この記事では、ローカルSEOやローカルビジネスオーナーに関係がありそうなポイントを、Mozが開催するSEO&マーケティングの大規模イベント「MozCon 2023」で語られた内容からお届けする。
前後編の前編である今回は、リンクのカテゴリ分けやAIにどう対応するかについてを解説する(後編では、動画SEOや地域密着のLPでのポイント、筆者のAIに関する見解を紹介する予定だ)。
SEO業界で最も愛されているイベントの1つであるMozConについて、毎年恒例となったこのまとめ記事をお届けできることを嬉しく思う。MozCon 2023で特にローカルSEOに焦点を当てた講演は1つだけだったが、複数の講演から、私たちローカルSEO担当者やローカルビジネスオーナーに関連性が高い多くの収穫があった。
前置きはこれくらいにして、さっそく見ていこう。
今回ピックアップしたローカルSEOのトピックは次のとおりだ:
- リンクのカテゴリ分けをしているか?
- AIに関する方針は決まっているか? AIに対する筆者の見解
- ローカルマーケティングの機会を最大限に活用しているか(後編)
- オンページ動画のSEO
- TikTokのSEO
- 地域密着事業のランディングページ
- ブランド構築
- 常に顧客ファーストであれ
- AIが検索や社会に与える影響(後編)
リンクのカテゴリ分けをしているか?
正直に言うと、ローカルリンクの構築に関するアマンダ・ジョーダン氏のプレゼンテーションは、私が今年最も楽しみにしていた講演で、実際に期待を裏切らない内容だった。ローカルSEOの担当者やローカルビジネスのオーナーなら、オンラインのビジビリティにとって被リンクの分析や獲得が重要な理由をすでに知っているだろうが、同氏はリンクに関する考え方を洗練性という点で大いに引き上げ、聴衆にサプライズも用意していた。
ちなみに、「リンクを獲得する必要がある」で終わりにするようなアドバイスには注意してほしい。学ぶべきは、そうした中途半端な情報ではなく、米国で人口の多い上位50都市で実施したHVAC(暖房、換気、空調)業界に関する調査の結果としてジョーダン氏が示した、このスライドのようんだ情報だ:
このふつうに考えれば、59件の被リンクを獲得した「SA Service Experts」のサイトが、検索結果の1ページ目に表示される検索キーワードの数で1位になると思うだろう。しかし実際には、そうではない。サイト「One Hour Houston」を見てみると、被リンクは58件とSA Service Expertsより1件少ないだけなのに、1ページ目に表示される検索キーワードの数は191件とはるかに多い。
さらに、1番下のサイト「Penguin Air」を見てみると、獲得したリンクはわずか7件だが、1ページ目表示キーワード数に関しては被リンクが最も多い競合よりわずかに少ないだけだ。
リンクが単に数字だけを追いかける指標だったら、この表のような結果にはならなかっただろう。
ジョーダン氏は、なぜ首位と最下位のビジネスが、獲得したリンク数では差があるのに、獲得したビジビリティ(検索キーワード数)ではそれほど差がないのかを突き止めようとした。次のスライドを見てほしい:
ジョーダン氏が発見したのは、リンク数の少ないビジネスが、リンク数のはるかに多いビジネスに対抗できている要因は、獲得したリンクのカテゴリにあるらしいということだ。
同氏が提案した、ローカルSEOにおけるリンクのカテゴリ分けは次のとおりだ:
- ローカルリンク
- トピックリンク
- サイテーション(引用)
- ツールやクーポンに起因するリンク
- その他
さらにジョーダン氏は、同じ業界を対象とした調査でパフォーマンスが最も高かったローカルビジネスのウェブサイトが、最も多くのローカルリンクとトピックリンクを集めていることに気づいた。
同氏は実際、次のように話していた:
地元のニュースサイトからたった1件の優れたリンクを獲得しているあるローカルビジネスが、検索結果でかなり上位に表示されているのを目にした。
ローカル企業にとってロケーション(場所)は「ローカル」と「トピック」の両方のカテゴリに含まれることを意識すべきだ。
また、リンクのカテゴリが異なれば、異なる業界でより大きな力を発揮する可能性があることにも言及した。自分のサイトの場合のシナリオを理解できるよう、同氏は次のワークフローを提案した:
主な検索キーワードで上位に表示される競合他社を特定する。
お気に入りのツールを使って競合他社のリンクを分析する(Moz Link Explorerで今すぐ確認してみよう、無料で使える)。
競合他社の被リンクをカテゴリ別に分類する。たとえば次のような風に:
- 地元のコミュニティブログにあるリンクのようにローカルなものか
- 業界関連サイトにあるリンクのようにトピックに関するものか
- Yelpなどのサイトで構築されたサイテーションか
- ツールの配布から生じたリンクか
- それとも何か他のものか
独自のカテゴリを作ることもできるが、一貫した結果を得るにはワークフロー全体を通して同じリンクカテゴリ分類を使おう。
データを見て、上位の競合他社が特定のリンクカテゴリに力を入れているかどうかを確認する。
これらのソースが自分にとってリンク機会になるかどうかを特定する。
それらのリンクを獲得する。
ジョーダン氏の会社Rickety Rooは、大規模なリンクの分類を支援するツールを開発中であり、これは役に立つはずだ。それまでは、一部でも良いから手作業でやってみて、ローカルリンクのカテゴリから検討を始め、リンクの種類とビジビリティの間のパターンがわかるように練習しておくことを勧める。
AIに関する方針は決まっているか? AIに対する筆者の見解
自社でAIに関する方針は定めているだろうか? まだの場合は、どうかまだ決めないでほしい。というのも、MozConで1つわかったことなのだが、このAIという話題のトピックに関して、SEO業界内ではさまざまな意見があるからだ。
全体として、AIがゲームチェンジャーである点については意見が一致しているが、それもある程度までの話だ。それに、またしても浮上した「SEOは死んだ」という考えには誰もがうんざりしているが、ChatGPTなどの新たなサービスが最終的にどのような影響をもたらすかについては見方が異なる。
AIによる影響は最強だと予測して私の印象に残ったスピーカーが、ウィル・レイノルズ氏だ。ローカルの観点から私が得た最大の収穫は、生成系の検索においては自分の対象範囲を見極める必要があるということだ(同氏が「SEOのグレート・リセット」と呼んだものについては、Seer Interactiveの記事で詳細を確認できる)。
私もMozのコラムでローカルSEO担当者向けに同じことを書いてきたが、小規模なローカルビジネスのオーナーにとって、レイノルズ氏によるワークフローの一部は、自分の対象範囲を生成AIで一定の割合に到達させるために斬新で実用的だと感じた。
同氏は、ChatGPTやGoogleのSearch Generative Experience(SGE)などでどのような検索が行われているかの感覚をつかむために、Googleの「他の人はこちらも質問」(PAA)機能を使うように勧めている。PAAはより会話型の機能だからだ。
もしこれを大手企業向けに大規模にやるのなら、レイノルズ氏の全プロセスを読むべきなのは間違いない。
しかし、ローカルの中小企業向けであれば、全プロセスを把握するまでいかなくてもいい。単純にこれらの質問をChatGPTやSGEなどに入力し、自分のビジネスに関連する質問に対して表示される頻度を確認してみるだけでもいいだろう。
なぜなら、Googleはローカルリスティングの事実に基づいて情報を作ろうとするからだ。
筆者のMozでの同僚であるトム・カッパーは、最も一般的な検索結果機能は、SERPでもSGEでもローカルな検索結果だと指摘した。トムは、現実的な見解として次のように示した:
人間の手が必要な、よく書けたコンテンツであれば、AIによって壊滅的に破壊されることはない。
これは朗報だが、私はドクター・ピートの指摘にも強く共感した。それは、「近くのレストラン」のような事実に基づくクエリは生成系の検索には必ずしも適さないというものだ。その背後にあるものとして博士が考えている力学は、次のようなものだ:
ドクター・ピートは、検索とAIチャットの違いを、「事実に基づく空間」と「流動的な空間」の違いだと想定している。検索が優れた回答を迅速に提供するのに対し、チャットは事実にこだわらず、当てもなく思考をめぐらせるような、より想像力に富んだ空間だという。
私の経験では、ローカル検索の意図はかなり事実に基づくものが多い。「近くのタコス」「ダウンタウンの美術館」「サンディエゴの眼科医」などは、自由気ままな思考のプロセスを楽しむのではなく、今すぐ具体的に回答するよう求めるものだ。ローカルがSGEの最も一般的な機能である場合、Googleは大きな問題に直面する可能性がある ―― SGEは厳密には事実に基づくものではないからだ。
繰り返しになるが、トムの調査によると、ローカル結果は「従来」のSERPで最も一般的な特徴だ。そのため、ローカルSEO担当者のなかに「ローカルパックに偽情報が含まれるという以前からの問題」を十分に認識していない無能な者などいない。
AIというトピックに関して私がMozCon 2023で耳にしたあらゆる可能性のなかで、次の言葉は、ローカルビジネスとローカルSEOにとって最も重要なメッセージとして、特に深い感銘を受けた。
顧客との接し方が、競争優位につながる(Eximo Marketing アンディ・ジャービス氏)
ジャービス氏は次のようにも述べている:
「マーケティングはかつてないほど急速に変化している」という、マーケティングをめぐる最新の挑発的な論調に僕は同意しない。
それは違う。僕たちが重視するのは、依然として顧客だ。
マーケティングは変わっていない。根本的には。
I disagree with the latest marketing hot take that “marketing is changing faster now than ever before”.
— Andi Jarvis (@andijarvis) August 8, 2023
It’s not. We’re still about the customer. https://t.co/otPeUSoKe8
マーケティングの歴史全体を通して決して変わらないものがいかに多いかというジャービス氏の素晴らしい講演で、同氏は次のように強調した:
大手企業は、本物の人間の顧客と関係を築ける優秀な人間の従業員よりも、AIで保証された効率性を選ぶような動きをしようとしている ―― 大きな間違いだ。
私も同氏と同じ意見で、ローカル企業は常に顧客と心から対話することに努め、実際の人間のニーズを中心につながりを構築できるようにマーケティングを調整することを強く求めたい。実際、テクノロジー分野における「Next Big Thing(次の大きなモノ)」より従業員や顧客を優先する企業は、今後数年間にわたって、獲得した競争上の優位をますます感じるようになると断言したい。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編となる次回は、「ローカルマーケティングの機会を最大限に活用しているか」という視点からMozCon 2023で学んだローカルSEOの重要なポイントとして動画SEO、LP、ブランド構築、筆者のAIに対する見解をお伝えする。
(後編は12/4公開予定)
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オリジナル記事:MozCon 2023で学んだローカルSEOの重要なポイント「リンクのカテゴリ分け」「AI論争」(前編) | Moz - SEOとインバウンドマーケティングの実践情報
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