2022年4月に改正個人情報保護法が施行、2024年にはGoogleがサードパーティクッキーを廃止する予定で、従来デジタルマーケティングで活用されてきたクッキーを規制する「クッキーレス」の動きが加速している。この流れを受け、ファーストパーティデータの重要度が高まっているが、マーケティングに活用できるほどのデータ量を自社で確保するのは、決して容易ではない。
そうしたときに頼りになるのが、すでに膨大なデータを有する企業だ。共通ポイント「Ponta」を運営するロイヤリティ マーケティングは、1億人超の消費者データを活用し、個人を特定せずに人を捉える広告配信サービス「Ponta Ads」を提供している。
今回は、Pontaのファーストパーティデータを生かしたマーケティング事業の取り組みや事例について、小河貴裕氏に話を聞いた。
共通ポイント「Ponta」が持つ1億人超のデータとは?
「Ponta」は、全国のローソンをはじめとした実店舗からインターネットサービス、電力や交通、通信などの生活インフラまで、さまざまな業界と提携している。会員数・ネットワークは、膨大なボリュームを有する:
- 会員数: 1億1,378万人(2023年7月末)
- 提携社数:145社・198ブランド(2023年8月1日)
- 提携店舗数:28万店舗(2023年4月1日)
他社の共通ポイントは、通信キャリアやECサイトなど各々が持つ経済圏から派生したものが多い。一方「Ponta」は、ローソンやゲオ、昭和シェルなど異なる業界の企業が参画して立ち上がったポイントサービスとなっている。なにかしらの経済圏をベースにしたものではないため、偏りなく消費者の行動を捉えたデータを収集できるのが特徴だ。
自社でデータを持つ場合、自社領域のデータに限られてしまいます。たとえば、金融業の企業では日常の消費に関する情報を取得するのはむずかしいでしょう。しかしPontaなら、Ponta IDの会員情報を基軸に、ライフスタイルに関するデータや28万店舗ある提携社での購買・行動データなどまで併せ持っています(小河氏)
「Ponta」の3つのマーケティングサービス
ロイヤリティ マーケティングが提供するマーケティングサービスは、主に次の3つに分類される:
- プロモーション(広告・集客)
- リサーチ(アンケート調査)
- アナリティクス(データ分析・コンサル)
「プロモーション」では、幅広いチャネルを提供できるのが強みだ。たとえばPonta IDと連携している消費者のLINEアカウントは5,200万もある。それだけでなく、次のような大手プラットフォームのアカウントとも連携している:
- Facebook・Instagram:2,600万
- Google Ads:2,300万
- YouTube:2,100万
- Twitter(現 X):850万
またPontaのオウンドメディアとして、次の3つのコンタクトポイントも持っている:
- Ponta DM(郵送):6,100万
- メルマガ:2,030万
- アプリ:1,000万
1億人超の消費者データがあるだけでなく、さまざまなSNSやメディアとも接続しているボリューム感も他社にはないスケールだと思っています。ほかにも、200万人のアンケート回答会員を有していたりと、購買データと組み合わせてさまざまなプロモーションや分析が実現可能です(小河氏)
オンライン/オフラインの分断を解決
続いて、「Ponta」の購買データを活用したデジタル広告配信の事例を見ていこう。
一般的に、デジタル広告とリアル店舗をまたぐプロモーションでは、広告接触者がリアル店舗で購入したかどうかを測定できず、広告配信の効果を正確には把握できない。
これまでは、広告配信期間に店舗の売上が伸びた場合『広告を見たかどうかわからないけど、配信中は反応がよかった』などと、ザックリとした結果しか見えませんでした。しかし弊社のサービスである『Ponta Ads』なら、オンラインとオフラインのデータをシームレスに連携できるので『配信した広告を見た人の購買率が変わった』など、広告による購買効果を測定できます(小河氏)
「Ponta Ads」では、Pontaの購買データによりターゲティングを行い、Ponta IDと連携しているプラットフォームに広告を配信する。そして広告に接触した人が、提携社のリアル店舗で対象の商品を購買したかどうかまで測定できる。広告の効果であることを鮮明にするために、広告配信リストからあえて「広告非接触群」を用意し、「広告接触群」と「広告非接触群」の購買率の差を比較する手法も用意している。
さらに「Ponta Ads」なら、「逆引き分析」も可能だ。一般的な広告配信では、最初に配信セグメントを設定し、効果検証はセグメントごとに分析を行う。しかしこのやり方では、セグメントの相対比較しかできず、「実はより効果のあるセグメントがあったのでは?」という疑問が生まれてしまう。
そこで配信後に自由なグルーピングを行うことで、効果の高いターゲットを発掘するというわけだ。
たとえば、書店・コンビニ・スーパー・飲食店など、複数のPonta提携社を横断した大型キャンペーンをみてみよう。このキャンペーンでは、デジタル広告に接触して、実際にリアル書店で購入した人はどんなユーザーかを分析した。
その結果、リアル書店での購買率が高かったユーザーは、Ponta経済圏で電子書籍の購買経験があったという。さらに、リアル書店で購買するユーザーは「習い事(語学+ビジネス資格)」にも興味関心が高いことがわかった。
逆引き分析なら、とりあえず全体に広告配信をしたあとに、さまざまな軸で結果を分析できます。それにより、選定したターゲットに関係なく、後から好反応のユーザーを発見できます。これは配信先が多い“Ponta Ads”ならではでしょう。
ユーザーのアクションから、次の打ち手を導き出せるので、PDCAを回すシナリオの自由度が高くなります。リアル店舗の購買データを使った広告配信や逆引き分析は、これまであまりない方法ですので、企業のマーケティング担当者にとってもおもしろさがあると思います(小河氏)
Ponta提携社以外にもデータ活用支援を行う
ロイヤリティ マーケティングは2022年11月、阪急阪神百貨店などを傘下にもつエイチ・ツー・オー リテイリングとデータマーケティングの協業を開始した。
これは、クライアントが自社の会員データや購買データなどを活用するにあたって、ロイヤリティ マーケティングが、データ分析や広告配信などの支援を行うものだ。今後、自社データの活用に課題を感じている企業のデータマーケティング支援を行っていくという。場合によっては、「Ponta」データとも連携が可能となる。
これまでPonta Adsでは2,000件以上の受注実績があります。弊社が持つデータとノウハウも、マーケティングに活用していただく価値はあると思います。また広告配信やデータ分析だけでなく、アナリストの育成支援も行っていきます(小河氏)
クッキーレス時代でも、ファーストパーティデータを持つ企業をうまく活用すれば、消費者の購買行動をデータで捉えることはできる。今後のデジタルマーケティング戦略の1つとして考えてみるのもいいだろう。
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オリジナル記事:“Ponta”はポイントだけじゃない! 1億人超のデータでリアル×デジタルを横断した広告効果測定
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