ChatGPTのプロンプトで使える回答を引き出す“7R”とは マーケター必須スキルとAI最前線 | 【レポート】デジタルマーケターズサミット2023 Summer

【レポート】デジタルマーケターズサミット2023 Summer
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yu-ta(ゆーた)26歳、会社員 PC.スマホ周辺機器やスマート家電など ガジェットを使って スマートな生活を送っています。 このサイトでは管理人おすすめの 最新の便利ガジェット情報や お得に買えるセール情報を中心に 発信しております。
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話題の対話型AI「ChatGPT」。チャット形式で入力される複雑な会話文を理解し、自然な回答をしてくれる優れものだ。手軽で便利な生成AIは日々進化を続け、私たちの仕事に大きな変化をもたらそうとしている。

デジタルマーケターズサミット 2023 Summer」では、AI関連サービスを手がけるELYZAの野口竜司氏が登壇。「AIを活用するには、人間に仕事を頼む時と同じ視点が必要」と語り、AI業界の最新トレンドや実際のプロンプトを解説した。

ELYZA 取締役 CMO 野口竜司氏

ChatGPT時代の文系AI人材になる』(著者:野口竜司 出版:東洋経済新報社)

AIはもうここまで進化した! 簡単なプロンプト入力だけで本格グラフ作成

野口氏が購入した服・雑貨の購入履歴データをChatGPTでグラフ化したもの

野口氏はまず上の図を見せ、「何のグラフでしょうか」とクイズを行った。

結論から言うと、これは野口氏が購入した服・雑貨の購入データをChatGPTでグラフ化したものだ。商品の色や価格、サイズなどが散布図としてまとめられている。

Excelにまとめられた元の購入履歴データ

こちらがグラフ作成に使われたExcelの元データだ。これをChatGPTに読み込ませた上で、ごく簡単なプロンプトを入力するだけで、本格的なグラフを作ることができるという。なお、ここではChatGPT有料版の「code interpreter(改訂後の名称はAdvanced Data Analysis)」機能が使用されている。

「code interpreter」機能を使い、Excelデータからグラフを作成

プロンプトとは、ChatGPTにおける質問文・指示文のことだ。プログラミング言語のような複雑なものではなく、次のような文章を打ち込むだけでよい。

ファッションECサイトの⼀人のユーザーの購買履歴です。
データを読んで以下をグラフでそれぞれ出してください。

  • アイテムカラーの⾊分布図
  • サイズの散布図
  • 価格の散布図
  • 好みのブランド(ワードクラウドで)

たったこれだけで、実務的なグラフがすぐに生成される。野口氏の著書のタイトルではないが、統計やプログラムの知識がなくとも、誰もがAIを使える時代はもう到来しているようだ。

「話す力」と「動く・作る力」の生成AIが突然変異的に進化

野口氏がCMOを務めるELYZAは、一言で言えば「言語AIのプロフェッショナル」だ。ChatGPT登場以前からAIの研究を続けてきたが、2023年の今、ついに“AI激動時代”が到来したと野口氏は感慨深げに話す。

AIの「4タイプ分類」

そもそもAIは4つのタイプに分類される。これらは基本的には人の能力の模倣だったり、その一部を切り出したりして再現したものだという。

  • 見る力→識別系AI
  • 予測する力→予測系AI
  • 話す力→会話系AI
  • 動く・作る力→実行系AI

この4つのうち、直近の1~2年で飛躍的に発展したのが「話す力」の会話系・言語AIと、「動く・作る力」の画像生成AIだ。

4類型のうち「話す力」「動く・作る力」のAIが飛躍的に進化した

会話系・実行系の生成AIが突然変異的に実力を伸ばし、AIの社会的地位や注目度を一気に引き上げたというのが今の状況です。『機械にはここまではできないよね』と言われていたような創造的な仕事も、むしろAIのほうが得意なのでは? となっています(野口氏)

生成系AI「Midjourney」で作った野口氏のアバター画像

上の画像は、画像生成系AI「Midjourney(ミッドジャーニー)」に野口氏の写真を読み込ませ、たった1行のプロンプトを打ち込んだだけで出力されたアバター画像だ。

リアル風・3Dなど、1枚の画像から無限に創造が生まれる

上図も同様に画像生成AIによる作品。このように、1枚の画像から無限のクリエイティブを生み出せる時代になっている。

ただし、画像系の生成AIについては肖像権・著作権などの問題がクリアされておらず、商用利用には慎重になるべきです。しかし技術的な面では、素直に驚けるレベルになっているのも間違いないと思います(野口氏)

ホワイトカラーの仕事こそ、AIで代替しやすい時代に

AIの技術力向上は、実は周期的に発生している。歴史をさかのぼると、2000年~2010年頃が「第3次AIブーム」にあたる。識別系AIの性能向上・ビッグデータを処理するディープラーニング技術が確立されたのが、まさにこの時代だった。

生成AIの発展によって、ホワイトカラー業務の代替可能性が高まっている

第3次AIブームの段階では、自動運転の実用化など、フィジカルな仕事がAIによって置き換えられる可能性が高いと考えられていた。また、ゼロから新しいものを創り出すようなクリエイティブ系業務は、AIでの代替が難しいとの評価が主流だった。

しかし、2020年代から始まった第4次AIブームで議論が一変。「ホワイトカラー的業務こそAIが行い、手先を使うようなフィジカル系業務はむしろAI化できないのでは」という逆転現象が起こっていると野口氏は分析する。

米国MIT(マサチューセッツ工科大学)の調査でも、
AIはホワイトカラー業務の時間短縮に繋がっていることが明らかになった

米国MIT(マサチューセッツ工科大学)が行った実験でも、AIの威力は証明されている。ホワイトカラー従事者を「ChatGPTを使うグループ」「使わないグループ」にわけ、生産性を比較する実験だ。結果、ChatGPTを使ったグループの方が、作業時間を37%削減できたという。

言語AIは人間の意図をどこまで理解できる? GPT-4 vs Google Bard

ここで野口氏は、比較的身近な言語系AIの実験として、GPTシリーズの最新版にあたる「GPT-4」と、Googleが開発した対話型AI「Google Bard」の比較を行った。AIが人間の感情をどこまで理解できるのか測るのが狙いだ。

Aさんはもう結婚して5年経つ、料理上手の旦那のBさんにこう言いました。
Aさん: 「そういえば、駅前にできたお惣菜屋さん、すごく人気らしいよ。」
Bさん: 「へー、そうなんだ。」
Aさん: 「家庭料理を中⼼に、健康にも良いレシピで、さらにコスパもいいみたい。毎日そこでもいいかもねー!」
それだけ言うとBさんは不機嫌になってしまいました。なぜですか。

このようなプロンプトを入力したところ、両AIとも「Bさんが『自分の料理が必要とされていない』『料理への努力や技術が無視されている』と感じた」というような回答を出した。人の気持ちをくみとっているとも考えられる結果だ。

Google Bardの返答
GPT-4の返答

ただし、「Aさんはどう話をするべきでしたか?」という追加質問をすると、回答には違いが見られたという。

追加プロンプトに対するGoogle Bardの返答は、少し不躾な印象?

Google Bardは「たまには違うものを食べたい」と、Bさんの神経をやや逆撫でするような回答を出した。場合によっては相手を逆上させてしまうかもしれない。

GPT-4の方が、相手を気遣っている感が強い?

一方でGPT-4は、「あなたの料理は一番美味しいけれど、一度他のものを試してみれば、なにか新しいアイデアを得られるかもしれない」という、非常に現実的な言い回しを提案した。野口氏は、「GPT-4は他の言語系AIと比べても、なかなか高い知的能力を持っている」と評価する。

『GPT-4最強』とはよく言われますが、それも納得できるレベル。AIの感情理解力も、ここまできています(野口氏)

AIを使いこなしたいなら、「プロンプト上手」になろう

講演後半、野口氏が多くの時間を割いたのが「プロンプト上手」になるためのテクニックだ。GPTをはじめとした言語系AIでは、プロンプトの書き方ひとつで、回答に大きな違いが出るという。

仕事にAIを組み込む以上、プロンプトをしっかり使いこなさなければならない。プロンプト力をどう上げるかというのが、どの職種においても、今後最も重要なことだと思います(野口氏)

ポイントとして挙げられたのが、以下の7つだ。

プロンプト上手になるための7つのポイント

野口氏は「人から人に頼み事をするときと、基本的には変わらない」と語る。たとえば上司が部下に仕事を頼むとき、より明確で具体的な指示であったほうが伝わりやすい。後からフィードバックがあればさらに精度が向上するだろう。人への指示が上手い人は、AIへの指示も上手いというワケだ。

実際のプロンプトでも特に有効なのが、「あなたは○○なので、□□してください」と、役割と依頼を与えること。野口氏はこれを「鉄板のテクニック」としている。

「あなたは織田信長です」と役割を与える例

たとえばGPTで、「あなたは織田信長です。織田信長として振る舞い、私が入力する質問に対して無骨な発言で質問に答えてください」というプロンプトを入力すると、返答や口調が上のように変化する。

コーチングを依頼する例

上図はコーチングを依頼する際のプロンプト例。「出力形式」の指示として「カジュアルな文言 ・絵文字を入れて」というプロンプトを織り交ぜたものだ。

文章の要約・マインドマップ化を依頼する例

また、プロンプトは長文でも構わない。「『#書籍の本文』の内容をマインドマップにまとめて、PlantUML(UMLダイアグラム作成のための言語のこと)で出力して」とすれば、要約図を作ってくれる。「#書籍の本文」には要約してほしい文章を指定すればよい。

プレスリリースに関する想定問答を出力させる例

広報担当者ならプレスリリースをGPTに読み込ませ、「想定質問と回答例を挙げて出力して」と頼むのもいいだろう。「想定質問が聞かれる可能性を★で5段階評価して」と自己評価を指示することもできる。

効果的なプロンプトを作るコツは「7つのR」にあり!

ここまで紹介してきたようなプロンプトの書き方を、野口氏は「文系AI式7Rプロンプト」と呼び、フレームワークとしてまとめている。

AIへの指令力を上げるフレームワーク「文系AI式7Rプロンプト」

1. Request (依頼) 

「アイデアを出してください」「要約してください」など。

2. Role(役割)

「あなたは広報担当者です」「あなたは経営のプロです」など。

3. Regulation(形式)

「絵文字を入れて」「表組みで」「JavaScriptで」など。

4. Rule(ルール)

「想定質問と回答例を3つずつ挙げてください」など。

5. Review & Refine(評価・改善)

「回答を★で5段階評価して」「100点満点で自己採点して」など。自己改善につながる。

6. Reference(参照知識・例)

より精度の高い回答に必要な知識や具体例。

7. Run Scenario(実行シナリオ)

「ここで1つ質問をしてください」など。あらかじめ会話の流れを作っておく。

 

これら7つのRを完璧に使いこなせるのが「プロンプトマスター」だと野口氏は語る。とはいえ、最初から7R全てを使うのは難しいかもしれない。

「依頼・役割・形式」の3つからなる簡易プロンプトの例

そこで最初は簡易プロンプトとして、「依頼・役割・形式」の3つを意識するところから始めてみては、と野口氏はアドバイスする。前述の織田信長の例も、この3つの要素からなる簡単なプロンプトだ。

詳細プロンプトの例

これに慣れたら次のステップで、「ルール・評価・参照知識・実行シナリオ」を加えていく。テストプロンプトを重ねて調整していけば、より精度の高い回答が得られ、自分だけの対話エージェントを作ることもできるだろう。

「ルール」は8つに細分化できる

また、野口氏によれば、7Rの中の「ルール」については、さらに細分化できるという。AIの制御力を高め、より実用的な結果を得るのに重要なポイントだ。

  • BACKGROUND(背景)
  • TARGET(ターゲット)
  • INCLUDED(含めること)
  • PROHIBITED(禁止すること)
  • SLYTLE(スタイル)
  • AMOUNT(量)
  • ABSTRACT(抽象度/具体度)
  • ORDER(順番)

なお、今回紹介された7つの要素の早見表がこちら。ぜひ参考にしてほしい。

7Rプロンプト早見表①
7Rプロンプト早見表②

GPTによってマーケティングはどう変わる? 人とAIの分業へ

講演中のデモでは、ELYZAが開催したセミナーに関するレポート記事をGPTに読み込ませ、「小学生でもわかるようにリライトしてください」というプロンプトが実行されるシーンがあった。

ターゲットに応じた書き換えを短時間・高精度で行うことができる。セグメント別のコンテンツ生成など、マーケティングにおける活用の場面は十分にあると思います(野口氏)

野口氏は、ChatGPTがマーケティング業界にもたらす変化として8つの項目を挙げ、各項目ごとにどんなプロンプトが想定されるかを紹介した。

GPTによって代替できそうなマーケティング業務
各業務ごとのプロンプト例

やはりコンテンツ生成への影響は大きい。ターゲットごとにベースをアレンジするのはもちろん、コンテンツをゼロから生み出せるようにもなるでしょう。とはいえ、マーケティング分野におけるAIのポイントは、顧客とのコミュニケーション分野への適用が可能かどうか。そのために超えなければならない課題は多いです(野口氏)

アメリカなどの英語圏ではAI研究が進んでおり、コミュニケーション分野での実用化に向けたチャレンジが広がっている。日本においては、先行する欧米圏の動向を注視しつつ、対応を見極めていくことになるだろうと野口氏は指摘する。

人間とAIの分業関係を示した図。左から右へいくにつれて、AIの比重が高まる

今後、人間とAIの分業体制はますます進んでいくだろう。野口氏は「AI分業の4つの段階」として、T型→逆T型→I型→N型へと、分業比率が変わっていくと予想する。

これまでは人の仕事をAIが補助していましたが、これからはそれが逆転していく。AIが独立して単独タスクを実行したり、AI同士が連携して複数のタスクを行ったりする時代が来るかもしれません(野口氏)

AIに仕事を奪われるという不安はもちろんあるだろう。しかし野口氏は、「このような新しい分業の形を、人間が自ら作り出していくというようなスタンスで、新時代を乗り切るというのもひとつの道」だと語る。AIの成長を前に、人間もまた歩みを進めていくことの意義に触れ、野口氏は講演を締めくくった。

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