この記事は、姉妹サイトネットショップ担当者フォーラムで公開された記事をWeb担当者Forumに転載したものです。
Googleは2022年、ユーザーが触れる情報と、商品選択に対する自信の度合いを示す「肯定度」の関係性を示す分析結果を発表した。調査結果によると、「肯定度」は将来の継続購入につながる深層心理であり、リピート購入の重要なカギとなりそうだ。Googleは、ユーザーの情報探索の特徴から「肯定度」を予測し、マーケティングのプランニングに生かすことができると指摘している。「Think with Google」で公表した分析結果をまとめた(図表は「Think with Google」から引用)。
調査概要
商品やブランドに強い愛着を持って継続購入する一方、「何となく購入し続けている」という人も多い。こうした習慣的な継続購入は、これまで顧客ロイヤリティによって説明されてきたが、実際には既存の概念だけでは説明が難しい継続購入も多くあるとし、Googleはそのメカニズムを調査した。
調査には8人の参加者が協力。参加者は、買ったモノの詳細と気持ちを日記形式で記録した。その後の2回のインタビューを通して、記録をたどりながらそれぞれの初購入・再購入に至った過程と気持ちをヒアリングした。
定性調査から浮かび上がってきた買い物行動に関する仮説は、消費財から耐久財まで10個の商材の購入経験者1人に対して定量調査を行うことで、どのくらい一般的なものなのかを確認している。
多くの商品が事前に情報を把握できる「探索財」化
Googleはこれまで実施した調査によって明らかになった生活者の買い物行動について、3つの特徴をあげている。これらは今回の一連の調査を通じても再確認できたという。
多くの商品は「経験財」から「探索財」へ
多くの商品・サービスが、直接経験しなくても事前の情報探索を通して把握できる「探索財」へと変わっているということ。従来は「経験財」(実際に購入して経験する前までは価値を知ることができない商品)だと言われていたマッサージや飲食などの商品・サービスも、他の人の口コミや評点などを見て、ある程度その技術や味を予測できるようになった。さらに、利用者による動画投稿や、ARやVRなどの最新技術を活用することで、商品・サービスに関する情報はよりリアルになりつつある。
2.購入判断に自信を持ちたい
調査結果によると、「情報探索を通じて自分の直感に自信を持ちたい」「頼れる商品やブランドを探したい」という心理が強いことが判明。定性調査でも「信頼できる情報が自然と入ってくるように情報源を整理する」「全体像を把握して自分の判断軸を確立する」といった行動が見えたとしている。
3.消費者は継続購入で買い物疲れを最適化
ECと流通の充実によって買い物に関する情報と選択肢が増えて便利になった一方で、疲労を感じるようにもなっている。このため、「信じる商品を継続購入する」という心理と行動は、生活者が買い物にかかる負担を最適化した結果であるという。
継続購入のカギは顧客の「肯定度」
直感による買い物が増えている今日。 Googleは初回購入にもかかわらず商品・サービス体験前から強い自信を持って購入している人が一定数存在し差があることに着目すると同時に、直感による選択を「情報を通して肯定する」ことと理解する必要があると指摘。この選択に対する自信の強度を「肯定度」という造語で表現し、この「肯定度」が商品と生活者との長期的な関係性を理解するための手がかりになることがわかったという。
調査結果によると、「肯定度」が高い買い物では、購入後の商品・サービスの利用体験を向上させることがわかった。これは、選択に対する自信が、実際に商品の満足度に影響を与えているのだ。
「肯定度」を高めるプロセスは、自分が直感で決めた商品・サービスに関して情報を収集、本当にこれでよいか再確認し自信を強める行動。「肯定度」が高い購入は、そのような体験を通したため、買った後の利用でも満足することが多いという。
Googleによると近年、行動経済学の研究により事前に接した情報が、その後の行動や態度に強く影響を与えることが証明されているという。あらゆるカテゴリで事前の情報探索が可能になっている今日、このような効果は買い物全体においてより発生しやすくなっているようだ。
リピーター育成の明暗は初回購入前から
Googleが分析を進めたところ、次回購入の意向は、初回購入前の情報接触によって醸成される「肯定度」と関係しているという。
商品のカテゴリによって差はあるものの、「肯定度」が比較的高い場合、次回購入意向も高まる可能性がある。たとえば、あまり自信のない買い物、衝動買い後の後悔などでは、次に同じ商品を購入するケースは低い。次回購入意向は、購入前の「肯定度」が高いときこそ促進されるとしている。
商品利用は五感を通して感じるため、一種の情報探索の過程として捉えることができる。その体験が満足できるものであれば、商品に対する「肯定度」は高まる。そして、次回購入につながり、肯定度が受け継がれる――。Googleは、継続購入は高い「肯定度」が呼び起こす連鎖反応によって形成されると推測している。
「肯定度」 はLTVの最大化に寄与
情報探索と「肯定度」の視点を持つことで、購買行動やデジタルマーケティングにおけるコンバージョンを、散らばっている無数の点ではなく、つながった線として分析できるようになるという。
情報接触によって選択した商品に対する「肯定度」が変化する視点、また「肯定度」が購入後の心理にも影響を与えているという発見から、購入前後の生活者に対してどのようなコミュニケーションが有効なのかを考えることは、初回購入者からF2・F3転換といったリピート購入者になってもらうための施策にもつながると指摘する。
「肯定度」を高める情報探索は「自ら探し求めにいった情報」
Googleは、情報探索が「肯定度」の醸成にどのように関係しているのかを調べたところ、意図せず触れる情報よりも、自ら探し求めにいった情報から大きく影響を受けていたことがわかった。
特に「自分で検索して見つけた情報」「自分から店舗に見に行った実際の商品」「自分から質問・相談した家族・友人・知人のクチコミ」などにその傾向が強く出ているという。
「肯定度」を高める情報探索行動の特徴とは
具体的にどのような情報探索が「肯定度」を高めるか理解するため、「肯定度」を高める代表的な情報経路である「自分で検索して見つけた情報」について分析を通じて探った。
今回の調査パートナー企業の1社であるヴァリューズは、事前のアンケート調査を通して、4万人の中からシャンプー、サプリ、自動車を購入した生活者1500人を選定。具体的な情報探索行動を分析した。そのうち20人に対しては、購入前の「肯定度」が高かった生活者、低かった生活者を分類し、購入前の数か月間にわたって情報探索の特徴を分析した。その結果、購入前の「肯定度」が高い・低い購入では、情報探索の仕方にも差があった。
具体的な検索キーワードは 「肯定度」が高い
初回購入前の「肯定度」が高い場合は、低い場合よりも検索キーワードが具体的だった。つまり、商品に求める価値が明確で、それを満たしているのかを検索で確かめていることがわかる。こうした検索行動は、特に日用品で目立った。
一方、初回購入前の「肯定度」が低かった場合は検索キーワードが単純で、商品名だけになっていることが多かった。自分にとっての価値がわからなかったり、うまく言語化できないという背景が想像できる。
ネガティブな情報も検索する
選択した商品に関してあえてネガティブな情報を調べるような検索も行っている。ネガティブな検索をしていてもそれを打ち消すような記事に遷移していることもある。
先に不安を解消、あるいは自身で期待値をコントロールしようとしたりする動きと考えられる。
気になるページは何度も閲覧
選択した商品に関連するページは、何度も検索、閲覧する行動があった。情報探索を通していろいろな情報に接するなかで気持ちが揺れた時に、自身が拠り所とする情報を再確認したいという目的があると分析している。
また、時間をおいても自分の気持ちが変わらないことを確かめたり、自分の気持ちを後押ししたりするといった意味合いもあるようだ。
「肯定度」の度合いは情報探索量から把握しよう
「肯定度」の状態によって情報収集積極性にも差があることもわかった。「肯定度」が低い状態では積極的に調べ、「肯定度」が高い状態では調べなくなる傾向がある。
自社商品に関連する意図的な情報収集がどれくらい行われているかを把握することで、既存顧客と潜在顧客の「肯定度」やブランドスイッチの可能性を予測できるとしている。
Googleは情報を集めると選んだ商品に対する「肯定度」が高まり、購入または再購入につながりやすいと説明。「肯定度」が高いと、自分の選択に自信がある、あるいは行動が正しいと思いたい状態にあるためとしている。
一方、「肯定度」が下がってくると、自信を維持するために第三者の肯定的な情報を収集したり、自信を持てる他の選択肢を探し始めるという。
「肯定度」維持には、飽きさせないアップデートを
ユーザーの「肯定度」は、さまざまな情報からも影響を受けている。40個の商品カテゴリの購入者に関する定量調査で、各カテゴリの初回購入時と継続購入時の「肯定度」を分析したところ、購入スパンが短く購入頻度が高い商品カテゴリでは、初回購入時よりも継続購入時に「肯定度」が高くなっていたという。
逆に、家電など購入スパンが長く、購入頻度が低い一部の商品カテゴリでは、継続購入時の「肯定度」が初回購入の時と大きく変わっていない。
Googleは、選択した商品に関して新しい情報に接することがない状態が続くと、「肯定度」が下がると解釈し、「飽きる」という感覚に近いと分析。家電のように次の商品検討までの期間が長い商品の場合、新たな情報に触れることが少ないため、当初の肯定度は次の購入時までに減衰してしまうとした。
そのため、「肯定度」が高く情報収集に消極的な既存顧客に継続購入を促すには、「肯定度」を維持させるための企業からのコミュニケーションがより重要になってくるとしている。
また、日用品のように購入周期が短いカテゴリでブランドスイッチを狙いたい場合は、そのカテゴリに対して積極的に情報を発信し、生活者の自発的な検索や情報に触れる機会が増えるようにする必要があるという。
一方、購入周期が長いカテゴリでは、「肯定度」をいかに維持させるかが重要だと指摘。車や家電のようにハードウエアの買い替えサイクルが長い商品でも、ソフトウエアの更新による定期的な改善などを通じて、初回購入時の「肯定度」を長く維持させることが可能かもしれないとしている。
オリジナル記事はこちら:なぜユーザーはリピート購入するのか? Googleの調査から見えた継続購入の深層心理 「カギは肯定度」(2023/01/18)
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オリジナル記事:なぜユーザーはリピート購入するのか? Googleの調査から見えた継続購入の深層心理 「カギは肯定度」 | ネットショップ担当者フォーラム 特選記事
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