2024年9月19日、米国発のフィットネス・ウェルネス・ビューティのサブスクリプションサービス「ClassPass(クラスパス)」が日本上陸、サービスを開始した。ClassPassは世界30カ国で6万以上のパートナーと提携しており、ユーザーはサブスク会員になることで世界中にある約500万店舗のフィットネスジム・ウェルネス・ビューティ体験を利用できる。
日本においては現在、首都圏で200店舗以上と提携しており、ピラティスやヨガ、ボクシング、サウナ、ヘッドスパなど多様な体験が可能だ。レッドオーシャンのフィットネス・ウェルネス・ビューティ業界でClassPassの勝機はどこにあるのか。メディア向けの発表会に参加し、同サービスの特徴や強みを取材した。
利用者に「選択肢」を、パートナーに「収益増」を提供
ClassPassでは、月額2,900円〜39,800円の全6プランが用意されており、金額に応じた「クレジット」が付与される。たとえば、2,900円のプランは8クレジットが付与され、3クラス(1クラスあたり約967円)の受講が目安となる。スタンダードなプランは30クレジットが付与される9,900円で、12クラス(1クラスあたり825円)の受講が目安となる。
日本において、1クレジットは363円〜311円に設定されている。当月分に使い切れなかったクレジットは翌月に繰越ができ、クレジットが不足する場合は都度購入もできる。
利用者にとって最大のメリットは、スケジュールや目的に合わせて世界中の施設から多様な体験を選択できることだ。かつ、リーズナブルな価格帯で1つのアプリで予約や支払いが完結する利便性もある。
スポーツジムは通うモチベーションを維持するのが難しいと言われますが、ClassPassは選択肢が幅広く飽きづらい特徴があります。友人と一緒に参加することも可能で、仲間と体験を共有しながらモチベーションを高めることも可能です(Mindbody ClassPass Japan合同会社 カントリーマネジャー 川口和城氏)
一方、ClassPassと提携するパートナー企業にとっては、施設稼働率の向上と新規顧客の獲得による新たな収益源の創出がメリットだ。平日の日中など稼働率の低いクラスへの集客を促したり、ClassPassを通じた新規会員の獲得により、収益増が見込めたりするという。
世界規模で見ると、ClassPassの提携パートナーへの累計売上貢献は14億ドル(約2,000億円)にのぼります。当社のパートナーは平均的に新規ユーザーが32%増加し、ClassPass経由で4%の新規会員を獲得しており、2%未満のユーザーがClassPassへシフトしています(Mindbody ClassPass COO 兼 CFO トム・アヴェストン氏)
利用者の85%は女性、年齢層は25〜45歳、法人も多く利用
ClassPassは、ユーザーの男女比が女性85%、男性15%で年齢層は25歳〜45歳となる。スタジオフィットネスの初心者が56%を占め、利用者の94%がClassPassを通じて新たな体験や施設を発見しているという。
若年層、かつ女性会員が多いのは、Instagramを中心としたインフルエンサーマーケティングに注力してきたためだという。SNSによるクチコミでサービスを広げてきた結果、現在のような会員属性となっている。
一般会員向けのサービスに加え、法人向けの福利厚生サービスも提供しており、現在グローバルで2,000社以上が導入している。
成功の肝は、独自の「クレジットモデル」
利用者にとっても、パートナー企業にとってもメリットがあるとはいえ、ClassPassが創業当初から順風満帆に成長してきたのかというと、決してそうではないとCOO 兼 CFOのトム・アヴェストン氏は振り返る。
当社では、過去に2度のピボットを経験しています。1度目に実証したビジネスモデルは『無制限のサブスク』で、たとえば月額100ドルで無制限に利用できるものです。ユーザーにとっては非常に満足度が高かったのですが、事業者側や投資家には歓迎されませんでした。
2度目は『回数固定のサブスク』で、受講できるクラスの回数を毎月3回、5回、10回などと設定したものです。より良いモデルでしたが、当社側に送客のインセンティブが生まれませんでした。ユーザーが枠内で最大限利用すると当社の売り上げが下がってしまい、当社とパートナー様の間でモチベーションが異なる結果となりました(アヴェストン氏)
そうした背景を踏まえ採用されたのが現在の「クレジットモデル」で、この新モデルの導入こそ他社との差別化ポイントであり、ClassPassの成長に寄与したという。
同モデルの仕組みは、まずパートナー企業が申し出た1クラスごとの希望金額をもとに、ClassPass独自のアルゴリズムを活用して、売り上げを最大化できるクレジットを算定する。算定にあたっては、体験内容、クラスの人気度、インストラクターの影響度、時間帯などさまざまな要素が含まれている。パートナー企業は、利用されたクラス分のクレジットと同等の金額を収益として受け取る。
一方、ユーザーに対してはパートナーに支払うクレジット単価より高いクレジット単価で販売しており、その差額分が同社の利益となっている。
クレジットモデルの導入により、すべての当事者にインセンティブを提供できるビジネスモデルとなり、世界的に成功を収めることができました。ClassPassユーザーに提供されているクラスの価格は割安で設定されていますが、クレジット表記なので直接的な価格がわかりづらい上にサブスク会員にしか表示されません。つまり、パートナー様の価格競争力を損なわない設計と言えます(アヴェストン氏)
日本では200店舗からスタート、どんな期待があるのか
日本においては、都内を中心に首都圏に200店舗以上の体験を提供している(2024年10月時点)。女性専用ピラティススタジオ「the SILK(ザ シルク)」やボクシングエクササイズスタジオ「UBX(ユーボックス)」などと提携しており、掲載店舗数はピラティス、ヨガ、パーソナルトレーニング、ボクシング・キックボクシング、その他フィットネスの順となる。
業界の事業者が抱える『ユーザー獲得のコストがかかる』『退会率が高い』といった課題に対して、持ち出し費用なしに新規顧客の獲得や収入増を提供するのがClassPassの強みです。過去に退会した方に再度アプローチすることも叶います(川口氏)
国内に32のピラティススタジオを運営するthe SILKの創業者であり、HYV(ハイヴ)社代表取締役の茅野航平氏は、「稼働率が低い時間帯の送客、ピラティスの未経験者層へのアプローチに加え、インバウンド層も獲得して海外出店の布石になれば」と期待をにじませた。
世界で100店舗のボクシングエクササイズスタジオUBXを運営するUBX JAPAN COOの倉岡征克氏は、「フィットネスは長らく参加率が5%と言われており、残りの95%は未参加だ。ClassPassの登場により市場の拡大やQOL向上の機会を提供してもらえるのは、ありがたい。非常に期待している」と率直な思いを述べた。
今後は店舗数の拡充、国内の法人向けサービスの正式展開も
実際にClassPassのアプリをダウンロードしてみたところ、多くの選択肢から選べる楽しさは十分に感じられた。一方で、気になる施設はあっても選べる曜日や時間帯が限られていて予定を合わせづらい難しさがあった。現時点では、幅広くフィットネス関連に興味があり、スケジュールを柔軟に組みやすい人が対象になる気がした。
今後は、都内に加えて神奈川県、千葉県、埼玉県のターミナル駅を中心に店舗の拡充をしていく予定だという。また2025年後半から国内の法人向けサービスの正式展開も開始する見込みだ。店舗数が充実すれば、選べる選択肢・スケジュールの幅が広がり、多くの人が使いやすくなるかもしれない。
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オリジナル記事:米国発「ClassPass」で世界30カ国のジムが利用可能に! フィットネスサブスク日本上陸の勝機は? | 編集部が気になる! 最新テクノロジー
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