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「セクシー大根抱き枕」はどう生まれた? フェリシモ流話題を作るストーリーの作り方 | 【レポート】Web担当者Forumミーティング 2021 秋
「セクシー大根抱き枕」「抱っこ牡蠣」で知られる生活雑貨ブランド「YOU+MORE! 」(ユーモア)は、インパクト抜群の製品でたびたびSNSで話題になっている。
話題となる企画を連発している株式会社フェリシモの豊川紗代氏が「Web担当者Forumミーティング 2021 秋」に登壇。その開発の舞台裏や制作過程のこだわりなどを語った。
ひとりで楽しむのではなく、楽しさをシェアするブランドが「YOU+MORE! 」
フェリシモの源流となる企業の創立は1965年。ファッション・雑貨類の一般消費者向け通販を主力としており、月1回定期的に商品を届ける「定期便」のサービスが特徴である。
豊川氏は、フェリシモの生活雑貨事業部に在籍しつつ、関連会社である株式会社2時の取締役を務めている。フェリシモから発売されている商品のうち、生活雑貨系の一部ブランドで企画・開発を主導する立場にあり、YOU+MORE! については初期の立ち上げから携わっている。
豊川氏はもともと新聞社の広告営業に従事していたが、後にフェリシモへ転職。ここでファッションのカタログ制作業務に就き、商品宣伝画像などの作り方を学んだ。こうした経験を踏まえて、雑貨の商品企画に深く関わるようになったという。
現在は、統括するブランドのプロモーション施策を検討・実施を行う傍ら、商品開発プランナーの育成を担当している。今回の講演ではそうした業務のうちの1つであるBtoBパートナー連携、いわゆる“外部企業とのコラボレーション”の実態について、YOU+MORE! ブランドの実例を交えながら詳しく解説した。
YOU+MORE! のコンセプト
YOU+MORE! は「すっかり見慣れた日常が、もっと楽しく、もっと笑えるように」をコンセプトに掲げる雑貨ブランド。そこにはフェリシモの経営理念「ともにしあわせになるしあわせ」が反映されている。
ひとりで楽しむのでなく、誰かとシェアできる、シェアしたくなるものとは何かを大事にしている。『ただ面白く』を狙ってしまうとブラックユーモア的なものも範疇に含まれてしまうが、YOU+MORE! ではそうしたものをなるべく作らず、みんなが笑えたり、楽しんだりできるものにしたい(豊川氏)
たとえば、ステンドグラス調のデザインが施された傘は、色合いや独特のデザイン性が魅力だが、利用者本人だけでなく、それを見る周囲の人も楽しめるようにという考えが根底にある。
YOU+MORE! の強み
フェリシモ、そしてYOU+MORE! だからこそ持ち合わせる強みとして、豊川氏は以下を挙げる。
- 集客を兼ね備えた企画立案
- リアルな形状を再現する立体造形
- 誰かにシェアしたくなる表現
- SNSと自社通販ツールを使った告知
特に「集客を兼ね備えた企画立案力」は、コロナ禍においてはイベントの実施が難しく、いかにオンライン上で集客するかはビジネス的に大変重要なポイントだ。YOU+MORE! では、画像1つで顧客を惹きつけられるだけのポテンシャルをもった製品作りをはじめから意識しており、話題性の高い商品を作りたいという企業とのコラボレーションも積極的に展開している。また、その企画を現実のモノとしてしっかり仕上げきる立体造形ノウハウも、強みの1つという。
YOU+MORE! 流製品開発3つのポイント
YOU+MORE! が商品開発を行ううえで重視しているポイントは3つあるという。
1. 誰が、何を伝えたいのか。ストーリーを大事にする。
YOU+MORE! が発売した製品の中でも特に話題を集めたのが、2018年発売の「セクシー大根抱き枕」。野菜の収穫シーズンになると、巨大だったり、変わった形だったりの野菜が一般ニュース番組などで取り上げられるが、それをヒントにプランナーが企画したという。また「抱っこ牡蠣」は、牡蠣を赤ちゃんほどのサイズにまで巨大化させたクッションで、これは広島出身プランナーの“牡蠣愛”があふれ出た結果だった。
両製品に共通するのは「プランナーが好きだからこそ作った」という点だ。これが豊川氏のいうストーリーの一例だ。単純に「作れそうだから作った」ではなく、商品が世に出る前にどんな紆余曲折があったか。あるいは、顧客はそれをどう受けとめたか。製品にまつわる、さまざまな観点のストーリーがあることで、各商品の価値は高まっていく。
「オウサマペンギン3変化ぬいぐるみ」というプロダクトでは、大阪市にある水族館「海遊館」とコラボした。水族館側は「動物の生態をより伝える」ことを命題としており、卵状態・成鳥状態のリバーシブル仕様のぬいぐるみを考えていた。そうした想いをYOU+MORE! 側で汲み取り、ヒナ状態も加えた3段階変身にすることとなった。これもまさにストーリーである。
2. 本当はやってみたいけどやれないことを実現
「羊の毛刈りぬいぐるみ」は、神戸市の「六甲山牧場」とのコラボ製品。羊の毛に当たる部分が着ぐるみ状なっており、これを外すことで毛刈りを終えたばかりの羊にも変身するという仕組みになっている。羊の毛刈りは春シーズンにメディアでよく取り上げられるが、一般人が気軽に試せるものではない。ならば疑似体験できる製品を作ろう……という発想だ。
「タカアシガニ脱皮ぬいぐるみ」は比較的リアルな造型が特徴だが、水族館飼育員の知見が大いに反映されたのが特徴。人間には真似できないし、そもそも見る機会が少ない「カニの脱皮」の疑似体験を意図して企画された。「脱皮後のカニの甲羅は柔らかい」というエピソードをもとに脱皮前・脱皮後のぬいぐるみの素材感も変えている。
★画像をいれよう!
3. 仕上げるパワー
抱っこ牡蠣、脱皮ぬいぐるみに代表されるように、ある種“ぶっ飛んだ”製品企画力で評判を勝ち取ってきたYOU+MORE! だが、それを現実にモノとして作り上げる・仕上げるだけの体制も当然重要だと豊川氏は指摘する。
牡蠣のポーチでは、牡蠣の殻をイメージさせる外見だけでもインパクトがあるが、中には牡蠣の身にあたるポーチ、さらには真珠、レモン(絞り汁をかけて食べるイメージ)に相当する小物まで付属する。また、実際にポーチとして使いやすいよう、サイズ感などは徹底的に調整したという。
「ぎゅうぎゅう集まって眠るハムスターのボックスティッシュカバー」では、複数匹のハムスターが密集している愛らしさが鍵なだけに、仕上げには何度もサンプル製作を作り直した。1体1体独立しているのに密集している配置、色合い、表情でも試行錯誤。豊川氏も「ちょっとしたことの積み上げが感動する商品を呼び寄せるはずと信じて、やりきった」と開発当時を振り返った。
最後の仕上げこそ、パートナーの力を生かして
YOU+MORE! では水族館・動物園とのコラボ製品が多く、現場で働く飼育員の知識量に驚かされるという。そうした専門家の知見は、商品開発の「仕上げ」のクオリティアップはもちろん、それ自体がストーリーとしても機能する。YOU+MORE! がもともと発売していたカワウソ型のポーチについては、水族館飼育員とTwitterで公開やりとりをし、頭頂部の凹みや尻尾形状を変更した新バージョンを発売したケースすらある。
豊川氏が繰り返し強調するように、企業と企業の関係はそれ自体がストーリーであり、第三者の関心を惹くうえでのパワーにもなる。そのストーリーをどう楽しい表現にするか、面白くできるかがYOU+MORE! としての腕の見せ所という。
また、動物ファンなら一度は「ゴリラに抱きついてみたい」と思うものの、現実には相当難しい。ならばせめて疑似体験をと、ゴリラと一緒に眠っているかのようなクッションを製作したところ、好評を得た。夢を叶える・想いを実現するための製品作りは、YOU+MORE! ならずとも参考になりそうな部分だ。
発案は大事だが、開発過程で最後にどう仕上げ、どうお客様に伝えるかが最も重要です(豊川氏)
そのためにも、コラボレーション相手となるパートナー企業の力を大いに頼るべきと訴え、講演を締めくくった。
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ユーザー愛にあふれたUGCをフル活用する「ファンマーケティング」実践の3TIPS | 【レポート】デジタルマーケターズサミット2023 Winter
「モノが売れない時代」。マーケティング担当者の間からついつい漏れ出てしまう言葉だ。コロナ禍、景気、消費スタイルの変化。さまざまな要因はあれども、消費者が買い物をしないわけではない。そして何より、お気に入りの商品やサービスへの愛を語る消費者、つまり「ファン」の存在がSNSで可視化され、購買へとつながっている状況に着目すべきではないか。
企業がファンとコミュニケーションすることで、新しいなにかが生まれる。「ファンマーケティング」を熟知するvisumo(ビジュモ)の千林氏が「デジタルマーケターズサミット 2023 Winter」に登壇し、新時代のマーケティング像を解説した。
SNSあっての「ファンマーケティング」
ファンマーケティングとは、そもそも何なのだろうか? なぜファンマーケティングが求められているのか? それを理解する鍵になるのはSNSの普及だと千林氏は語る。
ユーザーがTwitter、Instagram、TikTokなどを通じて、その商品やサービスの“ファン”であることを簡単に発信できるようになった。結果として、UGC(User Generated Contents:ユーザー自身が生成するコンテンツ)がかつてなく増えたこと。これがまず前提になる(千林氏)
UGCが増え、それが参考になると思った別のユーザーは、付随するタグを中心に情報収集・検索する。この一連の行動は「タグる」と呼ばれ(Googleで検索する“ググる”とは異なる)、消費者行動として定着しつつある。
ファンの声は、企業発信のマーケティングメッセージとは意味合いが異なる。テレビや新聞などマスコミはかつてのような存在感をもたなくなっており、ファンの声をユーザーが参照しやすい環境が整っているならば、SNS上のUGCが購買の参考とされるのは、自然な流れといえるだろう。
そこで、自社製品・サービスを愛好してくれるファンを増やし、満足させ、結果としてポジティブなUGCをSNS上に増やそうというのが、ファンマーケティングの発想である。
ビジュアルマーケティング支援するプラットフォーム「visumo」
visumo(ビジュモ)は、ITシステムの受託開発などを広く手がけるソフトクリエイトホールディングスのグループ企業である。SNSや動画に特化したマーケティング支援のため、グループ内でECサイト構築サービスを手がけるecbeingのいち事業部門が独立するかたちで2019年に設立された。
visumoは「ビジュアルマーケティングプラットフォーム」を標榜したSaaS型サービスとして誕生し、現在は以下のサービスを提供している。
- visumo social:Instagramの公式および、インフルエンサーや店舗のアカウント、UGC(User Generated Contents:ユーザー生成コンテンツ)などの写真や動画を管理画面でピックアップし、公式サイトやオウンドメディアに活用・分析ができる
- visumo vidio:YouTube、リール、TikTokなどの動画アセットを管理し、ECサイトやオウンドメディアなど会社全体で活用・分析ができる
- visumo snap / visumo comment:店舗や宣伝広報部門などスタッフのスマートフォンからアップされた写真や動画、コメントを、ECサイトやオウンドメディアなどに活用できる(snap)/専門知識は不要、ノーコードでWebサイトを制作可能(comment)
いずれもが、自社ECサイトやオウンドメディアなどに掲載するコンテンツを充実させ、ファンマーケティングを構築するためのツールとして有効だと千林氏はアピールする。
ファンマーケティングの具体例3Tips
ファンマーケティングの手法には類型的なパターンがある。その中から以下の3つを具体的に見ていこう。
- ファンコミュニケーション
- SNSキャンペーン
- アンバサダープログラム
ファンマーケティングの具体例①
ファンコミュニケーション
近年「ファンミーティング」「ファンイベント」という表現を耳にする機会が増えているが、これがまさにファンコミュニケーションである。参加するファンの満足度は高いが、企画や準備のハードルは高くなりがちだ。
事例① ニトリ
そこで参考になるのが、visumoが家具・生活雑貨チェーンのニトリとタッグを組んで展開した事例。「みんなのニトリ」と題した特設ページには、さまざまな“映え画像”が掲載されているが、これはすべてUGCであるという。ただし、ニトリが投稿ユーザーに連絡し、許諾を受けた画像に限られている。
具体的には以下の流れで運用される。
- Instagram上に「♯ニトリ」「♯mynitori」のタグ付きで投稿された画像をvisumo socialが収集する
- 指定した投稿に対し掲載の許諾願いのコメントを付ける
- ユーザーがそれを許諾する場合、コメントに「♯yes」のタグを付けて再コメントする
この一連の工程をシステム的に管理・処理するのが、visumo socialの基本機能である。
千林氏によれば、許諾をとるためのコミュニケーションの中では「今度、別の買い物をするので、その投稿もよければ見てください」といった返信を受けることが非常に多いという。また、そのユーザーがもっと「みんなのニトリ」で紹介されようとするためか、画像のクオリティがより高くなる傾向もあるそうだ。
ユーザーが自発的に投稿し、企業がユーザーに声をかける。企業は重要なマーケティング資産を獲得し、ユーザーは自身のコンテンツ作りに磨きをかける。この好循環現象をvisumoでは「UGCループ」と称し、注目している。
なお画像だけでなく、コメントでもこの仕組みは応用可能だ。
ニトリご担当者様からいただいたコメントによれば、visumo socialを採用していただいたのは『ニトリとお客様の距離を近づけたい』から。これは、かなり深い言葉だと思う。店頭での接客を重要視していても規模の限界がある。それを補うのがオンラインでの声がけであり、企業とお客様の距離を実際に縮められることが証明できたのではないか(千林氏)
ちなみに家具の場合、ユーザーの実用環境を考えると「あるメーカーの家具だけで完全統一した部屋」は想像しにくく、複数社の製品が混在する環境が一般的だろう。しかしメーカー側としては、競合他社製品を交えたルームコーディネート案を、自社Webサイトで提案するのは難しい。
その点UGCは、当然ながらユーザーの実環境を踏まえたものになる。企業の論理を超え、あくまでユーザー視点に立ったコンテンツを提供できることもまた、UGCの強みだと千林氏は訴える。
事例② パナソニック
一方、パナソニックでは住宅設備の施工例を充実させるため、最終消費者はもちろん、ショールーム、工務店などに対してもInstagram画像の利用許諾申請を行っている。
これによって、パナソニックのウェブサイトには常に新しい画像が用意されることになる。サイトの更新・コンテンツ不足に悩む担当者にとっても、サイト訪問者にとっても、効果的な運用だと言えよう。ただし、その前段階として、UGCを集めていることを各所で明示しておくことも重要。そのためパナソニックでは、Webサイトでの告知以外に、当該製品購入者向けのチラシも用意している。
ファンマーケティングの具体例②
SNSキャンペーン
抽選プレゼントなどを用意して、ハッシュタグ付き投稿を呼びかける手法がSNSキャンペーンだ。これもまた、ファンマーケティングの一形態である。
事例③ 吉野家
牛丼チェーンの吉野家では、自社ECサイトにおけるキャンペーンとして、Instagramへの投稿を呼びかけた。その時期は夏休みシーズン。牛丼店といえば男性客のイメージが強いが、子供が喜んで食べる・安心して食べられるという面を訴求するのが狙いだった。
同様に、ECサイトで販売している牛丼の具(冷凍)の拡販にあたっては、一般ユーザーがInstagramに投稿していたレシピについて、許諾を得て活用。さらにはvisumo socialの機能を利用し、レシピ投稿からECサイトへの導線を作った。こうすることで、単に「いいね」をもらうだけでなく、購買にもつなげることができる。
事例④ リンナイ
コンロ・給湯機器メーカーのリンナイは、「#meライフ」という画像投稿キャンペーンを定期開催している。SNS投稿キャンペーンは短期のスポットで開催される例が多いが、投稿数があまり集まらず、途中で諦めてしまうケースが少なくない。
リンナイでは、投稿キャンペーンを月締めにし、翌月以降の告知ページに優秀作を掲載するなど、徹底した活用を実施。また、リンナイ自身のオウンドメディアでも転用する旨を募集規定に含めている。
ファンマーケティングの具体例③
アンバサダープログラム
特定の製品・サービスなどに対して愛着や関心のあるユーザーを選定し、プロモーションなどで協力していくのがアンバサダー(大使)プログラムである。
どういったユーザーをアンバサダーとするかで「ハッシュタグ投稿型」「選定型」「公募型」の3パターンに分類されるが、中でも「ハッシュタグ投稿型」は、特に緩やかな運用方法。特に厳密な認定をすることなく、単純にハッシュタグを付けて投稿してくれたユーザーすべてをアンバサダーとみなす。「ファン皆様がアンバサダー」という立て付けだ。
事例⑤ 東京ミッドタウン
商業施設の東京ミッドタウンでは、隠れた魅力をアンバサダーに発見してもらうためにプログラムを活用。寄せられた投稿は多面展開させ、Webサイトだけでなく、現地のデジタルサイネージにも掲出した。
菓子・製パン材料の富澤商店、作業着・アパレルのワークマンの2社は「選定型」を採用。ただし両社とも、選定フローを外部ベンダーなどに委託せず、自社運用しているという。
事例⑥ フラコラ
「公募型」は、アンバサダー募集を明示して、広くコンペティションを行う形式である。化粧品ブランドのフラコラ(fracora)では、規定回数以上のSNS投稿などを条件にして募集。さらにアンバサダーの中でもステージ区分を設け、参加者のやる気を引き出す仕組みも作った。
ファンとのコミュニケーションをvisumo socialで簡単・効率的に
visumo socialはInstagramとTwitterに対応。両SNSに投稿されたコンテンツの中から目的のものを発見・収集し、該当投稿者への連絡、許諾後のサイト転載までを一連の流れとして実行できる。
そのうえで千林氏は、ファンマーケティングが“盛り上げ”の醸成だけに留まらないと主張する。自社サイトにUGC、いわゆる“映え写真”を取り込み、人気コンテンツとなれば、外部からのトラフィック増、ひいてはSEOにも好影響を与える。結果として、PV数アップ、売り上げアップなど、業績指標にも貢献できる。
「事業者からの一方的な発信は過去のものとなりつつあり、現在はファンと一緒に“オウンドコンテンツ”を作る時代に変化している。UGCは企業やブランドにとってのビジュアルアセット(資産)であり、その有効活用のためにもvisumoを役立ててほしい」と千林氏は述べ、講演を締めくくった。
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老舗デジタル広告会社が自らBtoBマーケティングに挑戦! KPI 180%を達成 | 【レポート】デジタルマーケターズサミット2023 Winter
自社のマーケティング課題をデジタルの力でなんとか解決したい。それは何も一般企業に限った話ではない。デジタル領域を専業とする企業、デジタルマーケティングに強みを持つ広告会社であってもそうだ。
アイレップは1997年の創業初期からインターネットビジネスを手がけ、デジタルマーケティング市場での広告会社としては老舗にあたる。しかし広告以外のビジネスの認知度は高いとはいえず、事業拡大の障害となっていた。そこで着手したのが「インバウンドマーケティング」だ。「デジタルマーケターズサミット 2023 Winter」に同社の平林氏が登壇し、KPI180%を達成するまでの経緯を解説した。
歴史ある広告会社が自らインバウンドマーケティングに取り組む
アイレップは1997年11月設立。日本でインターネットビジネスが勃興しはじめた時期とも重なる。当初はさまざまな事業を展開していたが、次第にインターネット広告へ集中。現在は、博報堂DYホールディングスの傘下企業となっている。
実に4半世紀にわたってインターネット広告を手がけてきたのがアイレップであり、その中でもリスティング広告とSEO施策サービスの知名度は高かった。
だが同社の事業はそれだけではなく、デジタルマーケティング支援を全方位的に実施するだけの体制を整えている。平林氏は「リスティング広告やSEO施策では継続的にお問い合わせをいただいているのだが、デジタル起点のフルファネルマーケティングを展開していることがあまり知られていなかった」と振り返る。
では、どうすればそれを世間に認知してもらえるのか? そこで始めたのが「広告会社が自社サービスの認知拡大のために、『インバウンドマーケティング』に取り組むこと」だった。
インバウンドマーケティングとは、Webサイト記事や動画などの各種コンテンツを配信して、顧客の関心・興味を惹く手法のこと。テレビCMやダイレクトメールなどの「アウトバウンドマーケティング」とは対義的に扱われる。つまり、顧客が“自発的にその会社の製品・サービスに興味が沸いた”と感じてもらうための方策である。
そこで立ち上げたのが、デジタルマーケティング関連の記事・動画・セミナーなどを総合的に提供するWebサイト「DIGIFUL」だ。2019年下期から企画が立ち上がり、コロナ禍を受けて計画が前倒しされ、2020年夏にオープンした。
Webサイトを公開し問い合わせ数が着実に増加、KPI 180%を達成
DIGIFULの公開は、デジタルマーケティング情報を探している企業内担当者とアイレップを結ぶという意味で、BtoBマーケティングの定番的手法でもあったが、リード(見込み客)の獲得に大きな威力を発揮した。下の図は、顧客からの問い合わせ数の変遷を示したグラフである。
2020年5月はコロナ禍もあって問い合わせ数が大幅に落ち込んでいるが、DIGIFUL公開後は徐々に回復。翌年度も順調に伸び、KPI 180%を達成している。
この他、メールマガジンの配信数、問い合わせを促すための資料ダウンロード数についても、各種施策を加速させた結果、軒並み高数値をたたき出している。
これまでアイレップに届く問い合わせは、ほとんどがリスティング広告やSEOに関するものだけだった。しかしDIGIFULでインバウンドマーケティングを本格化させて以降、問い合わせジャンルが多様化した。また既存のお客様からは『DIGIFULの記事で紹介されていた提案を我が社にもしてほしい』といわれることが増え、アイレップ営業担当者へのスキル依存が減る効果もあった(平林氏)
BtoBマーケティングの3ステップ、どの部門が担当すべき?
続いて平林氏は、DIGIFULを通じたインバウンドマーケティングの推進体制について具体的な説明を行った。まず前提となるのは、BtoBマーケティングを構成する3つのステップだ。
- リードジェネレーション:見込み客の獲得。広告、イベント出展、テレマーケティングなど多種多様な方法がある。
- リードナーチャリング:獲得した見込み客に対して、購買意欲を向上させるための施策。セミナー、メールマガジン配信など。
- フィールドセールス:最終成約のため営業担当者が見込み客のもとへ訪問する。
では、この3ステップの業務を遂行するのは社内のどの部門か。リードジェネレーションはマーケティング部門、フィールドセールスは営業部門とハッキリしているが、リードナーチャリングは曖昧になりがちだ。
部門間の連携は、多くの会社にとって課題だろう。そこで当社では、マーケティングとセールス(営業)部門を一体化させた。これで機動的なマーケティング施策ができるようになった(平林氏)
またKPIの設計も綿密に行った。たとえば売り上げ1億円アップというKGIがあった場合、達成するためにどれくらいの顧客数が必要なのか、そのためには新規顧客を何社獲得すればよいのか、というように逆算的にKPIを算出。そこからさらに、実施するマーケティング施策を決めていった。他にもサイト訪問者数、リードナーチャリングにおけるスコアリングの状況などもサブKPIとして重要視したと平林氏は明かす。
続いてマーケティング部門が担当した、①リードジェネレーションと②リードナーチャリングの施策を見てみよう。
①リードジェネレーション最大化の施策
SEO/コンテンツマーケティング/ウェビナー
リードジェネレーションの最大化に向けた施策は、以下の3つだ。
- SEO:検索エンジンからの流入を増やすための基本ともいえる施策。DIGIFULではサイト制作段階からSEO要件を盛り込んだため費用対効果が大きかったという。
- コンテンツマーケティング:各種のデータ分析結果をもとに、発信したい情報に優先順位をつけた上でコンテンツ(おもに記事)を作成。この際、他部門とも連携してコンテンツを拡充させた。
- ウェビナー:DIGIFULはコロナ禍前後に立ち上がったサイトということもあり、オンラインセミナーを積極的に実施した。こちらもコンテンツマーケティング同様、他部門の協力を仰いだ。なお2020年上期にはウェビナーを15回開催し、2,000件以上のリードを獲得した。
コンテンツ不足に陥らないために社内の協力体制を築く
DIGIFULでは企画立ち上げの段階から、「すでに獲得できている顧客」「目標達成のために獲得したい顧客」の数を具体的にカウントし、それを見越してコンテンツも準備・作成するという方針がとられていた。つまり、そのセグメントをしっかり狙える力を持ったコンテンツを用意する必要があるということだ。
とはいえ、コンテンツは自然と生まれてくるものではない。必ず誰かが文章を書いたり、動画を撮ったり、ウェビナー用スライドを作成したりしなければならない。外部の業者を頼るのも1つの手段だが、やはり最終的には社内人材の協力が欠かせない。
最初のうちは、『普段の業務が忙しい』という理由でなかなか記事執筆の協力を社内から得られなかった。ただ、それでも諦めず、全社一丸となってやるんだというメッセージを出し続けた結果、現在は(コンテンツの作成数が)期別の目標に組み入れられるところまできた(平林氏)
②リードナーチャリング最大化の施策
MA/インサイドセールス
見込み客の購買意欲を高めるという、リードナーチャリングの軸となっているのはMAとインサイドセールス(おもに架電)だ。メールマガジンのリンクをクリックした回数などでスコアリングし、一定値に達したらホットリード(今すぐにでもサービスを買う客)とみなし、担当者が電話するという流れである。これ自体はオーソドックスなものといってよい。
リードナーチャリングは課題多し、精度アップの努力を
ただ、スコアリングさえ高ければ万事解決かといえば、そうではない。それまで一切スコアリングに変化のなかった客が突如行動を起こすこともあり、「型どおりのナーチャリングとはならず、難しい面が多かった」と平林氏は漏らす。
DIGIFULでは、MAを活用したメールマガジン施策のほか、Webサイトの閲覧状況や、営業部門全体での商談状況なども勘案することで、より精度の高いターゲティングを心がけているという。
DIGIFULでの実績を、多くの企業へ
アイレップは広告会社であり、そしてデジタルマーケティング支援を広く手がけている。DIGIFULのようなインサイドマーケティング施策を自ら実践しつつ、そのフレームワークをクライアント企業に提供することもまた、大きな事業の柱である。
たとえば不動産会社A社を支援した事例としては、Webサイト老朽化、顧客インサイト(ニーズ)が分析しきれていないといった課題に対し、包括的な解決案を提案した。
この事例では、サイト訪問ユーザーの回遊状況を調査したり、デプスインタビューなどを実施したりして、顧客ペルソナに基づいたユーザーエクスペリエンス定義書を作成。それを元にサイトリニューアル、コンテンツ作成方針の決定までをサポートした。この結果、サイト流入ユーザーの増加は当然として、CVRが1.4%上昇、回遊率(1セッションあたりのPV数)も1.5ポイント増加したという。
平林氏は「インバウンドマーケティングの実践経験をもとに、お客様のBtoBマーケティングを支援できるのがアイレップの強み」と改めて強調。DIGIFUL発信の情報を参照しつつ、ウェビナーなどにも積極的に参加してほしいと呼び掛け、講演を締めくくった。
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ブランディングは伝言ゲーム! 経営を加速させる思考フレームとは? | 【レポート】デジタルマーケターズサミット2023 Winter
「経営者とデザイナーの共創関係がブランディングの現場では非常に重要」と語るのは、株式会社エイトブランディングデザイン 代表の西澤明洋氏だ。
数多くのブランディングプロジェクトを手がけ、国内外100以上の受賞歴を持ち『ブランディングデザインの教科書』を著書に持つ同氏が「デジタルマーケターズサミット 2023 Winter」に登壇。経営とデザインの関係性に焦点を当てながら、強いブランドを作るポイントを解説した。
『ブランディングデザインの教科書』(著者:西澤 明洋 出版:パイインターナショナル)
すべての経営にブランディングは有効
そもそもブランディングとはどのような仕事なのか?
株式会社エイトブランディングデザインは17年にわたり、ブランド開発専門のデザイン会社として100以上のブランディングプロジェクトを手がけてきた。
その一例はクラフトビールのCOEDO。もともとは埼玉川越の小さな会社の地ビールだったが、リブランディングの結果、いまやクラフトビールとして世界進出し、売上を大きく伸ばしている。そのほかにも大手醤油メーカー、老舗の料理道具屋、芸術文化施設、さらには神社にいたるまで、幅広い企業団体のブランディングに貢献してきた。
ブランドというと嗜好品や高級品のイメージがあると思いますが、そんなことはなく、すべての経営にブランディングは効くと考えています(西澤氏)
ブランディングといえばロゴやパッケージのデザインをイメージしがちだが、それだけではない。西澤氏いわく「少し口やかましめのデザイン部長」として、その会社のデザイン以外の悩みも包括的に解決していくのだという。
ブランディングは「伝言ゲーム」
「ブランディング」は文脈や人によってさまざまな意味で使われるが、西澤氏はブランディイングを次のように定義する。
ある商品、サービスもしくは企業の全体としてのイメージに、ある一定の方向性をつくり出すことで、他者と差異化すること。
端的にいうと「ブランディングとは、差異化」「他とはどう違うかを、お客さまに正しく伝えること」だと西澤氏は言う。
一見当然のことにも思えるが、自社との違いを見つけられない、無理して目立とうとしてしまう、競合のマネをしてしまうなど、この差異化を正しく行うことは意外と難しいようだ。
ブランディングと、マーケティング・広告との違い
定義が文脈や人によって揺らぎやすい「ブランディング」「マーケティング」「広告」といった用語。西澤氏は「目的」と「伝達経路」の観点から、それらの言葉を明確に区分している。
まず、目的が異なる。マーケティングは売上を上げることを目的としており、いわば「売るゲーム」である。一方でブランディングは、売上を直接目的としているわけでなく、「伝えること」を目的としている。クチコミを介して良い評判が醸成されることを目指す、いわば「伝言ゲーム」である。
そして伝達経路も異なる。広告は一対多の一方的な伝達だが、ブランディングは人を介してクチコミとして拡散していく(下図の通り)。
西澤氏は上記のように各用語を定義しているが、マーケティングや広告を否定しているわけではない。
まずは伝言されるような情報設計や価値設計をして、そのうえで通常のマーケティング活動を行うと、飛躍的に効果が高まりやすい。順番が大切です(西澤氏)
ブランディング成功の鍵は、経営戦略からデザインまでの一貫性
続いて西澤氏は、ブランドにとって必要なものを3つ挙げた。これらは上から重要な順に並んでいるという。
- トップの熱い思い
- 良いモノ(サービス)
- コミュニケーションチーム
1番重要なのが「トップの熱い思い」だ。いくら商品やサービスが良く、広報が手慣れていたとしても、トップが「熱いメッセージを一貫して発信しつづけ」「プロジェクトメンバーが一丸」とならなければ、伝言ゲームが機能しづらい。多種多様なプロジェクトを経験した西澤氏はそう指摘する。
なお「トップ」は社長に限らず、「伝言ゲームの第一レイヤー層となるプロジェクトメンバー」を指している。デザイナーである西澤氏がコミュニケーションよりも「トップの熱い思い」を重視するのは意外かもしれないが、その背景にはこれから紹介する西澤氏のブランディング論がある。
ブランディングデザインの3階層
こちらが、ブランディング課題の整理に役立つ「ブランディングデザインの3階層®」の図だ。マネジメント、コンテンツ、コミュニケーション(=MCC)の3層から成る。
西澤氏は、この図を使った分析方法を紹介してくれた。
1. 横ぐしが通っているか確認
3階層の同じレイヤーの各要素に一貫性があり、横ぐしが通っているかを確認する。コミュニケーション層だけでなく真ん中のコンテンツ(商品・サービス)層においても、一貫性は重要だ。
ブランディングデザインでは、ビジュアルアイデンティティ(VI)やコーポレートアイデンティティ(CI)の一貫性が保たれた「トータルデザイン」を実現させようとする。
コミュニケーション層でいうと、ロゴ、パッケージ、ウェブサイト、広告などの各デザインにおいて、色彩やフォントなどのVIが保たれているかが重要とされている。
2. 縦ぐしが通っているか確認
しかし西澤氏は、横ぐし以上に、MCCを縦に貫く「縦ぐし」が重要であると主張する。それはMCCの上位レイヤーほど、差異化要因が強くなるからだという。
コミュニケーションのトータルデザインだけができても、差異化要因にはつながりにくい。コミュニケーションよりもコンテンツ、コンテンツよりもマネジメントの方に差異化要因があります(西澤氏)
戦略(マネジメント)によって商品・サービスの基礎設計が変わり、それに伴いコミュニケーションも変わる。たとえば飲食店でいうと、出店場所を高級なエリアとするか繁華街とするかで、料理の内容やコミュニケーションも変わる。
マネジメントも含むMCCの各レイヤーに一貫性を持たせ、縦ぐしを通すことが、強いブランドをつくるうえでは欠かせない。
統合的な働き方
マネジメントからコミュニケーションまで縦ぐしを通すために、エイトブランディングデザインが実践しているのが「統合的な働き方」だという。
「統合的な働き方」とは、経営者もデザインに関与し、逆にデザイナーも経営に関与するという、各レイヤーの境界線を廃した働き方を意味している。
デザイナーの視点から見ると、当然ながらコミュニケーション層の業務はほぼすべてを担当するが、統合的な働き方では、商品サービスの企画や、経営戦略にも関与していく。西澤氏の場合、デザイナーとして経営戦略のアイデア出しやその取りまとめなども担当する。
縦割りで分業せず、戦略からコンテンツの企画、コミュニケーションの実装までをみんなでやり抜くことが大事です(西澤氏)
逆に、経営者も「デザインはデザイン会社にお任せ」とするのではなく、コミュニケーションにも関与することで、企業のアイデンティティが行き渡ったコミュニケーションを実現しやすい。「共創関係、コ・クリエーション(Co-Creation)の関係がブランディングの現場では非常に重要」と西澤氏は強調する。
ブランド開発のプロセスとは? ポイントは一点集中
西澤氏はブランド開発のプロセスについても端的に解説した。
基本的には下図の通り、「リサーチ→プラン→コンセプト→デザイン→リサーチ……」というサイクルでブランドを構築するのだが、最重要ポイントは図の中央に位置する「フォーカス」だという。
フォーカスには2つの意味があり、ひとつ目は「経営資源を一点に集中させる」ことだ。
先述のとおり「ブランディングは差異化」であり、経営資源を他との差がつくれそうな部分に注力することで、差異をより鮮明にしやすい。しかし企業活動の現場では、各部署にそれぞれの意向があり、それぞれの顔を立てると経営資源をフォーカスできず、差異化が進みにくい。
また、競合他社に光る魅力があると、ついつい追随したくなるが、「ブランディングは差異化」という観点から見るとそれもNG行為のひとつだ。
フォーカスのもうひとつの意味が、コミュニケーション面で「言いたいことを絞る」こと。伝言ゲームのようにメッセージを広く伝播させるには、複数のメッセージより、覚えやすいひとつのキーワードの方が有利となる。
特に目先の売上を求める場合、年齢などの属性によってメッセージを出し分けて「みんなに好かれようとする」方向に行きがちだが、ブランディング的にはそうした行為は望ましくない。
講演最後の質問コーナーで西澤氏は、経営者がブランディングへの基本的な理解を持つ重要性を強調。ブランディング担当者に向けて「まずは決裁者・経営者の方々と一緒に、ブランディングとは何か、プロジェクトのゴールはどこにあるのか、といった点を見定めることで、プロジェクトを円滑に進めやすくなる」とアドバイスを送り、講演を締めくくった。
なお今回の講演内容の詳細は、西澤氏の著書『ブランディングデザインの教科書』(パイインターナショナル)に記されている。
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オリジナル記事:ブランディングは伝言ゲーム! 経営を加速させる思考フレームとは? | 【レポート】デジタルマーケターズサミット2023 Winter
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