ユーザーの閲覧情報を把握するために使われていたCookieの規制が本格化します。特に、Googleが提供するブラウザであるChromeにおいては、サードパーティが発行したCookieのサポートが廃止されることが決まっています。ChromeのCookieサポート廃止は延期されていますが、広告主・メディアはCookie規制による対策が迫られています。
そこで、アタラではCookie規制への対策実施状況を把握すべく、広告主を対象に「Cookie規制に関する調査」を実施しました。本記事では、調査結果から見えたCookie規制に対する理解度と対策実施状況、そして課題についてひもときます。
目次
十分に進んでいるとは言えないCookie規制への理解
「Cookie規制についてどの程度理解していますか?(単一回答)」という質問に対しては「十分理解している」が24.1%、「多少理解している」が44.3%、「ほとんど理解していない」が20.2%、「全く理解していない」が11.4%と続きます。
7割近い人はCookie規制について理解しているものの、理解していない人は3割を超え、一定数存在することが判明しました。規制による影響を受ける部分を理解するには周辺知識の習得も必要であり、体系的な情報収集は簡単とはいえません。規制に対する認知度は高まっていますが、広告主にとってCookie規制に関する情報収集が難しいことが理解不足の理由の一つと思われます。また、理解不足が継続すると適切な対応が遅れてしまう可能性が高まります。
Cookie規制による影響が最も大きいのは検索連動型広告?
「最も影響を受けると思われる広告戦略を教えてください(単一回答)」という質問に対しては「検索連動型広告」が41.3%で最も多く、「SNS広告」が35.9%と続きます。Cookie規制により最も影響を受けるのは、4割が検索連動型広告、3割がSNS広告と考えていることが明らかになりました。
一方「Cookie規制に対するあなたの懸念を教えてください(複数回答可)」という質問に対しては「ターゲティング精度の低下」が47.7%で最も多く、「計測精度の低下」が32.6%、「KPI設計への影響」が30.3%と続きます。
Cookie規制の影響で、ターゲティング精度と計測精度の低下が影響を受けると、適切なマーケティング施策を選ぶことや評価が難しくなります。そのため規制が本格化する前に、Cookieに依存しないターゲティング手法の実施や施策の評価方法を検討する必要があります。
Cookie規制に対してやるべき対策とは?
Cookie規制への対策状況や具体的な施策について見ていきましょう。「Cookie規制への対応策を既に講じていますか?(単一回答)」という質問に対しては「対策している」が20.8%、「まだ対策はしていないが、検討している」が49.6%、「対策する予定はない」が24.6%となりました。対策していない広告主は74%に及びます。
Cookie規制に対して「対策している」「まだ対策はしていないが、検討している」と回答した人を対象に、具体的にどのような対策を講じているか質問したところ、以下のような回答がありました。
・クッキーポリシーの制定、的確な利用目的を掲載した上での加工を施しターゲティング化する
・以前とは異なる方法での広告出稿
・Cookieを使用しない広告手法の開拓
Cookieポリシーの制定など法務に関する対応、Cookieを使用しない手法の開拓など技術に関する対策が挙げられました。
Cookie規制により、リターゲティング広告をはじめとするサードパーティCookieを利用したターゲティング手法においては、すでにiOSユーザーへの配信が減少するなど、広告効果が低下しています。それでは具体的には、どのような代替策が考えられるでしょうか。アンケート回答にもあったとおり、サードパーティCookieに依存しない広告配信手法が対策として挙げられるでしょう。ここでは三つ紹介します。
●顧客データを使用する
代表的な手法として、メールアドレスや電話番号などの顧客データを用いてターゲティングを行う手法です。顧客から許諾を受けて提供された個人情報をプラットフォームにアップロードし、プラットフォームが保有する情報と突合してオーディエンスリストを作成します。さらに、このリストの類似セグメントを作成したり、オーディエンスシグナルとして追加したりすることで、コンバージョンする可能性の高いユーザーに対して広告を配信できます。
●ファーストパーティデータを利用する
媒体が保有するファーストパーティデータを利用した広告配信手法も、活用が進むことが想定されます。Google 広告、Yahoo!広告、Meta広告などの主要プラットフォームにおいては、各プラットフォームが提供するアプリやサイト上でのユーザー行動データを基にターゲティングを行うことが可能です。また、楽天やAmazonなどのECサイト、docomoなどの事業者は豊富な顧客データを保有しています。楽天においてはRakuten Marketing Platform、AmazonではAmazon Ads、docomoはdocomo Ad Networkを提供しています。
●共通IDソリューションを活用する
共通IDソリューションを用いた配信手法の活用も考えられます。なお、ユーザーからの許諾を得た上で生成される確定IDを用いた手法は、精度は高いですが、配信ボリュームが少ないという特徴があります。ユーザーの行動などの情報を基に生成される推定IDを用いた手法は、配信ボリュームは多いですが、精度が低いという特徴があります。
上記の代替案の検討は行われていると想定されますが、導入に至らないのは、これらの対策がリターゲティング広告の効果に及ばないと考えられていることが一因と思われます。
企業内のCookie規制に対する理解促進は、知識・リソースの両方に課題
「Cookie規制に対応するための社内教育は実施していますか?(単一回答)」という質問へ「いいえ」と回答した人に「社内教育を実施していない理由を教えてください(複数選択可)」と質問したところ「社内教育が出来るほど専門知識を持つ担当者がいない」が43.1%で最も多い結果となりました。次点は「社内教育に割ける時間がない」の28.2%で、知識・リソースの両方に課題があることが分かりました。
知識においては、法務と技術の両面で理解する必要があります。法務面においては改正個人情報保護法や改正電気通信事業法、技術面においてはコンバージョンAPIによる計測やサードパーティCookieに依存しないプロモーション戦略の立案が挙げられます。法務・技術の両側面からのアプローチが必要なことからも、複数部署にわたってプロジェクトチームを組成するなど、企業の全社的な課題として捉えて、規制へ対応していくことが求められているといえるでしょう。
まとめ
今が対策実施と情報収集のラストチャンス(小湾)
今回の調査では、Cookie規制の理解度と対策状況が明らかになりました。Cookie規制の前と後ではマーケティング施策の環境が大きく変わります。広告施策においてはCookieに依存しない手法の導入や、広告以外の施策を含む効果測定と検証が重要になります。また、施策を行うには法令遵守の観点も欠かすことができません。ChromeのCookie規制が再延期された今が、段階的な対策を実施し、知識を深めるラストチャンスです。
広告主の方々が、具体的な影響を正確に理解して対応していくには、継続的な情報収集を行い、適切な支援会社を選ぶことが重要になってくるでしょう。
求められるのは誰に・何を・どのように伝えるかの見直し(星野)
Cookie規制においては代替策の検討が進んでいる一方で、対策を実行しきれていない状況です。これまでの運用型広告ではリターゲティング広告の成果がよいことが多かったことからも、同程度のパフォーマンスを上げる代替策を期待する広告主も多いことが推測されます。リターゲティング広告においては、ユーザーの許諾なく行動データを収集してターゲティングに活用していることから、プライバシー保護の観点で規制の対象となりました。今、広告主の皆さまに求められているのは、リターゲティングといった「手法」の代替ではなく、誰に、何を、どのように伝えるかという点に立ち戻り、マーケティング戦略を立案していくことではないでしょうか。
アタラでは本記事で紹介したCookie規制の対策についてもコンサルティングを行っています。「サードパーティCookieに依存しない広告配信手法・計測手法の導入」や「デジタルマーケティング戦略の抜本的な見直し」など、新たな取り組みを検討される際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
「アタラ Unyoo.jp 特選コラム」掲載のオリジナル版はこちらCookie規制への対策は正しくできているのか:Cookie規制に関する調査より2024/05/28
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オリジナル記事:Cookie規制への対策は正しくできているのか:Cookie規制に関する調査より【アタラ Unyoo.jp 特選記事】 | アタラ Unyoo.jp 特選記事
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