2023年が始まり、「今年のデータ界隈に起こりそうな、またはすでに起こりつつある変化」をご紹介します。
もしかすると2023年が終わったときには「そんな変化なかった」とか、「もっと劇的な変化があった」などあるかもしれませんが、あくまで予想かつ願望を込めて、データ界隈に起こりそうな事柄についてご紹介していきます。
法律面・技術面での変化によってデータの取り扱いの難易度が上がる
毎年のことではありますが、法律面・技術面での変化は、今年も大きなトピックになるのではないかと思います。
昨年の改正個人情報保護法の施行と同様に、今年もデータ界隈では法律面での変化が国内外で起こる予定です。タイトルに挙げている内容が全てではないのですが、国内のデータに関わる企業であれば、今年特に気になるのが、電気通信事業法改正とCPRA(カリフォルニア州プライバシー権法)ではないでしょうか?
どのように対応をすれば良いか、または何をしなければいけないかなどは法律の専門家の方に聞いていただく必要がありますが、こういった法律面でのデータの取り扱いのルールの変更は、今後も毎年のように発生していくと考えられます。こういった変化が発生した際に適切に対応できる体制(プライバシーガバナンス)の構築はとても重要なテーマになるのではないかと予想します。
また、法律面以外にも、今年は多くの会社が利用しているGoogleアナリティクスがGA4にバージョンアップすることが予定されています。GA4に移行する際に利用ができなくなる機能(来店計測など)や、既存のオペレーションをGA4に移行することのハードルが高いなどの理由で頭を悩ませる企業も多いのではないでしょうか。
では、「他にどんなツールがあるのか?」「今までのKPIのうち、どのデータが取れなくなってしまうのか?」など、残り半年くらいではあるものの、まだまだ議論をしている企業も多いのではないかと思います。
それ以外にも、GAFA系の広告プラットフォームの効果が下がってきているという話を聞く機会も増えてきています。その背景には3rdパーティCookieが取れなくなり、もともと最適化に利用していた「シグナル」が取れなくなってしまっていることが原因の一つになっていると言われています。
プラットフォーム各社はシグナルを補完(ポストCookie対応)するためのAPIの提供や、それを簡易的に運用するための仕組みを提供し始めています。今まで当たり前に取れていた情報を各プラットフォームに明示的にかつ適法に送るということが、今年も引き続き重要になると思います。
コマースメディアを中心とする自社データを保有する企業の商品活用
昨年の中頃から話題に上がることが増えている「コマースメディアを中心とした自社データを活用した広告メニュー」の活用が活発化してくるのではないかと思います。
前述の法律面や技術面での規制によって、データ活用方法は近年変化が起こってきています。プライバシー保護の観点から、各社プラットフォームはデータを直接的に参照せずに分析できるデータクリーンルームのリリースを行ってきています。今後はデータを保有している企業が、自社データを活用した分析プラットフォームとして、自社データを活用した「オリジナルデータクリーンルーム」のようなサービスを提供していくことも増えるのではないかと考えています。
特にその中でもPOSデータを使ったコマースメディアの領域は国内外で活用事例が増えてきており、今年も引き続き注目される領域です。POSデータや小売自体のメディアを活用した広告配信もあれば、小売データを活用した購買のリフト分析など、マーケティング効果を測定するための活用方法にも注目が集まっています。このように、データクリーンリームを活用したサービスは今後増えていく可能性があります。
その他にも、今年は自社データを活用した広告メニューや分析基盤がリリースされていくのではないかと思っています。銀行のデータを活用した広告配信や分析はメガバンク各社が力を入れており、ニュースもたくさん出ています。また、他にもコロナ禍になって以来、デジタル上での接点が増え、データを保有し活用にシフトしていこうと考えている会社からの相談も増えてきています。
データはどんどん取得することが難しくなってきている一方、データ自体の価値は上がっていくでしょう。今年さらにこのようなデータを持っている企業が、自社データを武器にサービスを開発していくトレンドが起こるのではないかと予想しています。
「データ活用の価値」が顧客に還元される
最後は願望もこめての内容になるのですが、市場において「データ活用の価値」が顧客にも還元される1年になるのではないかと思います。
昨年、Netflixが広告ありプランを通常プランから200円値引きで提供するということが話題になりました。広告を見る代わりに200円値引きするよという内容ですが、データの視点からすると「ターゲティング広告に活用できるデータ」を「200円/月でNetflixに提供した」という風にも考えられます。
これはNetflixを利用する可処分時間(平均1日1時間程度。「女性が選ぶ『有料動画配信サービス』ランキング【2022年】」調べ)からすると割安か、割高かという議論もあるかもしれません。これにより消費者は「広告を受け取る=オプトイン」と「広告を拒否する=オプトアウト」に次ぐ、新たに「データ提供の対価を受け取る=新しい価値」という選択肢を持てるようになると思います。
よく考えてみると保険業界では「歩数データ」やその他生活のデータを、保険の契約金額に反映する仕組みはすでに取り入れられています。データ提供の対価を消費者が受け取るという考え方は、より広がっていくのではないかと思います。
これは消費者だけのメリットではなく、企業にとっても顧客に対する値引きを実質行うことができるため(もちろん、月額200円負担しても広告を見たくない!という人にはその選択肢も残される)、サービスの継続率や登録者の増加を目指すことができます。もしかしたら、値引きすることによって新規登録のCVRが増加することを考えると、顧客獲得のCPAの改善は200円を超えるものかもしれません。
ここまでの項の中でも触れてきたことですが、データはより取りづらくなり、データ自体の価値が上がっていく傾向であることは間違いありません。
一般消費者と企業の間で「データ活用の価値」が再定義されて、場合によっては広告媒体にお金を支払うよりも顧客に還元した方が中長期的な顧客との関係値がよくなるという考え方や、「データに対する対価をもらえるのであれば、データを提供したい」という消費者も増える世界が来るのではないか、少しずつそのような兆しがデータ界隈に広がっていくように思われます。
2023年末には
もしかしたら、ここに書いたことが当たり前になっているかもしれませんし、さらに進化した何かが生まれているかもしれませんが、データ界隈は今年も大きな変化を繰り返していきます。皆様と荒波を楽しんで乗り越えていければと思います。
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オリジナル記事:2023年、データ界隈で起こる大きな変化とは? | データ活用革命のヒント
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