近年、キャリアに関する思想や働き方が変わっているのを背景に、日本でもLinkedInに注目が集まっている。
LinkedInとは、世界200か国に9億人の登録者がいるSNSだ。実は、TwitterよりもLinkedInのほうがユーザー数が多い。しかも意外と歴史は古く、2003年にアメリカでサービスを開始した。Facebook(2004年リリース)やTwitter(2006年リリース)よりも先に誕生しているのである。
本記事ではLinkedInの特徴に加え、「個人利用」「企業利用」の観点で最低限知っておきたい情報をLinkedIn の堀 母日花(ほり・もにか)氏に聞いた。
LinkedInの特徴とは? 運営会社はどこ? 日本のユーザー数は?
フォローやタイムライン、DM機能など基本機能は他のSNSとの違いは少ないが、「ビジネスに特化している」のが最大の特徴である。理由として、求人情報を掲載できることが挙げられる。またプロフィールを作成するにあたり、次の情報を登録できる:
- 原則実名
- 顔写真
- 職歴(会社名・役職)
- 学歴(卒業校・専攻・卒業年度)
- スキル
- 資格
- 言語 など
注目すべきは、性別や年齢などの項目がないこと。発祥地のアメリカをはじめ海外では、経験やスキルに着目してキャリアを築くジョブ型雇用が多く、履歴書に性別や年齢を記載しないのが一般的だ。
そのため「プライベートの内容はFacebook、ビジネスに関する内容はLinkedIn」と使い分けられることが多く、ビジネスシーンではLinkedInが名刺代わりになっている。投稿される内容も、ビジネスに関する情報交換を目的としたものがメインで、炎上するケースは少ない。
LinkedInのミッションは、『世界中のプロフェッショナルの生産性を高め、より成功するようつないでいく』こと。自分たちのキャリアや仕事を助けるサービスとして捉えられているユーザーが多いです(堀氏)
日本では、2011年にLinkedIn Japanを設立し、同年に日本向けサービスを発足させた。ユーザー数は毎年増加し、現在は300万人を超えている。日本人のインフルエンサーとしては、楽天の三木谷 浩史氏や、Zホールディングスの川邊 健太郎氏らが挙げられる。
ユーザー層にも変化が見られ、当初は英語コンテンツが多いことから海外経験のある人の利用が多かったが、いまは海外経験にかかわらず、業種も製造業やコンサル業など幅広い業種で利用が増えているという。
ちなみにプロフィールを作成すると、GoogleやYahooなどの検索エンジンに表示される。設定画面から、公開する情報を制限したり、検索エンジンに非表示にしたりすることもできる。
LinkedInで何ができる? 機能と活用法を紹介!
LinkedInで使える機能とその活用方法をより具体的に見ていこう。サービスは大きく次の2つに分かれる:
- 個人向け
- 法人向け
個人向けの機能としては、主に次の3つがあげられる:
- 関係性の構築
- 情報収集
- 自分に合う仕事探し
個人向け機能1関係性の構築
Facebookでいう「友達」、Twitterの「フォロー・フォロワー」のように、LinkedInでは「つながり」を申請することで、お互いをフォローできる。
また無料で提供している「クリエイターモード」をオンにすると、自分の投稿がつながり以外の人にも表示されやすくなり、影響力を高められる。
個人向け機能2情報収集
他のSNSと同様、フォローやつながっている人の投稿や企業の投稿が流れてくる。それに加え、ユーザーのプロファイルにあわせて情報が提供される。たとえば、次のような情報が収集できる:
- 業界のトレンド
- 企業のCEOや業界の著名人など、プロフェッショナルの洞察
- LinkedIn News編集部が厳選したビジネストピック
個人向け機能3自分に合う仕事探し
求人情報を探すための検索機能が備わっている。
- プロフィールに基づいたおすすめの求人が一覧として出てくる
- プロフィールに興味を持った企業が直接スカウトを送ってくる
そのため、プロフィール内容を充実させることが重要となる。
企業が使うべきLinkedIn機能は何? 無料版と有料版の違いは?
次に、LinkedInの法人向けの機能について紹介していく。主な機能は、次の4つだ:
- 会社ページの作成
- マーケティングツール
- 企業文化を紹介できるページ
- LinkedIn広告
企業向け機能1会社ページの作成
LinkedInでは、Facebookと同じく企業ページを無料で作成し、企業のプロモーションに活用することができる。会社ページはいわば企業やブランドの公式サイトのようなもので、次のような情報を掲載できる:
- 会社概要
- 求人情報
- その会社に勤める社員の一覧 など
世界で見ると、会社ページの数は6300万(2023年4月)にものぼり、世界中の企業にとってLinkedInで会社ページを立ち上げることはスタンダードなものになっています。利用される企業も経営規模に関係なく、大企業から零細企業までコミュニケーションに活用してくれています(堀氏)
特に海外支社を持つ企業の場合、LinkedInが現地の社員とのコミュニケーションに一役買うことがあるという。
マイページタブ(「あなたの会社」タブ)は、同じ組織のメンバーのみに表示されるようになっているので、社員の活躍を共有したり、社内で開催されるイベントを紹介したりと、社内報のような使い方もできます(堀氏)
企業向け機能2マーケティングツール
会社ページには「製品タブ」という機能がSaaSなど一部の業界向けに付加された。製品やサービスを見込み顧客にアプローチできる場として、問い合わせやリード獲得にも向いている。
また「ショーケース」というプロモーションページを作成できる。会社ページに紐付けられたサブアカウント的な仕組みで、企業の製品やブランドの紹介が個別に行える。
インサイト機能もある。LinkedIn Insightタグを自社のWebサイトにインストールすれば、どんなユーザーがWebサイトを訪問しているのか、企業・役職・業種などのオーディエンス分析も可能だ。MAやCRMなど各種ツールとも連携している。
企業向け機能3「カルチャー」ページ
会社ページには自社の企業文化を紹介できる「カルチャー」ページが設置されているため、採用ホームページ代わりに利用している企業も多い。
企業向け機能4LinkedIn広告
他のSNSと同様に広告を掲載することができ、登録されたプロフィールをもとに詳細なターゲティングも可能。ビジネス特化型SNSであるため、ビジネスに関心の高いユーザーにリーチしたい場合には最適だ。
LinkedIn活用の第一歩を踏み出してみよう
ほかにも、さまざまな機能がある。
たとえば「LinkedInラーニング」は、仕事やキャリアアップに必要なスキルを学べる有料のオンライン学習サービスだ。ビジネス、テクノロジー、クリエイティブなどのカテゴリーで13カ国語・約2万を超えるコースがある。日本語では1200コース以上を提供し、英語のコースにもAIによる翻訳機能がついているため、合計で1万を超えるコースを日本語で視聴できる。個人のユーザーが使用するだけでなく、企業の研修にも使われているサービスだ。
このように多くの機能があるが、「個人ユーザーのファーストステップとしては、プロフィールの内容を充実させ、まずは情報収集に使ってもらいたい。企業に関しては、会社ページを活用してもらいたい」と堀氏は話す。
以前は転職や採用のイメージが強かったLinkedInですが、現在ではブランドメッセージを上手に伝える場としての利用が増えてきました。加えて9億人を超えるユーザーを抱えていますので、マーケティングプラットフォームとしても活用の幅が広がっている状況です(堀氏)
日本での利用者数も増えてきているとはいえ、まだ馴染みがない人も多いだろう。しかし今後は、LinkedInが名刺代わりになり、マーケティングプラットフォームとしての活用も広がるかもしれない。
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