべき姿」の指針を作って展開していますし、オンラインとリアルのブランドイメージを連動させて、統一したメッセージを伝えています。

大久保: 門田さんにとって、サイト運営のやりがいは何ですか?

門田: インスタント事業が好調なことがまずいちばんのやりがいです。あとは、チェキを担当するようになってからは、若い方が集まるフェスに出展したり、展示会やイベントに参加したりして、ユーザーが喜ぶ姿を間近で見られるようになり、それが原動力になっています。そこで体感できる手触り感があるからこそ、続けられているのだと思います。

大久保: 今後「Cheki Press」をどのようなオウンドメディアにしていきたいですか?

門田: 私が担当に就任したときと比べると製品の種類が格段に増えており、チェキの楽しみ方も広がっています。「Cheki Press」ではそれをチェキユーザーにわかりやすく伝えると同時に、チェキに興味を持っているけれどまだ使ったことがない方々に、チェキの楽しさを知ってもらいたい。そのための発信を続けていきたいです。

聞き手:大久保 亮太(おおくぼ・りょうた)

株式会社はてな コンテンツ本部 執行役員 コンテンツ本部長

大学卒業後、広告代理店を経て、2011年にはてなへ入社。

事業開発部と営業部を兼務し、はてなの広告全般とアドテクノロジーを活用した事業開拓を行う。現在は、執行役員として、オウンドメディアCMS「はてなブログMedia」や「はてなブログBusiness」など、法人向けの「はてなブログ」各種サービスや、企業のオウンドメディアのトータル支援など、コンテンツマーケティングの支援サービスを統括している。

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