「フォロワー数が倍増した!」「インプレッション数が300万を超えた!」ついつい数字だけに目がいってしまいがちなSNSの効果測定。アナリティクスの数値は伸びているけれど、「それが自社のビジネスにどう貢献しているのか」を正しく理解できていないSNS運用担当者は多いのではないだろうか。
「デジタルマーケターズサミット 2023 Winter」では、株式会社ウェブタイガー代表取締役であり、SNSマネージャー養成講座代表の田村憲孝氏が登壇。ビジネスで成果を示すSNS分析の方法と手順を解説した。
フォロワー数の増加は仕事にどう役立つの? と聞かれたら
田村氏は2010年よりSNSコンサルタントとして活動し、数多くの企業や地方自治体のソーシャルメディア運用・IT活用をサポートしてきた。そんな中、「フォロワーやインプレッションが多いのはわかったけど、それがどう自社のメリットになっているの?」が問題になるケースは多かったという。
かつて、Twitter運用の見本とされていたような影響力の強い企業アカウントですら、『事業の役に立っていない』と言われて運用を停止してしまったという事例があります。『役に立たない』と思われてしまうと、その意見を押し戻すのは難しい。そうならないためにも、正しく分析画面を見て、目的にあった運用をすることが大切です(田村氏)
このセッションでは、次の3つのテーマについて解説された。
- 何のために分析するのか?
- 運用目的と目標値の連動
- 関係者への情報共有
1. 何のために分析するのか?
まず、そもそも何のためにSNS分析を行うのか。田村氏は「運用しているSNSアカウントが、いかに自社のビジネスに貢献しているかを計測するため」だと語る。
当たり前の答えだと思うかもしれませんが、現場では数字の増減だけ見て、“上手に運用しているかどうか”を判断しているケースが少なくありません。SNS運用が上手いかどうかではなく、会社にどういうメリットがあるかという軸で分析する必要があります(田村氏)
では、どういう状態であれば「ビジネスに貢献できている」と言えるのだろうか。例として、田村氏はいくつかのパターンを紹介した。
「SNSから販売サイトに誘導し、売り上げにつながっている」「実店舗に誘導できている」という状態。一番わかりやすいが達成も難しく、これを目的とする場合は、広告出稿を推奨することが多いという。
「オンラインでのコミュニケーションを活性化し、顧客との日常的な接触ポイントを確保できている」という状態。直販を行わないメーカーの場合でも、SNSによって顧客と直接やり取りすることで、親密度の向上や商品の想起を促すことができる。
「ユーザーが自社の商品やサービスについて言及してくれるようになり、認知度が向上している」という状態。ユーザーの自発的な発信によって知名度が上がっているような場合を指す。
上記以外にも、企業が置かれている状況によって、理想とする形はさまざまだ。「ただ単にSNSをやっている」ではなく、「ビジネスにSNSを活用している」ことを示すために、まずは事業に合った目的を設定する必要がある。
その上で行うのが、「目的と連動した指標の設定」だ。フォロワー数が多ければいいのか? エンゲージメント率が高ければいいのか? 目的の達成のために、分析画面のどの項目を見ればいいのか? を明らかにする。
大切なのは、まず運用の目的を設定すること、そしてどの指標に重点を置くのかを決めることです。その指標が改善するほど、目的が達成されている=自社のビジネスに貢献していると示すことができます(田村氏)
2. 運用目的と目標値の連動
ここからは、目的に応じた指標の設定について紹介する。「運用の目的」によって、分析画面で見るべき項目は違うという。田村氏は、目的を大きく3つに分けた。
目的①「認知拡大」の場合
まず、目的を「認知拡大=とにかく多くの人に知ってもらうこと」に設定した場合。見るべき指標は次の2つだ。
たとえば、Instagramの分析データ画面では、「過去90日間」「それ以前の90日間」のリーチ数を比較できる。また、「メディアタイプごとの投稿のリーチ中央値」「コンテンツフォーマットごとのリーチ中央値」からは、どのような投稿がリーチを獲得しやすいのかがわかる。このように、投稿ごとに分析データを確認し、リーチが伸びやすい動画やリールなどに内容を寄せていくことが可能だ。
また、言及数については「Yahoo! リアルタイム検索」で調べるとよい。「SNSマネージャー」などのキーワードを指定して検索すると、その単語を含むツイートが表示される。重要なのが右側の「ツイート数の推移」だ。言及数が多い時に何が起こったのか(新製品リリース、メディアの露出など)に注目し、今後の運用方針に活かすことができる。
目的②「ユーザーとの接点確保」の場合
次に、「ユーザーとの接点確保(コミュニケーション)」を目的にした場合。見るべき指標は「エンゲージメント数」となる。これはSNS上で発生している交流の数のことで、コメントやいいね、引用リツイートなどが含まれる。数だけでなく、発言内容についても必ずチェックするべきだという。
店舗のアカウントに、お客さんからのポジティブなコメントが入った場合、ただ“コメント数1”とカウントするのではなく、コメントをキャプチャして現場の皆さんに共有してください。現場のモチベーションが上がるので、よいスパイラルを生みます(田村氏)
なお、オフラインでの「リアルな施策」も重要だと田村氏は指摘する。飲食店であれば、店内に店名がわかるものを置いておくと効果的だ。SNSアカウントのQRコードやハッシュタグを卓上ポップで示すだけで、顧客は店名をSNSに投稿しやすくなる。直接話す機会があれば、「ぜひフォローしてください」と言葉で伝えるのもよいだろう。
目的③「販売・集客」の場合
最後に、「販売・集客」が目的の場合。見るべき指標は「リンクのクリック数」だ。ECサイトの商品ページやお店に誘導するリンクがどれだけクリックされているかを評価する。
最近はFacebookやInstagramのショップ機能も充実しており、SNS内で販売ができます。販売コンテンツがどれくらい見られているかも、販売・集客の指標になるでしょう(田村氏)
上記を整理すると、目的に合わせた指標は次のようになる。
目的 | 指標 |
---|
①認知拡大 | 閲覧数・言及数 |
②ユーザーとの接点確保 | エンゲージメント数 |
③販売・集客 | リンククリック数 |
ただし、「目的に合わせたメイン指標以外の数値を無視していいわけではない」と田村氏は語る。認知拡大のために閲覧数を上げるには、もちろんフォロワー数が関係する。また、リンクのクリック数を増やすには、普段からエンゲージメントを高めておく必要がある。
今はどのSNSも、普段からいいねやコメントをしているアカウントが表示されやすくなるというアルゴリズムになっています。そこで、目的とした指標を上げるために関連する指標を分析して、サブKPIを設定するようにしてください。見るべきポイントは多いですが、一番大切なことは、本来の目的とメインの指標・数値を見失わないことです(田村氏)
3. 関係者への情報共有
SNS分析においてもう一つ重要なのが、「関係者への情報共有」だ。SNS運用チーム内だけではなく、関係者にも成果を共有する必要がある。田村氏は、運用開始時の運用企画書や毎月のレポートにおいて、必ず目的と目標値を確認するようにしているという。
上図は「SNSマネージャー養成講座」のSNSアカウント運用にあたって、田村氏が作成した運用企画書だ。この場合は「認知度向上」を目的として、現状の数値とKPI(目標値)を明確に記載している。
なお、運用企画書では上の10項目を整理して記載するという。ターゲットとなるユーザー層や炎上等の緊急時の対応など、細かく設定できるとなおよい。田村氏は、「各項目の詳細まで詰めることができなくても、運用目的とKPIだけは必ず明確にしておいてほしい」と強調した。
SNSの効果測定は、数字の増減を眺めているだけでは始まらない。田村氏は講演のまとめとして、「まずは、SNS運用は自社のビジネスにどう役に立っているの? という視点をしっかりと持ってください。その上で、運用目的と目標値が連動している仕組みを作ることが大切です。また、設定した目的と指標については、ぜひ全社に共有するようにしてください」と語り、セッションを締めくくった。
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オリジナル記事:「SNS運用って本当に役に立ってるの?」とは言わせない! ビジネスで成果を示すSNS分析とは | 【レポート】デジタルマーケターズサミット2023 Winter
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