2023年11月7日、OpenAIが開催した開発者向けカンファレンス「DevDay」で、ChatGPTのAPIの大幅アップデートが発表されました。
これまでChatGPTでは、テキスト情報や表データを扱うことができたのですが、今回リリースされたAPIでは、画像ファイルも分析・処理できる対象に加えられました。
これによって、今まで感覚に依存していたクリエイティブの評価を、ChatGPTで汎用的に行うことができるようになります。この変化は、デジタルマーケティングにおいて、生成AIの可能性がさらに広がっていくことを予感させました。
本記事では、ChatGPTを使った画像解析がデジタルマーケティングに起こす変化について解説します。
勘と経験に依存しないクリエイティブ分析
今回公開された画像理解APIを使うと、従来のテキストデータや数値データだけでなく、画像データや写真データを一括で解析し、プロンプトで定型的な処理をすることが可能になります。
例えば、異なるデザインの広告バナーと、それぞれの広告効果のデータを併せてアップロードすることで、広告効果が高いバナーの傾向を抽出したり、「どのような変化を加えるとより高い広告効果が得られるか」といった示唆が、生成AIから得られたりするようになります。
今後デジタルマーケティングの領域において、画像を使ったChatGPTの活用例は増えていくでしょう。多くのデジタルマーケティングの現場では、迅速な意思決定が求められます。クリエイティブ、データ、そして広告の効果を組み合わせることで、今まで勘と経験に依存した評価しか行えなかったクリエイティブの分析が、自動で実行可能になります。
バナー広告の分析事例
たとえば、4種類のバナー広告(下図)を一定期間配信した結果、それぞれのCTR(クリック率)は、以下のような数値になりました。
- バナー1(左上):0.078%
- バナー2(右上):0.075%
- バナー3(左下):0.028%
- バナー4(右下):0.023%
ChatGPTのプロンプトから、4つのバナーのクリエイティブ、コピー、CTR(クリック率)、CVR(コンバージョン率)に加えて、クリックしたユーザーの属性データをChatGPTに取り込み、分析してみました。
以下に挙げたのが、ChatGPTが出力した分析結果です。成功パターンを言語化して考察した上で、それをもとにしたおすすめの改善案を提案してくれています。
提供されたバナーのクリックスルーレート(CTR)が異なりますが、バナー1が最高の成果を上げている(CTR = 0.078%)ことに注目しましょう。バナー2も比較的高いCTRを記録しています(CTR = 0.075%)。これに対して、バナー3と4の成果はかなり低いです(それぞれのCTRは0.028%と0.023%)。以下に、各バナーに関する考察と、次回のキャンペーンに向けた改善案を挙げます。
### バナー1とバナー2:
- **考察:** バナー1とバナー2の高いCTRは、視覚的な要素やキャッチコピーが訴求効果を持っていることを示しています。写真に写っている人々の協力的な雰囲気や、技術的な環境がターゲット層に響いている可能性があります。
- **改善案:** これらのバナーの訴求ポイントをさらに前面に押し出し、人々の協働やプロダクトの使いやすさを強調する文言を追加することで、更にCTRを向上させることができるかもしれません。また、色の使用を最適化して、視覚的魅力を高め、クリックを促す呼びかけを強化することも一考です。### バナー3とバナー4:
- **考察:** バナー3とバナー4の低いCTRは、文言やデザインが目標とする観客に響いていないか、あるいは競合の広告に比べて魅力に欠けるためかもしれません。もしくは、メッセージが明瞭でない、あるいはユーザーに直接関連する価値が十分に伝わっていない可能性があります。
- **改善案:** キャッチコピーを研究し、よりダイレクトでわかりやすいメッセージに再構築することが必要です。ユーザーの興味やニーズに直接訴える言葉を使うことが大切です。さらに、バナー内のデザイン要素(例えば、色使いやコールトゥアクションボタンの位置)を見直して、ユーザーの注意を引き、クリックにつながるようにすることもポイントです。全体的には、社内での議論やエンゲージメントデータを基に、最適なコピーとビジュアルの組み合わせを見つける実験を続けることを推奨します。ターゲットオーディエンスにリーチし、CTRを最大化するためには、A/Bテストなどの方法を用いて、さまざまなアプローチを試み、データに基づいた改善を行うことが重要です。
上記はほんの一例ですが、画像理解APIを使えば、より効果的なキャンペーンの展開やクリエイティブの制作が行えるようになります。
生成AIはデジタルマーケティングをどう変えていくか
ChatGPTをはじめとした生成AIを駆使することで、これまで経験や感覚に頼っていたクリエイティブの制作や評価が、より客観的で再現可能なプロセスとして定着していくことでしょう。
そして、将来的には画像だけでなく、動画などのコンテンツなどの解析も行うことができるようになるのではないかと思っています。
データとクリエイティブを融合させ、再現性の高い広告クリエイティブを恒常的に作成できるようになれば、デジタルマーケティングの最適化スピードがさらに加速していくでしょう。
アップデートされたChatGPTのAPIにより、デジタルマーケティングとデータの関わりがより深くなっていくのではないかと考えています。今後もマーケティング担当者は、この進化したツールを活用することで、日々の業務を効率化し、より戦略的な活動に集中することが求められる機会が増えていきそうです。
この連載では、今後もデータとマーケティングの最新活用情報を紹介していきますので、ご期待ください。
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オリジナル記事:ChatGPTで画像分析が可能に! AIの進化が切り開くデジタルマーケティングの新境地 | データ活用革命のヒント
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