検索エンジンは常に進化しているため、SEOも絶えず変化している。競争上の優位性を見出すのに役立つのが、セマンティックSEO施策だ。検索エンジンが会話型のクエリに適応して最適な結果を提供するよう変化していくのと同様に、君のウェブコンテンツも適応する必要がある。原則を理解すれば、どのようなニッチ分野にもセマンティックSEOを適用できる。
この記事では、前中後編の全3編に分けて、さまざまなタイプのサイトで成果があったセマンティックSEO戦略の概要を示すとともに、その結果について考察する。
今回の前編では、次のことを解説する:
セマンティック検索の仕組み
セマンティック検索の利点
セマンティックコンテンツとは
EコマースのSEOを改善するセマンティック検索の施策
最初にセマンティック検索とコンテンツについて詳しく知ってから、Eコマースでの施策やヒントをいくつか見ていこう。
セマンティック検索の仕組み
冒頭でも述べたが、「セマンティック検索とは、ユーザーの意図や言葉を理解して、ユーザーのクエリに最適な結果を提供するもの」だ(対比する概念は「キーワード検索」だと考えるとわかりやすい)。検索エンジンは機械学習と人工知能(AI)を通じて、単語やフレーズのセマンティクス(意味)とその相互の関連性に対する理解を深めている。グーグルはエンティティやトピックを理解し、ナレッジグラフを使ってそれらをグループ化している。
これは、検索アルゴリズムが初期に使っていたキーワードマッチよりはるかに洗練されたアプローチだ。今日、検索エンジンの用いるセマンティック検索は、絶えず言語に関する理解を深めている。それによって、いかなるクエリを与えられても最も関連性が高い有益な結果を提供できるようになってきている。
そのため、セマンティック検索に適応するには、検索意図やユーザーに表示されるコンテンツの意図を正しく認識する必要があるのだ。
セマンティック検索の利点
セマンティック検索の利点はたくさんある。ユーザーと検索エンジンそれぞれにとっての利点は次のとおりだ:
表示される検索結果の品質が向上するため、検索エンジンを使うユーザーの体験が向上する。
必要な情報をより素早く得られ、次の質問をする前に答えが得られることもある。
検索するデバイスや方法を変えても、適切な結果が得られる。
スマートフォンやスマートホームといったデバイスからの(多くは音声検索による)会話型検索クエリの増加に対応できる。
ユーザーに役立つサービスを提供すれば、一般消費者が検索エンジンを使う可能性がさらに高まり、人間の言葉を学習するデータが得られる
セマンティックコンテンツとは
言語学で「意味論=セマンティクス(semantics)」とは、「意味(semantic)」を研究することを表す。つまり、「セマンティックコンテンツ」とは、単語、フレーズ、文章を使って特定の意味を持つテキストを構成しようとするものだ。
コンテンツを「セマンティックコンテンツ」とする目的は、次の点にある:
単語、フレーズ、概念、文章の関連性を利用し、特定のトピックについて本当に価値のあるリソースを生み出すこと
つまり、文章の構造からページ全体の構成まで、コンテンツのありとあらゆる細部に気を配る必要がある。
もう少し簡単に言うと、こういうことだ:
人間にとってわかりやすいように書き、言語的なルールに従うこと
明確で簡潔、かつ読みやすい文章でなければならない
意味的に関連するキーワードを使うこと
トピックをコンテキスト化すること
不要な単語は削除すること
複雑な言葉や難解な文章は不要だが、掘り下げたコンテンツは必要
これらはSEOで検索結果の上位に表示させたいコンテンツを作成する場合に重要となる。検索エンジンは自然言語処理(NLP)を利用してコンテンツを理解しており、このプロセスではユーザーが使う単語や単語同士の関連性を評価している。
EコマースのSEOを改善するセマンティック施策
ここまでセマンティック検索や、「セマンティック」という言葉の意味について解説してきた。では、セマンティックの本質が「言葉」にあるとすれば、製品の販売にセマンティックをどう適用できるのだろうか? あるいは、「言葉」はジャーナリストや出版社、ブログサイトだけのものなのだろうか? いいや、セマンティックSEOは、あらゆるウェブサイトのあらゆるウェブページにとって重要なものだ。
Eコマースサイトを運営しているからといって、セマンティックSEOは自分には不要だと判断してはならない。むしろ、EコマースにセマンティックSEOは非常に効果的だ。たとえば、カテゴリや製品、ランディングページの文章を書くときも、次のようなことを考慮する必要がある:
- フレーズベースのインデックス作成
- Googleの自然言語処理に対応した文章
- コンテンツの構造
- 読みやすさ
EコマースのセマンティックSEOで考えるべきことには次のようなものがある:
カテゴリページや製品ページのコンテンツを見直す
キーワードクラスタとカテゴリページを調査する
補助コンテンツの調査と計画
サイト内リンク
スキーママークアップや構造化データを適用する
高い品質と有用性を維持する
それぞれについて解説していこう。
1. カテゴリページや製品ページのコンテンツを見直す
セマンティックSEOでは、すべてのコンテンツが次の状態であることが必須だ:
- ユニーク(独自)である
- 有益かつ詳細にわたっている
- しっかりとした構成になっている
- 最高の品質である
製品に関するエンティティを調査して、関連するカテゴリ、サブカテゴリ、製品ページに含めよう。
そして、ユーザーと検索エンジンに対して「製品や製品群に関する詳細な情報」を提供しよう。製品のメリットや主なセールスポイントを検討してほしい。これらはすべてユーザー体験だけでなく検索エンジンにも役立つため、オーディエンスを念頭に置き、目的に合わせた文章にしよう。
私があるEコマースのクライアントと仕事をしたときは、200以上のカテゴリ、サブカテゴリ、製品、情報ページで、NLPのキーワードとエンティティに焦点を当ててセマンティックコンテンツを作成した。パフォーマンスの高いコンテンツを作るために重点を置いたことは次のようなものだった:
- 基本的な検索キーワードの調査
- コンテンツの構造
- 共起性
- エンティティ
- 同義語
- キーワード間の関連性
この方法で最適化した英国のドアメーカーExpress Doors Directというサイトのサブカテゴリページを例として挙げる。
このブランドは、1年間で次の結果が得られた:
ブログ以外のオーガニック検索セッションが495.97%増加
オーガニック検索でのトランザクションが365.58%増加
オーガニック検索での売り上げが415.30%増加
2. キーワードクラスタとカテゴリページを調査する
キーワードギャップ分析で2つ以上の競合他社とのキーワードの順位を比較して、最も近い競合相手と自分のEコマースサイトを比較する。そうすると、自分たちのサイトで上位に表示されていない分野がわかる。この情報を使って、どんなカテゴリとサブカテゴリを作成するか戦略を立てる。
キーワードギャップ分析によって、ユーザーのニーズを満たすページがない特定のトピックに関するキーワード群が見つかる可能性が高いため、必要なページを作成できる。
これには、次のような例が挙げられる:
製品を別の方法でグループ化する(たとえば、素材別ではなく、色別やスタイル別に分類できる)
自分のサイトにない補助ガイドを作成する
今は販売していないが、取り扱える可能性がある商品を検討する
キーワードギャップ分析によってわかった「競合は上位で自社が上位になっていないトピック」を検討し、このトピックに関係するキーワード群を分類する。このキーワード群を元にして、新しいウェブサイトページの計画を立てよう。
キーワード群に応じて複数の製品を1ページにまとめたら、コンセプトやアイデアを組み合わせて、全体のトピックをコンテキスト化しながら、文章を丁寧に書いてほしい。
あるクライアントの例では、最大のキーワードギャップの1つを解消するための鍵となるページを追加したところ、検索順位とトラフィックが急上昇した。全体として、検索上位を取れるユニークキーワードバリエーション数は我々がセマンティックアプローチを始めてから約79%増加した。
検索表示順位1位に表示されたキーワード数も、セマンティックアプローチを取り入れてからは約627%増加という驚異的な伸びを示している。
このように、複数のキーワード群に対応することで、より多くの検索トラフィックを獲得し、さまざまな方法で買い物をすることが多い顧客を大いに支援できるのだ。
3. サポートコンテンツの調査と計画
製品に関するよくある質問やガイドを中心に、ウェブサイト訪問者のニーズに合わせたコンテンツを作成しよう。これらのコンテンツは、ブログやリソースセクションに含めるのではなく、サポートするカテゴリや製品ページに追加しよう。
セマンティックSEOの本質は関連性にあり、それは1つのページや1つのコンテンツで使われるキーワードにとどまらない。ページやトピックをどのようにまとめてクラスタ化するのかも含まれている。製品を販売するだけでなく、その製品に関する専門的なアドバイスを数多く提供していることを示せば、特定のトピックに関する権威性を示すことになるのだ。
4. サイト内リンク
ページ内やページ間のセマンティックな関係を利用することを検討しよう。相互に強い関連性をもつ一連の優れたページを使えば、非常に強力なリソースを構築できる。これを正しく行うには、明確なサイト内リンク戦略をもちいることだ。
特に、主要なカテゴリページをハブの中心(柱となるページ)とするハブアンドスポークのアプローチは効果的だ。私たちのクライアントである大手Eコマース企業は、1年間でハブコンテンツによるアシストコンバージョンとラストクリックコンバージョンが売り上げの2%近くを占めた。大きな割合ではないように思われるかもしれないが、総売り上げ高が大きければ、2%上乗せされるだけでも、かなりの金額になる。
次に示すのは、洗濯機のカテゴリページを中心に、洗濯機に関するヘルプやアドバイスをまとめたAppliance Cityのハブアンドスポーク戦略の例だ。
5. スキーママークアップや構造化データを適用する
スキーママークアップや構造化データを使って、製品やFAQなど、特定のページがはっきりわかるようにしよう。これらがセマンティックマークアップとも呼ばれるのには理由があるのだ。スキーママークアップや構造化データを活用することにより、さらなるレベルの情報が加わり、検索エンジンにコンテンツをよく理解してもらえやすくなる。
たとえば、次の画像では、検索結果に英国の小売業者CurrysとArgosの商品の価格、画像、レビューが表示されている。
構造化データを追加すると、Googleがコンテンツを整理してから組み立てなおして表示するよう後押しできるので、文章の他に画像やレビューが入ったリッチスニペットを生成するのに役立つ。SERPでさらに大きく表示される可能性が高まり、結果としてより質の高いトラフィックを生成できる。
6. 高い品質と有用性を維持する
優れた品質のセマンティックコンテンツでパフォーマンスを高めても、その後にユーザーの役に立たない中身の薄いコンテンツや、ひどい文章のコンテンツを量産してしまうと、パフォーマンスが下がることもある。
Googleのヘルプフルコンテンツアップデートに関する最新のドキュメントでは、次のように明言されている。
有用でないコンテンツ自体だけでなく、そうしたコンテンツを比較的多く含むと判断されたサイトにあるコンテンツも、表示すべきコンテンツがウェブの他の場所にあると考えられ、検索での掲載順位が下がります。そのため、有用でないコンテンツを削除することで、他のコンテンツのランキングが改善する場合があります。
※出典 Google
このことから、たとえ素晴らしいコンテンツを作成しても、ウェブサイトの中で高品質なコンテンツのページが十分になければ、苦戦を強いられることがわかる。
人気のEコマースサイトを運営して多くの新商品を追加していると、内容の薄いコンテンツやひどい文章のコンテンツ、重複コンテンツがあっても見落としてしまいがちだ。しかし、そうするとせっかくの成果が台無しにしてしまうかもしれない。
私はEコマースのクライアントと仕事をしてきて、こうした事態を見てきた。重要なページを変更していないのに、全体のパフォーマンスが下がってしまうケースだ。しかし、データをよく調べてみると、サイト内の商品に低品質で雑な説明文が大量に追加されていることがよくあった。
これがウェブサイト全体のコンテンツの品質に影響を与え、バランスを崩してしまった可能性が高い。もしこれらの説明文が、
- エンティティ
- 関連フレーズ
- 優れた構造
といったセマンティックSEOへのアプローチを考慮して丁寧に書かれていたら、新商品の追加は主要なページへマイナスの影響を与えず、むしろサイト全体への効果は高まっていたかもしれない。
重要なのは、セマンティック検索(とユーザー)のために、より高品質なコンテンツを作成できるようになったら、それを維持することだ。一貫性が鍵だ。可能なら、サイトに公開するすべての新規ページについて計画を立て、限られた時間の中で最大限良いものを作るようにしよう。
この記事は、前中後編の3回に分けてお届けする。セマンティックSEOの概要と、Eコマースサイトに適用する場合について説明した。中編となる次回は、「B2Bサービス業界やクリエイティブ業界」「家庭用品やDIY分野」におけるセマンティックSEOについて説明する。
(中編は2/20公開予定)
※このコンテンツはWebサイト「Web担当者Forum - 企業Webサイトとマーケティングの実践情報サイト - SEO・アクセス解析・SNS・UX・CMSなど」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:【セマンティックSEO】基本的な考え方とEコマースでのアプローチ(前編) | Moz - SEOとインバウンドマーケティングの実践情報
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