「マーケティング」をひと言で定義するのは難しい。業種、職種、担当する業務などによって捉え方に差や幅があるためだ。しかし、その本質へと目を向ければ、「データを収集・分析し、課題や仮説を明らかにしていくプロセスは、マーケティングには欠かせないもの」と、SATORIの北村氏は語る。
「デジタルマーケターズサミット 2022 Summer」のセッションでは、BtoBマーケティングの強化を前提として、マーケティングの基本となる考え方やマーケティングプロセスの進め方、マーケティングオートメーション(MA)ツールについての基礎を解説した。
さまざまな意味合いを持つ「マーケティング」の本質とは
ビジネスにおいて、マーケティングの重要性は共通認識として広く定着しているだろう。しかし「この商品のマーケティング活動を始めてください」といわれても、何から着手すればいいか迷ってしまう人は意外と多いのではないだろうか。これは、「マーケティングという言葉にはさまざまな解釈があるからだ」と北村氏は指摘する。
識者によるマーケティングの定義はいくつもあるが、ざっくりまとめると「自然と売れていくための仕組みづくりすべて」だと北村氏は考えている。具体的に挙げてみよう。
- 市場の「調査」
- 販売方法の「企画」
- 商材の「提供」
- 商材の「宣伝」
- 商材を売るための仕組みの「運用」かつ、これらを「改善」していくこと
これらすべてを実施し、顧客のニーズに応えて利益をあげる仕組みづくりを行うことがマーケティングだ。
企業目線ではなく顧客目線で考える
では、マーケティングの思考を駆使して自社の商材を売るためにはどうすればいいのか、具体的な例で考えてみよう。
たとえば、洋菓子店で自信作のケーキがあるとする。その告知・宣伝として「金賞を受賞」「手間暇かけて作っています」などと伝えるのは、よくあるコピーだ。ただし、これでは金賞の価値が伝わらなかったり、買う側の価値にはならなかったりする。
これは企業目線で商材の価値を伝えているだけで、『このケーキはすごいんだよ、買ったほうがいいよ』と自己アピールしているに過ぎない。これではなかなか売れない(北村氏)
自己アピールに止まらず、売れる状態を作るには、顧客のニーズ(必要性)を満たす価値を提供すればよい。つまり、企業目線ではなく顧客目線で考えるということだ。
どのようなケーキなら買ってくれるのかを考える前に、そもそもなぜケーキを食べるのか考えてみよう。このとき、「なぜ食べるのか」と同時に「食べた結果どうなりたいのか」も考える。たとえば以下の図のようなことが考えられる。
顧客は「価値」と「体験」を購入する
上図の、なぜ食べるのかは「価値」、食べた結果どうなりたいかは「体験」を示している。つまり、顧客は「商材そのもの」を買っているのではなく、商材から得られる「価値」と「体験」を買っているのだ。
これを踏まえて、「価値と体験を感じられる」ようにケーキのキャッチコピーを、顧客目線で修正してみよう。
- 金賞を受賞!
- フランス料理界の最高賞を受賞
- 日本ではこの店だけが唯一獲得
- 手間暇かけて作っています!
- わたあめのようなふわふわ食感を実現
- 糖質を抑えつつ甘さを損なわない製法
- 無添加素材にこだわっている
ケーキの価値、食べて得られる体験が伝わる文言になったことがわかるだろう。
商材の『価値・良さ』を伝えることで、得られる体験を想像してもらうことができ、食べなくても商材の魅力が伝わるようになる。そうなれば、顧客は必要性を感じて買ってくれるようになる。売れれば無駄な営業活動をしなくてすむ。これがマーケティングの本質(北村氏)
マーケティングの施策は「5W1H1R」で構築する
次に、マーケティングの進め方をみてみよう。
ここは難しく考え過ぎず、5W1H1Rで進める。「いつ・どこで・だれが・なにを・なぜ・どのように」そして「どうなった」の流れだ。
- When(いつ):販売期間やタイミング
- Where(どこで):販売するチャネルや場所
- Who(だれが):販売するターゲット
- What(なにを):販売する商材
- Why(なぜ):ターゲットが商材を購入する理由
- How(どのように):販促・集客方法
- Result(どうなった):購入した結果どうなるか
わかりやすくまとめたのが以下の図で、上の2つで価値と体験を考え、顧客にそれを得てもらうための仕組みを下の5つで構築する。
顧客が感じる価値や体験は、人によってさまざま。まずは自社の商材から得られる価値(Why)や、そこから得られる体験(Result)を出せるだけ出していき、その中で最適な顧客体験を選択して売るための仕組みづくりをしていくと、マーケティングは比較的スムーズに構築できる(北村氏)
デジタル化による購買行動の多様化・複雑化とマーケティング手法の変化
2022年の現代において、多くの人がデジタルデバイスを活用するようになり、情報を得る手段や手法が変化した。その結果、顧客が「購買に至るまでの行動」も多様化・複雑化している。
注目すべきは図の赤枠の部分で、スマホなどの端末が普及したことにより、気になったものを「検索」し「比較・検討」する文化・習慣が生まれた。つまり、テレビCMなど企業からの情報を待つのではなく、顧客が情報を探し、選ぶ時代へと変わっているということだ。
マーケターは顧客を創出し、営業は商談・受注へ
顧客の購買行動が多様化・複雑化したことによって、BtoB企業のマーケティング手法や買ってもらうための施策も変化している。アナログ中心だった従来のマーケティング手法は、「営業部が顧客と対面し、担当営業が継続的にアプローチをかけて商談・受注」という流れだった。それが、デジタル中心のマーケティングでは、以下のような手法へと変化している。
- 設計:受注に向けた販売方法の設計
- 集客:顧客を集める集客施策
- 接触:見込み顧客と接触し情報取得
- 育成:取得した顧客の購買意欲を育成
- 絞込:意欲が高まった顧客の絞り込み
- 商談:絞り込んだ顧客に営業が商談
- 受注:商談した結果受注に至る
アナログ中心の時代は営業活動をすべて営業担当が行っていたが、デジタル化によってマーケティング担当が顧客を獲得・育成し、受注がみえてきたら営業担当に引き継ぐ流れへと変化した。マーケティング担当は受注につながる良質な顧客を創出し、営業担当は創出した顧客に対してアプローチをかける時代(北村氏)
BtoBマーケティングを加速するMAツール
マーケティングオートメーション(MA)は、「見込み顧客に対してアプローチを段階的に行い、購買意識を育成していくことができるシステム」と北村氏は言う。顧客の購買行動において、比較・検討している顧客を商談まで引き上げるには、高いハードルがある。このハードルを、直接的な接触のない状態でもクリアし、商談化率を上げるための活動を支援するのが、MAツールの主な役割となる。
たとえば、S社のWebサイトから資料請求をしてきたAさんとBさんがいたとしよう。この2人は「資料請求」という行動だけを見ると差異はなく、「どちらも我が社に興味がある」という判断になる。
しかし、MAツールを導入すると、それぞれがどのような行動をしてきた結果、資料請求したのかまでが可視化される。Aさんは「検索して出てきたから資料請求」したが、Bさんはセミナーに参加し、Webサイトを調べ、導入事例ブログなども見て、入念に調べた結果からの資料請求だったとしたら、どちらがより商談化率が高い見込み顧客なのかは一目瞭然だ。
さらに、MAツールを導入していると、Bさんが資料請求した、あるいは事例ブログを見たというタイミングで、それを営業担当にメールで知らせるという設定ができる。事例を調べているということは本気で探していると予想できるし、その人が資料請求したなら、商談につながる可能性はかなり高い。そのタイミングを逃さずアプローチすれば、営業効率は高まるに違いない。
非対面の状態でも、顧客の行動からより見込みの高い顧客を素早く探り当てることができる。商談化率を上げるための活動を支援できるのが、MAツールの強みの1つ(北村氏)
MAツール「SATORI」の活用事例
SATORIは、1,000社以上の導入実績を持つMAツール「SATORI」を開発・提供している。最後に北村氏は、マーケティング思考を身につけ、「SATORI」を活用した結果、どのような成果を得られたかという事例を紹介した。
活用事例①配信時間・タイトルをターゲットに合わせて変えることで30%台のメール開封率を実現
「未経験だけどメルマガを配信して顧客を育成したい」というのが、顧客企業の要望だった。そこで、セグメント設計による自動化施策を実施した。
- 接触:自社製品のウェビナーを開催し、開催後アンケートの結果に基づいて顧客を自動分類
- 育成1:分類したグループごとに、顧客の状態に沿ったメールを自動配信
- 育成2:メール開封されなかった場合は、配信時間・タイトルを変えたメールを配信
- 絞込、商談:メール開封されたら、担当営業へ自動通知
始業時にパソコンを開くときや、お昼休憩、帰宅中の電車の中でスマホを見るタイミングなど、メールが開封されやすい時間帯は商材によって違う。メールが開封されなかった場合は、配信時間やタイトルを変えてメールを配信し直すのは、重要な考え方(北村氏)
活用事例②興味がありそうな顧客に対しポップアップで訴求しアクセスは3倍、問い合わせは2倍に
「特集ページのアクセスを増やし、お問い合わせを増やしたい」というのが顧客企業の要望で、以下のような施策を実施した。
- 設計:特集ページに興味がある顧客が来訪しそうな自社サイトのページを複数選定
- 集客:選定したページを訪れたらポップアップを表示し、特集ページに誘導
- 接触:誘導元に応じて、特集ページで表示されるバナーを出し分け
ポップアップを表示したことで、特集ページへのアクセスは3倍に増加した。また、どのページから特集ページに来たかによってバナーを自動で出し分け、顧客の興味関心度合いに応じた情報を訴求。これにより、特集ページからの問い合わせは2倍になった。
SATORIでは、契約したユーザー向けに無料セミナーを開催しており、セッションはその内容を抜粋したものだという。北村氏は、「MAツールを導入しただけでオートメーション化されるわけではない。弊社カスタマーサクセスチームは、顧客の動き方・リアクションの流れなどを一緒に考えて、お客様の成功を目指し、伴走していく」と締めくくった。
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オリジナル記事:BtoBマーケティング強化のために! 今こそ学びたいマーケティングとMAの基本 | 【レポート】デジタルマーケターズサミット2022 Summer
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