Cookie規制対応は本当に必要? 本質を理解すれば「何もしない」も一つの手かも | 【レポート】Web担当者Forumミーティング 2024 春

【レポート】Web担当者Forumミーティング 2024 春
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yu-ta(ゆーた)26歳、会社員 PC.スマホ周辺機器やスマート家電など ガジェットを使って スマートな生活を送っています。 このサイトでは管理人おすすめの 最新の便利ガジェット情報や お得に買えるセール情報を中心に 発信しております。
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Webマーケティング、広告に大きな影響を与えつつある「Cookie規制」。しかし、Cookieが完全に使えなくなるわけではない。

Web担当者Forum ミーティング 2024 春」に登壇した博報堂の土井 京佑 氏は「ポストCookie対策を進めるためには『正しい理解』が必要」と語る。何がどう変わるのか、どのような戦略・施策を考えるべきかを解説した。
 

※なお、講演を実施した2024年5月時点では、Chromeの3rd Party Cookieの廃止が予定されていたが、7月22日に「3rd Party Cookieの廃止を見送る」と発表した。本記事は、5月時点の講演情報をまとめているので、その点はご留意いただきたい(編集部)。
株式会社博報堂 CRM&システムコンサルティング局 データプラットフォームグループ グループマネージャー 土井 京佑 氏

Cookieの機能と規制範囲を正しく理解する

Cookie規制の理由にもなっている、「データプライバシーの問題」。ユーザーが知らぬ間にデータが収集され、第三者に提供されているという状況、とりわけデータ収集/提供を行う事業者が不透明でコントロールできないことが問題視されてきた。その解決において、土井氏は、「大きく2つの捉え方がある」と指摘する。

  • 法的な規制:個人情報保護法改正による個人情報収集・活用における同意取得の義務化
  • 技術的な規制:SafariやGoogle Chromeなどのブラウザによる「Cookie利用制限」

今回は、「技術的な規制」の話を中心にしていく。

ブラウザとは? Cookieとは?

そもそもブラウザは「Webサイトを閲覧するためのソフトウェア」であり、Cookieは「Webサイトに訪問したユーザー情報を保存しておくためのブラウザ機能」である。Web上やサイト上の機能と表現されることもあるがそれは誤りで、あくまでCookieは「ブラウザの機能」であることを押さえておきたい。

また、Cookieは悪者扱いされることがあるが、「快適なブラウザ体験」を得るために使用されている。たとえば、次のようなことだ。

  • サイト内でのログインの継続
  • 動画の途中停止部分からの閲覧
  • お気に入り登録 など

またCookieは2種類ある。

  • 1st Party Cookie:サイト主が発行する
  • 3rd Party Cookie:サイト主でない第三者(広告/各種ツールベンダー)が発行する

サイト主が発行する「1st Party Cookie」と、サイト主でない第三者(広告/各種ツールベンダー)などによって差し込まれるJavaScriptが発行する「3rd Party Cookie」があり、「リターゲティング」や「コンバージョン計測」などに利用されている。

なぜ、Cookieは規制されるようになったのか?

それではいったいCookieの何が問題なのか。土井氏は、「ネットにおけるユーザー保護の需要が高まり、マーケティング潮流が変化していること」を挙げる。

2011年頃より純広告から運用型広告へシフトし、2014年前後でDMP(Data Management Platform)の外部データを利用して広告のターゲティングを行うようになった。2016年にはDMPがCDP(Customer Data Platform)と呼ばれるようになり始め、自社データの蓄積・活用が推奨されるようになってきた。そして2018年頃からAIによる広告の最適化が始まり、2020年頃にはCookie対策の必要性が強調されるようになった。

マーケティング潮流(2011~2020)

そうした機運に伴い、Cookie規制については、2018年にアップル社がSafariブラウザで「3rd Party Cookie」を無効化することを宣言し大きなインパクトを与えた。その後、2019年にパラメータ付き広告について「1st Party Cookie」も24時間で無効化すると発表し、2020年にはiOS配下のすべてのWeb Viewが規制の対象になった。

そして、「規制する」と言い続けているGoogle Chromeブラウザもいったん延期になったものの、近いうちには「3rd Party Cookie」の規制がなされると言われている。こうしたことから日本における利用ブラウザのうち97.2%がCookie規制を進めていることになり、もはや不可逆と言える状況だ。

※2024年7月22日の発表で3rd Party Cookieの廃止は見送られた(2024年5月時点の講演情報で記事を構成している)。
マーケティング潮流(2018~2024)

リターゲティング広告、広告コンバージョン計測などに大きな影響

こうしたCookie規制に伴い、マーケティングにはどのような影響があるのか。Cookie規制が進んでいるアップル社の状況を確認してみよう。

Cookie規制の対象と詳細

まず、「1st Party Cookie」については、GA4などアクセス解析ツールによるサイト内行動データの計測、広告コンバージョン計測に影響が出る。具体的にはCookie発行後、7日で削除され、広告経由の場合はCookie発行後、24時間で削除されてしまう。

つまり、サイトに来てくれた人が1週間後に来てくれても“同じ人”とは気づかれない。まして広告経由で来た人については1日後には“他の人”として認識される。そうなると新規と既存ユーザーが区別できなくなり、流入元も把握できなくなる。コンバージョンはもちろんリーチやフリークエンシーなどが正しく計測できないという影響が出る。

Cookie規制による影響

また「3rd Party Cookie」は即削除され、ターゲティング広告の行動ターゲティングやリマーケティング広告、広告コンバージョン計測ができなくなる。つまり、リターケティング広告やアドネットワーク媒体でのオーディエンス配信ができず、コンバージョン計測が正しくできなくなる。

この解決策について、土井氏は「1st Party Cookie」については自社サイト内の計測基盤を強化していくことに尽きると語る。一方、「3rd Party Cookie」については、「これにとって代わる代替策はない。新しい代替技術の登場を待つ他ない」と評した。

なぜCookie規制への対応が必要なのか?

それでは、なぜCookie規制への対応が必要なのか。土井氏はデジタルマーケティング界隈で2つ大きな影響がでていることを指摘した。

計測視点

まず、1つめは「計測視点」の影響として、アクセス解析や広告コンバージョンが正しく計測できなくなることが挙げられる。国内の半数近くがiPhoneユーザー、すなわちiOS、Safariユーザーであり、Cookie規制の影響を大きく受ける。つまり、既にサイト内行動データや広告コンバージョンが正しく計測できていない可能性がある。

たとえば、ある広告からWebサイトへ誘導し、6件のコンバージョンがあったとしても広告を踏んで初回来訪から24時間過ぎた人が3人いたら、3件分のコンバージョンしか計測できず、全量データを計測できないことになる。運用型広告では過去のコンバージョンデータを広告AIが学習して運用効率を改善していくが、データが欠損すれば、広告の最適化も不完全になってしまうというわけだ。

計測視点

広告最適化視点

そして、2つ目は「広告最適化視点」から、広告媒体でのコンバージョン最適化の学習機能が難しくなっていることがある。広告媒体で正しくコンバージョン計測ができないために、数量や経路などのデータを基にしたAI分析による広告配信最適化機能が働かなくなる可能性がある。

広告最適化視点

Cookie規制による影響を回避するための3つの施策とは?

それではCookie規制に対して、具体的にどのように対策をとっていけばいいのか。

土井氏は、代表的な対応策として「アドバンスドマッチ」「コンバージョンAPI」「サーバーサイド計測」の3つを挙げ、「これをすべてやる必要があるというわけではない。自社の環境にとってどれが最も効果的か、優先順位を決めて順次取り組んでいくことが望ましい」と語り、それぞれについて説明した。

対策①アドバンスドマッチ

Cookieに依存せず、申込みフォームなどによって、ユーザーの許諾のもとに得た個人情報(メールアドレスなど)をタグに記載してプラットフォーマー側へ送信し、サイト側でコンバージョンが生じた時に突き合わせて計測する。

アドバンスドマッチ

対策②コンバージョンAPI

広告主が計測用のサーバーを立て、コンバージョンが起きた時に、そこからAPIでプラットフォーム側へサーバー発行のCookieやメールアドレス、電話番号などのデータを送り、登録済みのユーザー情報と照合して計測データを処理するというもの。個人情報は必須ではないが、使用したほうが正確に計測できる。

コンバージョンAPI

対策③サーバーサイド計測

広告主の計測用サーバーから、規制の影響を受けないCookieを発行し、プラットフォーム側サーバーやアクセス解析ツールで分析を行う。

コンバージョンAPI

「コンバージョンAPI」と「サーバーサイド計測」では、ともに「サーバー側で発行されたCookie」が鍵となる。もともとCookieは2種類の発行手段があり、JavaScriptで発行されたものは1st、3rdともCookie規制の影響を受けるが、サーバー側で発行したものは1stについてのみCookie規制の影響を受けず、削除されることはない。これを活用するというわけだ。

しかし、以上の3つの施策をすべて行えば、Cookie規制の問題が解決するとは言い難い。この後、サーバーサイドのCookieまですべて廃止される可能性は否めないからだ。土井氏は「あくまでも個人的な見解として」と前置きしながら、以下を述べた。

絶対にすべて廃止されないとは言えませんが、代替となる新技術が現れるまでは当面の間、Cookieがすべて使えなくなることはないと思います。なぜなら、ログインの継続や動画の情報維持、お気に入り登録などにもCookieが関与しており、それがなくなることでブラウザのユーザビリティそのものを損ねかねないからです(土井氏)

場合に応じ「何もしない」もあり。本質的な解決の鍵は「1st-Partyデータ」

以上の3つの施策については、取り急ぎの“応急処置”としては有効だが、規制とのイタチごっこになる可能性も否めない。そこで、土井氏があえて提案するのが「取り急ぎは何もしなくてもいい」「1st-Partyデータの収集を強化する」の2点だ。

取り急ぎは何もしなくてもいい

まず、「取り急ぎは何もしなくてもいい」に該当する会社とは、検討期間が短く、初回サイト来訪からコンバージョンまで7日以内で解決するような場合だ。Cookieは発行後7日間で削除されるので、その前に解決していれば影響は受けない。そして、ECサイトなどで会員情報が計測できており、Cookieによる計測に頼る必要がない場合もあえて対応は不必要だろう。また、無料資料請求などコンバージョンのハードルが低く、検討や再来訪を前提にしていない場合も該当する。

1st-Partyデータの収集を強化する

「1st-Partyデータの収集を強化する」については、カスタマージャーニーをしっかりと捉え、その折に触れてデータを取得することが必要だ。つまり、広告接触からサイト来訪、申し込み、商談、成約、そしてLTVの向上まで、一気通貫でユーザーごとに人を把握して、マーケティングを実施することが求められる。しかし、Cookieが使えなくて分断しているケースもあり、統合するデータ基盤がないために実現が難しい。

それでも広告接触から申し込みまで24時間以内に完了していれば、Cookieによって広告側からほぼリアルタイムで状況を把握できる。しかし、申し込み後は商談から成約まで数日、数週間かかるという場合、さらにリピーターとしてLTVを高めたい場合、Cookieに頼らない施策が必要だ。そこで重要になるのが「1st-Partyデータの正しい収集と蓄積、連携」というわけだ。

1st-Partyデータの収集を強化する

土井氏は「Cookie自体が使えなくなるわけではないが、「3rd Party Cookie」はもうないものと考え、サーバー側から発行される「1st Party Cookie」を用いた対策を、ビジネス環境に応じて検討することが妥当」と語り、「さらに本質的で最も有効な手段は1st-Partyデータの整備とその活動にある」と強調し、セッションのまとめとした。

 

※なお、講演を実施した2024年5月時点では、Chromeの3rd Party Cookieの廃止が予定されていたが、7月22日に「3rd Party Cookieの廃止を見送る」と発表した。本記事は、5月時点の講演情報をまとめているので、その点はご留意いただきたい(再掲:編集部)。

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