業界の最前線で活躍する方にオススメの書籍を教えてもらう本連載。今回はマンガ編の第4回だ。お話をうかがったのは、SEOの第一人者として複数企業のコンサルティングを行うほか、全国で講演活動を行う住太陽さん。Web担当者Forumの連載「ひとりSEO担当者の疑問に答えます」でもおなじみの住さんに、影響を受けたマンガについてお聞きした。
SEOコンサルタント以外にも、さまざまな顔をもつ
2002年に国内初となるSEO解説書を執筆するなど、多数の書籍の著者である住さん。実は、2007年に小説を書いて、第19回堺自由都市文学賞を受賞したことがある。受賞作「他人の垢」は、クリーニング店の息子が父親の仕事を後継するかどうかを巡る物語だ。
住さんは、受賞したことよりも、選考委員の藤本義一さん、田辺聖子さん、難波利三さん、眉村卓さんからの講評がうれしかったという。さらに授賞式では、選考委員の作家陣と雑談する機会があり、得難い経験だったと振り返る。
物語を書くことは初めてでしたが、ストーリーを作って、読んだ人にわかるように書く作業は、SEOの仕事にも通じるものがありました(住さん)
現在、SEOの第一人者として活躍する住さんだが、Webの世界に足を踏み入れたのは、27歳のときに事故で大怪我をしたことがきっかけだった。今ならリモートワークができるが、当時は会社に行かないと仕事ができない時代。身体が動かせなくてもできる仕事につかないと、ご飯が食べられなくなる可能性があるという不安をもった。
当時はWindows 98が発売され、インターネットが注目されていた時期。そこで住さんは、インターネットの世界に足を踏み入れることにした。事故の保険金でDOS-V機を購入して組み立て、独学でHTMLを学び、Web制作の仕事をするようになった。そして1999年の終わりに今でいうSEOに出合う。その後は、「中小企業が自社で取り組むSEO」を提唱し、中小企業を対象にSEOのコンサルティングを行っている。
依頼を受けて問題解決をするプロフェッショナルに!
住さんがオススメする1冊目は、言わずとしれた、手塚治虫さんの医療マンガの金字塔だ。何度もアニメ化、ドラマ化、映画化されているので、多くの人が何らかの形で一度は目にしたことがあるだろう。
1冊目 『ブラックジャック』(手塚治虫:著 手塚プロダクション:刊)
『ブラックジャック』を住さんが初めて読んだのは小学生のとき。マンガの単行本を買い揃えたが、保管場所の都合で一旦処分した。その後手塚治虫全集でそろえたもののまた処分。買い揃えては処分を4~5回繰り返し、現在は文庫版でそろえて、手元に置いている。
『ブラックジャック』を読むと、職業人、プロフェッショナルとしてのあり方を考えさせられます。某有名コンサルティングファームでは、『ゴルゴ13』と『ブラックジャック』の話がよく話題にあがるそうです。
ブラックジャックはクライアントの依頼を受けて問題解決をします。そして、引き受けたからには成功させ、その分フィーは安くはない。コンサルタントや医師、弁護士などは、所属する組織があっても、独立独歩のインディペンデントな存在です。ブラックジャックはプロフェッショナルのあり方としてお手本になります(住さん)
子どものころから、ブラックジャックのような職業人に憧れがあったという住さん。怪我をしたときに腕一本で食べられる仕事としてWeb制作を選んだのも、その影響が少なからずあったという。
失敗して倒れたときでも、立つんだジョー!
2冊目は今でもファンが多いボクシングマンガだ。
2冊目 『あしたのジョー』(高森朝雄(梶原一騎):原作 ちばてつや:作画 講談社:刊)
原作者は、「巨人の星」などで有名な梶原一騎さんの別名義の高森朝雄さん。作画を担当しているのは、ちばてつやさんだ。不良だった少年ジョーがボクシングを始め、やがてチャンピオンになるストーリーが描かれている。
住さんは、ジョーくらい才能があっても負けることがあり、しかし負けても立ち上がる不屈の闘志に心を動かされたという。
ジョーは特別な才能の持ち主ではありますが、簡単に負けてボコボコにされることがあります。少年院に入っていたジョーが、後にライバルとなる力石徹にボコボコにされて負かされるシーンが序盤にあるんですが、当時の少年マンガで主人公が負けるなんてあり得ないことで、衝撃でした。
そのうえ、ジョーはやられても立ち上がるんです。独立独歩で仕事をする場合、不屈の闘志は必須です。自分のなかにブラックジャックとジョーがいて、失敗したときにはジョーになってまた立ち上がろうとしてきました(住さん)
『ブラックジャック』は全22巻、『明日のジョー』は20巻と、比較的そろえやすい長さであることもオススメの理由だという。
『明日のジョー』は、少年のころから描かれているので大長編の印象がありますが、展開が早くて大事な試合でも1~2話で終わります。その分、コマの密度が濃くてじっくり楽しめます(住さん)
甘い話には罠がある! 数字もきちんと確認しよう
そして3冊目は、欲をかくと落とし穴があるという教訓に満ちたマンガである。
3冊目 『ナニワ金融道』(青木雄二:著 講談社:刊)
僕は、SEO業界のなかでは慎重派。それがSEOコンサルを長く続けてこれた秘訣でもあります。同業者のなかには、攻めすぎてお客さんのサイトがペナルティを受けたり、会社自体がなくなったりしたという話を耳にします。僕は攻めたことはせず、お客さんに短期的に大儲けさせることはできなくても、大損はさせないという方針で慎重に進めています(住さん)
また、取引先についても、揉めそうなお客さんは避けるように慎重に選んでいるという。
『ナニワ金融道』には甘い話に飛びついて破滅する人がたくさん出てきます。僕は、そんなにうまい話はないと肝に銘じています(住さん)
人間描写が優れた映画や小説が好き
住さんは普段から、人間関係や人間の心理、欲望が描かれた映画、小説、マンガをたくさん読んでいるという。そしてそれがSEOの仕事にもつながっていると話す。
SEOでは、キーワード1つでいろいろ想像する必要があります。キーワードには、検索する人の悩みや欲望が凝縮されているので、それを解きほぐしてコンテンツにしていくからです。
ブラックジャックが、出会った患者の病気や怪我だけでなく、その裏にある人生の問題まで解決するように、お客様が口にする課題の裏にある本当の課題に向き合える自分でありたいと思っています。キーワードの検索順位を良くするという表面的なことだけでなく、根本的な問題の発見と解決ができれば、SEOにも良い影響がありますから(住さん)
住さんが最近読んで面白かったのは『肩をすくめるアトラス』。アメリカの作家アイン・ランドの最高傑作といわれる長編で、少し難しくはあるが展開に夢中になったそうだ。
『肩をすくめるアトラス』の内容を簡単にいうと、新しいものを発見して世の中を発展させる人たちと、消費するだけの堕落させていく人たちがいて、前者が後者に搾取されている世界が描かれています。
そうした世界が嫌になって出ていく人もいますが、全体を通して、世の中をつくっていく側の人になろうというメッセージがあって、おもしろかったです(住さん)
住さんが紹介してくれたマンガはどれも、「人間」がいろいろな視点から描かれた作品ばかり。『ブラックジャック』と『明日のジョー』の主人公たちは、プロフェッショナルとして一人で仕事に取り組んでいく際に参考になる生き方だ。『ナニワ金融道』は、一人で会社を運営するにあたっての戒めになる内容がたくさん描かれている。ぜひ、読んでみてほしい。
住太陽(すみ もとはる)
SEOコンサルタント。
SEOには1999年から従事しており、一貫して「中小企業が自社で取り組むSEO」を提唱、2002年には国内初となるSEO解説書を執筆したほか、多数の執筆や講演をこなしている。また公式サイト「ボーディーSEO」でSEOのハウツー情報を無料で提供している。
- X: @motoharusumi(個人)
- X: @bodhiseo(ボーディーSEO)
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オリジナル記事:SEOコンサル 住さんが影響を受けたマンガ3選! ~ブラックジャック、あしたのジョー、ナニワ金融道 | Web担 オススメの課題図書
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